2015年12月26日土曜日

2015年の診療を終えてのごあいさつ

本日12月26日午前をもちまして当院の2015年の診療を終了させていただきました。新年は1月5日(火)より診療を開始させていただきます。

思えば今年もあっという間でした。てんかん外来の新規の患者さんはだいたい15名前後/月ぐらいで推移していますが、継続治療させていただく方が増えるに従い、新患の方の予約が少し入りにくくなってきております。新規の方はどうしてもしっかりお話をおうかがいする必要がありますので、ゆっくりと時間をとることができる日時でのご予約をお願いせざるを得ません。新規のご予約の方にはご迷惑をおかけしておりますが、どうぞご理解くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

来年も一人でも多くの患者さんに「小出内科神経科を受診してよかった」と思っていただけるように、スタッフ一同頑張りたいと思います。来年もよろしくお願い申し上げます。それでは皆様、よいお年をお迎えください。

2015年12月18日金曜日

当院かいわい:あべのハルカス

大阪もやっと冬らしく寒い日が続くようになってきましたね。

日本一高い商業ビル(地上60階建て、300m)、あべのハルカスが抜けるような青空に映えますね。上からの眺望は本当に素晴らしいのですが、大阪のシンボル通天閣がマッチ棒みたいに見えるのがちょっと寂しい感じがします(笑)

2015年12月9日水曜日

てんかんを公表している著名人⑪ Keith Richards(Rolling Stones, 1943~)

てんかんの原因は非常にさまざまです。脳が部分的な、あるいは全体的な一過性の電気的過剰興奮を起こすのがてんかん発作の原因ですが、この過剰な興奮が起こりやすくなる原因がいろいろある、ということですね。体質的な背景が考えられる方もいますし、脳梗塞や出血などの脳血管障害、頭部外傷、脳炎や髄膜炎などの
炎症、脳腫瘍など、脳に何らかの損傷が加わることによって機能の問題が生じ、てんかん発作が起きるようになることもあります。

「脳があれば誰でもてんかんになりうる」ということも、まさに言われるとおりかと思います。

Rolling Stonesのギタリストとして伝説的な存在で、かつ現在も精力的に活動を続けるKeith Richardsは、2006年に木の枝から飛び降りようとして足を滑らせ、木の幹で頭を打ち、後に頭蓋内出血を認めたため手術を受けています。この後彼は2度にわたっててんかん発作を経験し、抗てんかん薬の服用を現在も続けているそうです。

記事によりますと、医師には術後6か月の安静を言い渡されたようですが、6週間で音楽活動に復帰してしまった、というエピソードが、らしいというかなんというか・・・

http://www.dailymail.co.uk/femail/article-3299161/Keith-Richards-taking-anti-epileptic-drugs-having-prescribed-10-years-ago-following-Fiji-tree-accident.html

2015年12月7日月曜日

てんかん:精神科医と神経内科医

さる12月5日(土)グランヴィアホテル大阪での「てんかん治療を考える会」にて、「症例から診るてんかん」という講演をさせていただきました。聴衆は精神科の先生方を中心に約70名の方々が参加されており盛況でした。国立精神神経センター研究所病院の渡辺裕貴先生のご講演もとても教育的な内容で、参加された先生方からもたくさんの質問が寄せられていました。

昔はてんかんの診療といえばほぼ精神科の先生が一手に行い、そこに小児科の先生が参加している、という時代が日本で長くありました。そもそも昔の日本には神経内科も脳神経外科もなかったのです。その後脳神経外科が精神科から独立し、さらに神経内科が精神科とは独立した診療科になったのは、日本では1960 年代ぐらいからだと考えられます。地方によっては神経内科が精神科と別れて独立した大学講座になったのは1980年代というところもあります。それ以前は成人のてんかん患者さんはすべて精神科に通っておられたのです。

つまり昔はおとなのてんかんの専門家=精神科医だったのですね。昔の精神科の先生はNervenarzt(神経科医)として、マルチプレーヤーであったということも言えると思います。

しかし疾患について新たな知見も増え、現実的には脳卒中など、もともと日本でも循環器内科の先生も扱っていた疾患なども神経疾患として扱う場面もあり、精神科医と神経内科医は(脳外科医ももちろん)現在では完全に違う世界に住んでいるかのようです。そんななかで、てんかんは広く神経の病気であることが知られるようになり、患者さんも精神科より、神経内科を訪れることが圧倒的に多くなりました。

そうなると、精神科の先生がてんかんの方を診る機会は圧倒的に少なくなります。少なくなると興味を持つ先生が減るのもしかたないことで、最近では「精神科医のてんかん離れ」問題が言われるようになっています。

これは何が問題かといいますと、精神科を受診するてんかん患者さんは確かに減りました。減りましたが、ゼロには絶対になりません。

たとえばてんかんの方は、たとえばうつ症状の合併が多いことはよく知られています(報告により様々ですが、2-4割といった報告が多いように思います)これはてんかんそのものが影響する場合もありますし、抗てんかん薬の副作用でそうなることもあります。社会的にストレスを抱えやすい状況になることも抑うつ状態を引き起こしやすくなります。また時に統合失調症と区別がつきにくいような幻覚妄想状態をみる方もあります(これも抗てんかん薬の副作用であることがよくありますので注意を要します)
てんかんの患者さんは「脳とこころ」という、非常に難しいテーマを我々に対して投げかけてくれる存在です。

では実際にこうした問題が起こった場合、神経内科の先生に診てもらっている患者さんがどうなるかと言いますと、

患者さん
「先生、気分が良くなくて、不安でいたたまれなくて、仕事も手につかなくて・・・・」
神経内科の先生
「(うつ状態だなあ)そうですか、では精神科に良い先生がいますよ。一度受診されてはいかがですか?てんかん発作はありませんし、そちらの治療はこっちで続ければいいですから」

患者さん:
「神経内科の先生からうつ状態だって言われて、ご紹介頂いたのですが・・・」
精神科の先生
「(てんかんの患者さんかあ、最近あんまり診てないなあ)そうですか、ではてんかんの治療は神経内科の先生におまかせして、こちらは主に精神的な治療をやっていきましょう。とりあえず、うつ病のお薬が効果があればいいですねえ」

というように、精神科の先生がてんかんの方を全く診なくなる、という時代は絶対に来ないことがお分かりいただけるかと思います。問題は、この患者さんのうつ状態が、実は抗てんかん薬の副作用であった、といった場合です。根本的にはこれは抗てんかん薬を調整しないと、いくらうつ病の薬を飲んでも良くなりません。精神科医と神経内科医は、お互いの足りないところを補い合うことができている、とは言いにくいと思うのです。お互いの知識を共有する、かつてのNervenarztが今こそ必要だと感じます(もちろん、上の会話のようなことがいつも起こるわけではありませんが・・・)

若手の神経内科の先生の研修に長期の精神科での研修を、精神科の先生の研修に神経内科を加えることもよいかもしれません。「脳とこころ」について思索する期間は精神科医、神経内科医のお互いにとって、決して無駄ではないと思うのです。

2015年12月1日火曜日

Twitterはじめました。

東北大学のてんかん学講座教授である中里信和先生のお勧めで、てんかんについての正確な知識を、もっと広く、多くの方にお伝えするためにTwitterアカウントを当院も開設しました。基本的にはブログの内容を皆さんにお伝えしていきたいと思います。Twitterを利用されている方はどうぞよろしくお願い申し上げます。https://twitter.com/koidenaika

2015年11月24日火曜日

てんかんと妊娠②「てんかんはこどもに遺伝しますか?」

このシリーズ、妊娠を考える女性のてんかん患者さんからの質問、という形式をとらせていただいていますが、第2回はてんかんと遺伝についてです。

てんかんの診断をすると、「うちの家系には、てんかんの人なんていないんですけど」といった患者さんやご家族からのご発言をよく耳にします。そもそも遺伝する病気、という前提でのお話ですね。本当にそうなのでしょうか?

まず、ここで何度か触れていますように、「てんかん」と一口に言ってもその中身は極めて多種多様で、様々なタイプや分類が存在しています。まずは患者さんのてんかん発作のタイプやその原因がなんなのか?といったことが重要です。

てんかんが何らかの後天的な原因(外傷、脳血管障害、脳腫瘍、脳炎/髄膜炎など)で発症した場合、これはどう考えても遺伝はない、ということはご理解頂けると思います。これらのてんかんは単に脳に何らかの傷が後天的についたことによって、脳が異常な電気的興奮を起こすようになり、てんかん発作が起こるようになった、ということになります。「獲得された形質は遺伝しない」という言葉が有名ですが、要するに「親が頑張って筋肉をつけても、子供が筋肉質で生まれはしない」というのと同じです。

ですのでそもそもてんかんと遺伝、といったことを考える機会があるとすれば、それはどちらかといえば多くが10代までに発症する、あきらかな原因がない、何らかの体質に起因するものと考えられるようなてんかんがその対象になります。

ここで大切な前提として、この「遺伝」という言葉が指すものを考えてみる必要があります。患者さんやご家族が言う「遺伝」というのは親→子、あるいは親族間でのてんかんの有無を指すことがほとんどだと思います。

ではこうした意味での「遺伝」はどのぐらいてんかんにあるのでしょうか?確かに一部のてんかんには「ある」といって良いケースもあります。たとえば進行性ミオクローヌスてんかんなど、ごく一部のてんかんではごく限られた遺伝子の変化がてんかんやその他の病状を発症させていることが知られています。こうした場合は、ある方にそうしたタイプのてんかんが発症すると、ほとんどの場合は親御さんなどにもまったく同様の症状がみられます。表現促進現象といって、世代が若くなるにつれて発症する時期が早まるタイプの病気もありますので、お子さんがすでに発症しているにもかかわらず、親御さんはまだ発症しておらず、将来発症する可能性がきわめて高い、と想像されるような場合もあります。また熱性けいれんが関連するようなてんかん「熱性けいれんプラス」なども親御さんとお子さんにどちらも熱性けいれんやてんかんが存在していることがありますね。

ただ、てんかんには極めて多種多様なタイプが存在しており、その中でこうしたてんかんはごく一部にしか過ぎません。てんかん全体で考えると、このような単純な遺伝形式をとるものは非常に珍しいのです。

現在多くのてんかんは、非常に多様な因子が背景にあって発症するものと考えられています。

ごくごく分かりやすく言えば「けいれんの起こりやすさ」「脳でおこった電気的な興奮を鎮める力の強弱」「刺激への過敏性」といった因子がもともとご両親のどちらかに、あるいはどちらにもあるわけです。これらが複雑に組み合わさることではじめててんかんは発症してきます。

ですので親御さんのどちらかにてんかんがあったとしても、お子さんは親御さん両者の特性を受け継いで誕生しますので、ほとんどの場合はてんかんをお持ちではありません。

一般的に25歳までのてんかんの発症率は1-2%ぐらいではないかと言われていますが、てんかんがある(ここには上記した、明らかに遺伝的背景が存在しえない後天的なてんかんも含まれますが)親御さんから生まれたお子さんの発症率はその3倍ぐらい、つまり6%ぐらいではないかと考えられています。ここには遺伝的背景がはっきりしている上記のようなてんかんの方も入っています。ですのでざっくりと言うと

「てんかんを持たない親御さんから生まれるお子さんの1-2%にもてんかんはあり、てんかんを持つ親御さんから生まれるお子さんの9割強はてんかんではない」

ということになります。6%ぐらい、という数字もあくまでも色々なてんかんや発作型を総じての数字ですので、個々の患者さんではもっと可能性が高かったり低かったりはします。しかし(上記のようなごくごく一部のてんかんを除けば)絶対に五分五分とか、100%とか、そうした話ではないのです。

これからさらに分子遺伝学的な研究が進めば、てんかんを発症させる複数の因子が明らかになってくるものと期待されますが、いずれにしても事実として、患者さんやご家族が心配する「親→子でてんかんが発症する」ということが比較的稀な事態であることには変わりはありません。

上記はあくまでも総論ですので、患者さん個人の、ご自身のてんかんはどうか?、ということについては担当の先生に聞いてみてください。ただ後天的な原因の方は気にされる必要はありませんし、そうでない方も「遺伝するかも・・・・」ということを過剰に心配して妊娠をあきらめる、といった必要はない、ということはご理解頂けるかと思います。

2015年11月17日火曜日

てんかんシンポジウム宮崎2015

先日宮崎シーガイアコンベンションセンターで行われました、てんかんシンポジウム宮崎2015にご招待いただき、「新規抗てんかん薬の使用経験と実践」というタイトルでお話させていただきました。シンポはてんかんの基礎研究(病態生理、遺伝子、薬理学etc.)から臨床医学までとても幅広いテーマについて、各方面の最先端の話を聞く事ができてとても勉強になりました。天候があまり良くなかったのですが、それでも宮崎はとても温暖で良いところでした。また機会があれば今度はゆっくり観光で訪れたいですね。

2015年11月11日水曜日

副院長休診のお知らせ

10月13日(金)~14日(土)、小出泰道医師の外来はてんかんシンポジウム宮崎2015に参加するため、休診とさせて頂きます。ご相談の際はご留意ください。

2015年11月6日金曜日

第49回日本てんかん学会学術集会@長崎と、来年の学会@静岡

先日てんかん学会学術集会(総会)に参加してきました。長崎医療センターの馬場先生が大会長を務められており、馬場先生のライフワークである脳梁離断術に関連し、ウエスト症候群などのいわゆるてんかん性脳症などについて熱い議論が交わされていました。

治療についてはいわゆる新規抗てんかん薬がある程度出そろった段階で、単なる使用経験を報告するのではなく、その使い方などについての発表も数多くありました。私も自分の経験を踏まえて色々と質問をさせて頂きました。

異国情緒あふれる長崎での学会は大変楽しかったです。来年はいよいよてんかん学会50周年を記念する大会が、静岡てんかん・神経医療センターが主催で行われます。てんかんにかかわるアート展や映画祭などユニークな企画もあり、今からとても楽しみですね。http://www.shizuokamind.org/art2016/art.html

 
 

2015年10月24日土曜日

てんかんと妊娠①:患者さんはどんなことで悩むのか?

最近当院に通院されているてんかん患者さんで、妊娠・出産を迎えられる方が4-5名続きました。てんかんがあり、治療を受けている中で妊娠・出産を迎え、新たな家族を迎えることができた患者さんの喜びは、我々てんかん診療をしている医師にとって最も大きなやりがいの一つでもあります。

てんかんを持つ女性患者さんから具体的にお伺いすることがある悩みとしては
「わたしのてんかんが、この子に遺伝したりしないでしょうか?」
「妊娠中に発作があったらどうなるの?」
「お薬を飲んでいると、おなかの赤ちゃんに影響はありませんか?」
「出産した後、母乳はあげちゃいけないですか?」
といったところをよくおうかがいします。

てんかんを診療する医師は、患者さんのこうした悩みに対して、きちんと応えていかなくてはならないと思います。もちろん、現時点で私たちにもわからない、はっきりお答えできないこともあるのですが、それならそのことも含め、きちんとお話をしたうえで患者さんと相談していくことが必要になります。

これは非常に大きなテーマなので、1回だけでは説明しきれません。ですので次回以降、患者さんのご質問にお答えする形で説明していきたいと思います。

2015年10月20日火曜日

日本てんかん学会学術集会に伴う小出泰道医師休診のお知らせ

10月30日から31日、長崎ブリックホールにて、日本てんかん学会学術集会が行われます。小出泰道副院長の外来はその間休診となります。予約外でのご相談等がおありの際にはご留意下さい。小出秀達院長の外来は従来通り診療を行っております。

ラグビーワールドカップもいよいよ準決勝です。連日の熱戦がもうすぐ終わるのは寂しいですが、優勝の行方は??https://www.youtube.com/watch?v=vJAmkiwxw3g

2015年10月10日土曜日

兵庫県てんかん県民講座のお知らせ

てんかん協会兵庫県支部の方から、てんかん県民講座のお知らせが届きました。日時は11月29日、講師は静岡てんかん・神経医療センターの池田浩子先生です。患者さんの病状についての個別相談会もあるようです。とてもやさしい良い先生ですので、ご興味がおありの方はどうぞ足をお運びください。



2015年9月28日月曜日

ラグビーW杯

先日からラグビーのワールドカップが始まりました。当院のFB,あるいはHPにラグビーのゴールキックをイメージした画像を載せておりますが、巷のニュースでもラグビーが取り上げられる機会が増え、元ラグビー部、現在もたまにラグビー部として嬉しく思っております。

先日も当院の患者さんでワールドカップ観戦に行くと仰っていた方がおられました。現地で観戦できれば、日本でみるように寝不足にならずにすんでいいなあ・・・と思いながら、寝不足の毎日を過ごしております。南アフリカに勝った試合などは、思わず涙が・・・。

2019年には日本でラグビーのワールドカップが行われる予定です。一度皆さんもラグビー場に足を運んで、ラグビーを好きになっていただき、2019年のラグビーワールドカップ会場で一緒に観戦しましょう。

今日は全くてんかんにも、診療にも関係のない話で失礼しました(笑)

https://www.youtube.com/watch?v=OSC64mlK1Lg

2015年9月14日月曜日

てんかん外来の現状:受診者数や年齢、診断など

雨が多いなとは感じていたものの、先日からの豪雨災害は想像を超えるものでした。被害ができるだけ小さいものであることを祈るばかりです。これまでもこちらのブログで何度かお伝えしていますように、常用薬などの備蓄は皆さん日ごろから気を配っておきましょう。「天災は忘れたころにやってくる」(寺田寅彦の言葉だと言われています)です。

ホームページを開設し、改めててんかん外来を標榜してからだいたい1年ぐらいが経ちました。昨年4月から当院をてんかんの診療を希望して受診した方の統計をお示ししたいと思います。

2014年4月~2015年9月14日現在までの約1年半に、てんかんの診療を希望して当院を受診した患者さんは179名で、男性94名、女性85名でした。

年齢は6歳~79歳で、平均年齢は31.5±14.5歳(中央値27歳)で、10歳未満:4名、10代:31名、20代:62名、30代:46名、40代:15名、50代:8名、60代:7名、70代:6名となっており、お若い方が多いものの、お子さんからご高齢の方までご相談をいただきました。

患者さんの居住地別にみますと、大阪市内の方が80名、市外大阪府の方が69名で大半でしたが、兵庫県の方が13名、奈良県4名、愛知県3名、三重県3名、徳島県2名、その他の都府県5名と遠方からもお越しいただきました。

受診後の診断は1989年の国際てんかん分類を用いますと、症候性部分てんかん
92名(うち前頭葉てんかんあるいは疑いが26名、側頭葉てんかんあるいは疑いが36名)、特発性全般てんかん30名、特発性部分てんかん3名、症候性全般てんかん2名、進行性ミオクローヌスてんかん1名、詳細不明、あるいは分類不能のてんかんが16名と、てんかん患者さんは144名でした。ほか診断はつかないがてんかんが疑われる方が5名おられました。

残りの30名はてんかんではない、と診断した方で、立ちくらみなどによる失神&疑いが8名、心因性非てんかん発作&疑いが7名、発作性運動誘発性ジスキネジアという不随意運動の方が2名、薬物やアルコールを急激に止めたことによる離脱けいれん&疑いの方が2名などとなっていました。中には長年てんかんとして服薬しておられた方が、てんかんではないとの診断から薬を中止でき、とても喜んでいた方もいらっしゃいます。

てんかん外来をしていますと、一定数のてんかんではない方が受診されます。今回の30名/179名=約17%というのは静岡のてんかんセンターの外来で、同様に統計を調べた際にも同じような数字でしたので、おそらくてんかんを専門にしておられる先生のところを受診される方の割合は同じようなものなのでしょうね。


病院からの紹介状をお持ちになった方は98名で、ない方は81名でした。紹介状をお持ちでない方の多くは、インターネット経由で当院のことを知った、という方でした。当院受診前にすでに通院しておられた方では、神経内科の先生にかかっていた方が63名と多く、小児科、脳神経外科がそれぞれ32名、精神科31名とその他はほぼ同数でした。

小児科に通院されていた方のうち12名は20歳以上のいわゆる成人でした。これは「小児科からの移行期医療問題」として知られる現象で、小児期からの慢性疾患の患者さんが、成人になっても小児科に通院を続ける、あるいは続けざるをえなくなることを指します。てんかんについても、小児特有のてんかん症候群などは成人を担当する先生にはなじみがあまりないこともあり、なかなかスムーズに小児科から成人を担当する診療科へと移行することが難しい、という現実があることはここで診療していても実感できます。当院はできるだけそうした方のうけ皿になっていきたいと考えております。

どうしても初診の際にはお話を詳しくお伺いしないといけませんので、あまりに予約が混み合っている日時には予約をお取りできないことがありご迷惑をおかけしておりますが、これからも一人一人の患者さんを丁寧に診察し、確実な診断から治療を考えていくようにしたいと思います。

2015年9月5日土曜日

発売からもうすぐ1年です

当院の小出泰道医師が執筆しました「てんかんが苦手な医師のための問診・治療ガイドブック」は発売からもうすぐ1年が経ちます。

患者さんや若手のてんかん診療を行っている先生方からご好評をいただいております。患者さんからは「自分が受けている治療の意味や考え方がわかった」お医者さんからは「治療全体の考え方や流れがよくわかる」といった感想をおうかがいしています。

AMAZON等通販でも販売されておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。当院の待合室にも置いておりますので、ご興味がある方は一度手に取ってみてください。



http://www.amazon.co.jp/%E2%80%9C%E3%81%A6%E3%82%93%E3%81%8B%E3%82%93%E3%81%8C%E8%8B%A6%E6%89%8B%E2%80%9D%E3%81%AA%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E5%95%8F%E8%A8%BA%E3%83%BB%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF-%E5%B0%8F%E5%87%BA-%E6%B3%B0%E9%81%93/dp/4753226956/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1441422154&sr=8-1&keywords=%E3%81%A6%E3%82%93%E3%81%8B%E3%82%93%E3%81%8C%E8%8B%A6%E6%89%8B%E3%81%AA%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E5%95%8F%E8%A8%BA+%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF

2015年9月2日水曜日

当院かいわい:月江寺

暑さも和らぎ、日々秋の訪れを感じます。朝晩は窓を開けて寝ていると寒いぐらいです。そのせいか当院にもかぜ症状をお持ちの患者さんがちらほらお見えになっています。皆様もお気を付けください。

今回ご紹介しますのは、当院のお隣、西側にある月江寺さんです。こちらは江戸時代に生類憐みの令でも有名な徳川綱吉公のお母さん、桂昌院の侍女をしていた方が浄土宗の尼寺として建立したのが始まりだそうです。元の仏閣はこの辺りの他のお寺さん同様に戦災で焼失してしまいましたが、現在も女性のご住職がいらっしゃり、境内は都会にいることを忘れるほど閑静です。かつてはこのお寺から西の海に沈む美しい夕日が見えたそうですが・・・今は昔ですね。

この辺りの他のお寺さんには技芸に携わっていた方々のお墓がたくさんあるのは以前もご紹介したとおりですが、こちらの墓苑内には「さみせん塚」があります。これはある有名な茶人が愛した「花紅葉」という古曲を伝え残すために、その弟が兄の三味線糸を埋めて建てたそうです。


2015年8月24日月曜日

てんかんと自動車運転について

先日東京池袋において、歩行者を乗用車がはね、死傷者が出たことがニュースとなっていました。その後乗用車の運転手に「てんかん」が持病としてあることが報じられ、「薬をきちんと服用していなかった」であるとか「免許更新に際して病状を申告していなかった」といった情報が流れてきています。

まず、このような不幸な事故に遭われ、亡くなられた方のご冥福と、怪我をされた方のご回復を心からお祈りしたいと思います。

現時点では、この運転者がてんかんを持病として持っていた、ということ以外ははっきりした情報がありませんので、この事故がてんかん発作が原因で起こったのかどうかもわからない部分はありますが、通常の居眠り運転では理解しがたいような事故後の行動などもあったようなので、てんかん発作が運転中に起こった、という可能性は否定できないと思います。

皆さんにお伝えしたいのは、こうしたニュースをどう解釈するか、という視点です。インターネット上などには非常に感情的なコメントが乱発されていますが、この事件を理解するために、色々と知っておいていただきたい前提というものがあります。

①てんかん、といっても中身は多様であること

この運転者の「てんかん」について詳細な情報がありませんが、「てんかん」は非常に内容が多様な病気であるということをご理解いただきたいと思います。

まず「てんかん」という病気は簡単に言えば、「てんかん発作を自然に繰り返す病気」ということになります。

皆さんてんかんというと「泡を吹いて倒れる」ということをよくおっしゃいますが、それはてんかん発作の一種(強直間代発作)にしかすぎません。そうした全身けいれんをお持ちの方は確かにおられますが、他にも数秒から数十秒、意識が曇って動作が停止するだけであるとか、手や足に痺れを感じる、といった自覚症状だけの発作などもあります。また発作が日中活動時に起こる方もいますが、日中には発作が一切なく、一生涯、夜間睡眠中に軽いけいれんを起こすだけ、といった方もいます。

どういう発作を持っているかはその方それぞれによって違います。お一人で複数のタイプの発作を持っている人(たとえば全身けいれんと意識が曇るだけの発作)もいれば、一種類の発作しかない方もいます。

こうしたその方が持っている発作のタイプによって、日常生活への影響の程度はそれぞれ全く異なります。日中活動時に意識がなくなる発作やけいれん発作があればあるほど生活への支障は増えがちです。一方、発作が沢山あってもそれが夜間睡眠中にしか起こらないのであれば、日中活動時よりは生活への支障は少なくなります。また自覚症状のみで意識が失われない発作であれば、意識が失われる発作よりは生活への影響はより少なくなります。その方がもっている発作のタイプによって、発作頻度によって、また合併症の有無などによって、患者さんの生活はさまざまです。

今回の運転者の方についてはどんなタイプのてんかん発作を起こすてんかんなのか?ということがわかりませんので、その方の発作がそもそも運転に支障を来すものであったのかどうか、頻度はどうだったのか、といったことをきちんと考慮したうえで、本人の運転が真に、危険運転と呼べるようなものであったのかどうかを判断する必要があります。

もちろん、運転に支障がある発作が、日ごろの発作頻度から考えて、運転中に明らかに起こりうることを知りながら運転を行っていた、となれば、これは危険運転と言われても仕方がありません。一部では薬をきちんと服用していなかった、といったことも報じられていますが、これも事実であれば、安全な運転への配慮を怠ったと言われても仕方ありませんから、運転の権利があるとは言えません。

いずれにしても、「てんかん」ということだけで、その方の病状を全く考慮せずに、事故について検討を行うことは難しい、ということはご理解いただきたいと思います。周りにてんかんがあって運転している方がいたとしても、通常、それは発作のタイプや頻度を考慮したうえで許可がなされていることをどうかご理解ください。

②てんかんと運転免許

「そもそもてんかん患者に免許を与えるな!」という意見が、こうした事故があるたびに(多くは匿名の)ネット上でぶちまけられています。なぜてんかんがある患者さんに、病状によって運転が許可されているのか、そのことを再度確認してみたいと思います。

まず実際に道路交通法における、現在のてんかんに関する規定を見ておきたいと思います。

道路交通法第33条2の3 運用基準

てんかん

(1) 以下のいずれかの場合には拒否等は行わない。

ア 発作が過去5年以内に起こったことがなく、医師

 「今後、発作が起こるおそれがない」旨の診断を行った場合

イ 発作が過去2年以内に起こったことがなく、医師

 今後、年程度であれば、発作が起こるおそれがない」

 診断を行った場合

ウ 医師が、1年間の経過観察の後「発作が意識障害及び

 運動障害を伴わない単純部分発作に限られ、今後、症状

 悪化のおそれがない」旨の診断を行った場合

エ 医師が、2年間の経過観察の後「発作が睡眠中に限って

 起こり、今後、症状の悪化のおそれがない」旨の診断

 行った場合

まず、「ア」「イ」ですが、これは
「長い間発作が起こっていないので、運転という1日の間で限られた時間帯に発作を起こす可能性は低く、またその可能性が一般的な事故のリスクを極端に超えるものでないからOK」ということになります。

一方「ウ」「エ」については
「発作のタイプや発作の起こる時間帯に特徴があって、それが運転に支障を来すものではないからOK」ということですね。

海外のデータになりますが、ヨーロッパで、1年間てんかん発作がない状態の患者さん(後述しますが、海外では2年無発作の患者さん、という患者群についてのデータがあまりないのです)の運転を許可した場合、どのぐらい運転による事故のリスクがあるのかを検証したデータがあります( Data from the website of the Belgian Traffic Bureau (BIVV) and the “IMMORTAL” project, a study funded by the EU 2004. In, Epilepsy and Driving in Europe – A report of the Second European Working Group on Epilepsy and Driving.)

このデータによりますと、てんかんの患者さんが事故を起こすリスクは一般の運転者に比べて約2倍と試算されています。「2倍!やっぱり危ないじゃないか!」という解釈は早計でして、運転者の年齢が25歳以下であることは男性で7倍、女性で3倍、70歳以上であることで2倍、75歳以上ならやはり3倍です。事故を減らす、と言うだけであれば、これらの運転者に免許を与えないほうが、運転者の数から考えてもずっと効果的ですね。

こうした仮定があまり現実的でないことはだれが考えても明らかです。また一方で、一定の病状(上記のデータなら1年以上発作がない患者さん)を満たすてんかんの方が、極端に高い事故リスクを持っているわけではないこともお分かりいただけるのではないかと思います。

一定の病状を満たしたてんかんの方に、運転免許の保有が許されている背景には、こうした他の運転者の事故リスクとの比較が常にあります。実際に道路交通法上の規定を満たした状態で運転しているてんかん患者さんの事故はそれほど数多く経験するものではありません。きちんと法律にのっとった免許の取得ー更新をする患者さんがいて、その方々の多くの運転は全く問題なく行われていることもぜひ知っておいていただきたいと思います。

今回の事故を解釈する上でのもう一つのポイントは、この道路交通法の規定をきちんと満たしていたかどうかです。これを満たさないことを知りながら運転をしていた、あるいは免許を黙って更新・取得したといったことがなかったかどうかです(2015年現在、持病を適切に申告せずに免許を更新・取得することには、(事故の有無にかかわらず)罰則が設けられており、1年以下の懲役か30万円以下の罰金となっています)。こうしたことがあったとすれば、それは大変残念ですし、罪に問われることも致し方ないでしょう。ただ、そのことで多くの運転がきちんと許可されている患者さんがつらい思いをすることはあってほしくない、そう思うのです。

④海外ではどうなのか?
ヨーロッパのデータのところで少し述べましたが、EU各国のほとんどが1年間無発作であることを運転の許可条件としています。アメリカでは各州で運転に関する規定は異なりますが、ほとんどの州が3か月~1年発作がないことを条件としています。これらの条件も上記のような事故リスクを客観的に見積もったデータが根拠になっています。日本における2年間発作がないこと、という道路交通法の規定はかなり厳しい部類に入ります。また重大な事故が起こるリスクは発作がない期間が長くなっても変わりはない、というデータもあります( 3か月、6か月、12か月の無発作期間によっての有意な違いはない: Sheth SG et al, Neurology 2004)今後も経験が蓄積され、運転の可否を決める基準の運用は適切に行われていくものと期待します。てんかんの方もそうでない方も、事故を減らしたい、という思いは同じなのです。

⑤将来への期待
将来的には自動運転車や、衝突防止装置などが全車に標準で装備され、どんな原因によっても自動車事故が起きえない、そうした技術革新が行われてほしいと心から願うものです。てんかんを含め、運転に支障がありうる病状を持った方でも、自動車による移動を妨げられない、そうした社会が実現することが究極的には目標だと思っています。自動移動装置ができ、自動車運転免許が必要なくなる世界が実現すれば一番いい。そうなれば現在のように自動車免許がないと就職もままならない、身分証明書になるものすらないといった状況もなくなるでしょう。

ただ、急に明日からそうなる、ということは考えられない以上、少なくとも自分できちんと病状をコントロールし、法律を順守して運転を行っている患者さんが不利益をこうむることがない社会ではあってほしいと思います。そのためにも、てんかん患者さんの置かれた状況を皆さんに理解してほしいのです

2015年8月7日金曜日

休診のお知らせ(再掲)とメダカ

台風が近づいているようですが、大阪ではまだその雰囲気は感じられず、相変わらずの暑さが続いています。

以前にもお伝えいたしましたように、小出内科神経科は8月12日~17日は夏季休診とさせていただきます。また8月28日~29日は小出秀達院長の外来は臨時休診とさせて頂きます。外来通院中の方はどうぞご留意ください。

診療所の庭の植木も暑さでぐったりですが、そのなかでもムクゲは夏の花らしく綺麗に咲いています。

また先日患者さんからいただいたメダカの卵は無事に孵化し、ぬるい水の中を元気に泳ぎ回っています。


2015年8月3日月曜日

大阪てんかん市民公開講座が終わりました!

先日も告知させていただきました、大阪てんかん市民公開講座2015が昨日、国民会館武藤記念ホールで行われました。

酷暑にもかかわらず、会場は前から見る限りではほぼ満席のようでした。まず第一部では荒木敦先生(関西医科大学付属滝井病院准教授)、辻富基美先生(紀南こころの医療センター)とともに小出も「大人のてんかん」というタイトルでお話させていただきました。

私のパートでは主にてんかん発作の症状のビデオを含めたご紹介と、薬物療法を含むてんかんの治療一般の考え方をお話ししましたが、みなさん熱心にメモを取るなどされる姿をお見受けしました。いらっしゃっている方のほとんどがてんかんの方が身近におられる方々ですので、今後私のお話が何かのお役に立てばいいなと思っていました。

第二部ではみなさんから事前に頂いたご質問を踏まえた質疑応答がありました。時間に余裕がありましたので直接ご質問もお受けし、それぞれの方のかかわるてんかん患者さんの診療について、アドバイスをわれわれ講師からさせていただきました。こちらも非常に熱のこもった質問がたくさんあり盛況でした。

私も医師に向けた講演はよくさせていただく機会があるのですが、患者さんやご家族、患者さんにかかわる方々へのこうした講演の機会というのは実はあまり多くはありません。今回の講師の先生方も同じご意見でした。

この貴重な市民講座が来年も開催されるかどうかは実は今のところ未決定です。ぜひ継続されることを期待したいと思います。

2015年7月26日日曜日

第11回日本てんかん学会近畿地方会 てんかん患者さんの就労について

今日も暑かったですね・・・と言いたいところですが、ほぼ1日てんかん学会の近畿地方会に参加させて頂いていましたので、ほとんど暑さは感じませんでした。

学会ですので様々な演題や特別講演などがあり興味深く拝聴・質問させて頂きましたが、なかでも興味深かったのは、患者さんと、その勤務先の職場に関するアンケート調査についてのご発表でした。

同僚である患者さんにてんかんがあることをご存じの職場の方に対するアンケートですので、ある程度患者さんのてんかんに関心がある方が対象です。職場の方のアンケートに対する回答は「患者さんのてんかんのことをよく分かっている」「ある程度分かっている」までで100%を占めていたのに対し、患者さんの側では「よく分かってもらっていない」「ほとんどわかってもらっていない」がかなりの割合を占めました。また分かってもらえていないことをかなり不安に思っておられるようでした。

お互いのこの認識の違いはどこから来るものなのでしょうか?アンケートの対象となった職場は、患者さんのてんかんに関心がある方が多いだろうと想像できます。にもかかわらずこのようなギャップがあるとなると、職場の方にてんかんがあることを伝えずに仕事をしておられる方の不安はとても大きい、ということが容易に想像できます。

また「わかってもらえないだろうな」という思いが、てんかんを職場に申告しない、という決断につながるのでしょうね。

てんかんを申告しても誤解されない、不利益にならない職場環境があり、発作がなければ、あるいはあっても適切に対処するだけで問題ない、といったことが理解される社会になってほしいと思いながらご発表を聞いていました。

2015年7月8日水曜日

キャシディー・メーガンさんの来日

タイトルを見て、「だれ?」と思われる方がほとんどだと思いますが、現在、国際的にてんかん啓発デーとして認知されつつある、Purple day(3月26日)の創始者が、自らも患者さんのお一人であるキャシディーさんです。9歳の女の子が始めた運動が、世界的なムーブメントになっていったことは本当に素晴らしいと思います。

Purple day http://www.purpleday.org/

現在来日されており、日本各地でPurple dayについてのイベントを行っておられます。以下はインターネットの医療ニュースサイトからの抜粋です。

静岡てんかん・神経医療センターは7日、啓発キャンペーン「七夕フェス静岡」(静岡新聞社・静岡放送後援)を静岡市駿河区のグランシップで開いた。てんかんへの関心を高め、理解を訴える「パープルデー」(3月26日)の創始者で、患者でもあるカナダ在住のキャシディー・メーガンさん(16)らが講演した。
 幼い頃からてんかんがあり、周囲の偏見や誤解に悩んでいたメーガンさんは、9歳だった2008年に地元のてんかん協会の協力を得て「パープルデー」を制定した。ラベンダーの紫が啓発活動の国際的イメージカラーだったことに由来する。米国の支援団体も理解を示し、今では120カ国以上で活動が行われている。
 現在も年に数回、ひどい発作があるというメーガンさんは「活動がさらに広がっててんかんへの理解者が増えれば患者の孤独感を取り除ける」とした上で、患者に対しては「あなたは決して一人じゃない。あきらめないで」と勇気付けた。(2015年7月8日m3.com 医療ニュース)

2015年6月30日火曜日

高齢者のてんかん

雨が多い地域もあるようですが、今のところ大阪ではあまり梅雨の恵みはありません。そのせいもあってか、紫陽花や桔梗の花の終わりも早まってしまったように感じます。

最近、ご高齢になってはじめて、てんかんを発症する患者さんが増えている、ということが言われています。高齢化社会に伴って、このタイプの患者さんはますます増えていく可能性があると思われますし、診療していても、一定の割合でそうした方を拝見する機会があります。

てんかんは脳の中で行われている神経細胞の電気的活動が一過性に異常を来す病気です。この一過性の電気の流れの異常が「てんかん発作」として現れます。異常な電気活動が起こる脳の部位やその程度によって、症状は非常にさまざまで、ちょっとした自覚症状だけの場合もあれば、いわゆる「泡を吹く」と表現されるような全身けいれんの場合もあります。

この一過性の電気活動の異常はさまざまな原因で起こり得ます。原因は明らかでないことも多いのですが、体質的に異常な電気活動が起こりやすい方もいれば、脳卒中、外傷や感染症、腫瘍などによる脳の傷が原因となって、異常な電気活動が起こる方もいます。

ご高齢になって初めててんかん発作を生じる場合は、ほとんどの場合がこの脳の傷が原因になるものです。ご高齢になる、ということは脳にも見える、あるいは見えない形での様々な損傷が起こってくるということを意味します。脳の血管は動脈硬化を生じ、また変性といって神経細胞そのものの加齢現象も起こってきます。これらによって生じる小さな傷がてんかんの原因になるのですね。

高齢の方のてんかん発作は全身がけいれんするような症状が少なく、ちょっとぼーっとしているようにみえたり、応答があいまいになったりする、といったわかりにくい症状が多いと言われています。そのため周りの人にも認知症であるとか、とぼけているとかそういう誤解をもって捉えられていることがよくあります。日頃からずっと認知機能に問題があるわけではなく、時々おかしい、というのがてんかん発作を疑うきっかけになります。

しかし、これもご高齢の方に多いと言われていますが、非痙攣性てんかん重積状態と言われる特殊なてんかん発作の起こり方があり、これは発作が消長を繰り返しながら非常に長く続きます。30分~長い方では数日、といったこともあります。症状が軽くなったりひどくなったりしながらもずっと続いてしまうような場合は、なかなかてんかんを疑われず、やはり認知症を疑われることが多くなります。

こうした受診に至るまでに難しい面はあるものの、診断さえつけば治療の効果は非常に良い、というのも一つの特徴です。ご高齢の方のてんかんは抗てんかん薬をごく少量服用するだけで(ご高齢の方は抗てんかん薬による眠気やふらつきなどの副作用もみられやすいことが多いので、このごく少量、というのがポイントです)完全に止まってしまうことも多く、きちんと診断して治療することが重要です。

ご高齢の方で上記のような、時々応答が悪いことがあって、それが普段の状態となんだか大きく違うな・・・というような症状がある場合は、認知症の前に一度てんかんも考えて、お近くの神経内科の先生にご相談になるといいかもしれませんね。
徘徊するお婆さんのイラスト(認知症)

2015年6月22日月曜日

当院かいわい:愛染祭り

梅雨空が続いていますね。これから週末にかけてまた雨が多いようです。

当院から谷町筋に沿って300mほど南に下がったあたりでは、愛染祭りの準備が少しづつ進んでいます。

 
 
愛染祭りはこの通りの奥にある、四天王寺の分院である愛染堂勝鬘院(あいぜんどうしょうまんいん)の夏祭りです。大阪3大夏祭り(愛染祭り、住吉大社の夏祭り、天神祭り)の中で最初に行われる夏祭りでもあります。今年も6月30日から3日間の予定で行われます。宝恵駕籠行列などの行事もありますので、受診の際に少し足を延ばされてはいかがでしょうか。
 
参考:愛染堂勝鬘院

2015年6月10日水曜日

夏季休診と臨時休診のお知らせ

本年度の夏季休診は8月12日(水)~8月17日(月)とさせて頂きます。また8月28日(金)~8月29日(土)は小出秀達院長の外来は臨時休診とさせて頂きます。院長外来に通院中の方はご留意くださいますようお願い申し上げます。

梅雨の晴れ間に、ヒペリカムと紫陽花が満開です。


2015年6月3日水曜日

大阪てんかん市民公開講座2015のお知らせ

2015年8月2日、国民会館武藤記念ホール(大ホール)にて、大阪てんかん市民公開講座2015が行われます。対象は患者さん、ご家族、医療や教育関係者などてんかんに興味をお持ちの方でしたらどなたでもご参加いただけます。参加は無料です。席に限り(300名)がありますので、事前のお申し込みをお勧めします。当院からは小出泰道医師が「大人のてんかん」のタイトルでお話をさせていただきます。

お申し込みは大阪てんかん市民公開講座2015登録事務局
TEL:0120-561-909(9:00-17:45 土日祝日 その他休業日を除く)

日時:2015年8月2日(日) 1400~17:00 (13:00受付開始)
場所:国民会館 武藤記念ホール(大ホール) 
    〒540-0008 大阪市中央区大手前2-1-2 国民会館住友生命ビル12階
    TEL:06-6941-2433 
    地下鉄天満橋駅より徒歩3分 京阪天満橋駅より徒歩6分

プログラム

総合司会:加藤天美先生 (近畿大学医学部附属病院 脳神経外科 教授)

第一部(14:00~15:30)
小児科の立場から: 「こどものてんかん」 
荒木 敦先生(関西医科大学付属滝井病院 小児科 准教授)

神経内科の立場から:「大人のてんかん」
小出泰道 (小出内科神経科)

精神科の立場から:「てんかんとこころ」
辻富基美先生(和歌山県立医科大学 神経精神科 講師)

第二部(15:40~16:50)
質問コーナー 
(事前に送っていただいたご質問から、各専門の先生方よりお答えいたします)

総括
加藤天美先生



2015年6月1日月曜日

ジェネリック医薬品とてんかん

先日、このようなニュースを目にしました。新聞等でも紹介されていましたので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんね。

経済財政諮問会議、後発品の数量シェア、20年度に80%以上―塩崎厚労相が新目標示す
http://www.qlifepro.com/news/20150529/the-quantity-of-generic-products-share-more-than-80-in-20-years-shiozaki-re-disposition-indicate-new-targets.html

国民医療費が高齢化社会にも伴って増大しているなか、社会保障費の伸びを抑える努力が必要なことは異論はないと思います。問題は中身ですね。このニュースに関していえば、医療現場で治療を行っている、特にてんかん患者さんを治療している立場からいえば、後発品=ジェネリック医薬品のシェア目標に数値をもうけるというのはかなり問題があると思います。

まず、後発品は価格を安く提供するために、オリジナルの薬に比べて安定供給の確保などにお金をかけていません。現にこのように注文が増えると供給自体が止まってしまい、薬を出せない状態になることもあります。

ex.「バルプロ酸ナトリウムSR錠200㎎「アメル」の品薄に伴う出荷調整のお詫び」
(共和薬品)
http://www.jga.gr.jp/pdf/supply/0048.pdf

後発品はオリジナルの薬に比べて、生物学的利用率(わかりやすく言えば、飲んだ薬がどのぐらい血液の中に取り込まれるか)に一定の差がある=血液中の薬物濃度に違いがあることが許されています。価格を安くするためにはある程度の効果の差まではOKとするということです。

もっともこの効果の差は少ない方にぶれることもあれば、多い方にぶれることもあるので、必ずしも効果が低いわけではありません。薬によっては問題がないこともあると思います。というよりも多くの薬では問題がないかもしれません。そうした薬では、このような品薄が起こったとしても、改めて他の後発品やオリジナル薬品を処方することも問題はないでしょう。

しかし、抗てんかん薬に関しては、事情が全く異なります。抗てんかん薬でたとえば血中濃度が2割減ったり、2割増したりすることは、かなりの確率で効果の違いにつながります。抗てんかん薬はもともと採血で血液中の薬物濃度を測定しながら治療をする、またその血中濃度の値に一定の目安となる濃度が設定されているという特徴があります。抗てんかん薬を服用されている方ならよくご存じかと思います。

実際に、血中濃度が低く保たれていたような方では、2割濃度が下がれば、発作が起こる可能性はとてもに高くなってしまいますし、高めに保たれていた方では2割濃度が増せば副作用がみられやすくなります。。ですので抗てんかん薬に関してはオリジナル薬品から後発品、あるいは後発品からオリジナル、あるいは別の後発品、といった切り替えは、海外の多くの国で推奨されない、あるいはしてはいけない、と色々な資料に書かれています。
ex.ジェネリック医薬品に関する各学会の提言
http://square.umin.ac.jp/jes/pdf/generic.pdf#search='%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%8D%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E5%8C%BB%E8%96%AC%E5%93%81+%E3%81%A6%E3%82%93%E3%81%8B%E3%82%93'

後発薬品への誘導、というのはある意味では(他の外国でもかなりの割合の薬がそうなっていることも考えると)仕方がないかもしれないとは思います。しかし、薬によっては問題がある、ということはきちんと認識され、その認識にのっとった社会保障政策であってほしいと願っています。これからもこの点はきちんと訴えていきたいと思います。

2015年5月30日土曜日

抗てんかん薬と体温

暑い日が続きますね。明日は雨のようですが・・・。

抗てんかん薬の中には、ゾニサミド(商品名:エクセグラン)やトピラマート(トピナ)のように、汗をかきにくくなるといった副作用を起こすことがある薬もあります。こうした薬を服用している方は、熱が出ると高くなりやすくなったり、普段から熱がこもりやすくなることもあります。適宜エアコンなどを使用しながら、水分を十分にとって、体調管理に気を配りましょう。

2015年5月18日月曜日

休診のお知らせ

5月22日(金)は副院長(小出泰道)の外来は学会出張により休診とさせて頂きます。また6月5日(金)は院長(小出秀達)の外来は学会出張のため同じく休診とさせて頂きます。受診に際しましては、特に院長の外来に通院中の患者様はご留意ください。

2015年5月8日金曜日

てんかんを公表している著名人⑩ Neil Young(musician,1945~)

暑いですね。なんだか春が過ぎるのがあっという間で、通勤の自転車も汗ばむぐらいの陽気です。

これから夏になると、野外でのお祭りに参加する機会も増えますね。日本でも音楽フェスティバル等が開かれることが各地で珍しくなくなり、「参戦」するといった言葉をよく聞くようになりました。

これら野外音楽フェスティバルの中でも有名、かつ歴史があるものとして、フジロックフェスティバルは有名です。今年も7月24日から26日に行われますが、日本国内外から、たくさんの有名なアーティストが参加します。

2001年にこのフェスに参加したNeil Youngは、1960年代から現在に至るまで活躍を続けるアーティストです。その音楽は時代によって様々な要素を取り入れ、一言では説明できませんが、”Heart of Gold"などは私も好きな曲の一つです。

彼は20代でてんかんを発病し、ある時などはステージ上で発作を起こすこともあったといいます。また彼は幼少期から糖尿病やポリオを患うなどの苦労を重ねてきました。さらに2005年には脳動脈瘤を指摘され緊急手術を受けています。彼はあるインタビューに対してこう述べています。

「動脈瘤、ポリオ、てんかん―これらすべては単なる景色の一部にしか過ぎない。誰にとっても人生というのは苦しいもので、直面するのはたやすいことじゃない。色んなことがあるけど、そこから立ち直っていかなきゃいけない」all those things are just part of the landscape. Everybody’s life is hard, you look at life, and it’s not a cakewalk. Things happen, and you’ve got to be able to bounce back.”

また彼のお子さん3人のうちお二人には重い障害があり、そうした経緯から障碍者支援活動なども積極的に行っています。

https://www.youtube.com/watch?v=85qJDl0oGd4

2015年3月30日月曜日

花の季節&てんかん外来の新規患者さん数

朝晩との気温差はありますが、暖かい日がようやく続くようになってきましたね。
当院の庭の木瓜、桜が満開になっています。

 
 
当院をてんかんの診療を希望されて受診された新規の患者さんが、昨年4月末から27年3月半ばまでで100人を超えました。なかには受診後にてんかんではないと判断した方が15%弱いらっしゃいますので、そのなかで継続的にてんかんの治療を行っている方は80~90人ぐらいでしょうか。患者さんは徐々に増えつつありますが、今後も患者さんの診断や治療を丁寧に行っていきたいと思います。

2015年3月11日水曜日

東日本大震災の経験

東日本大震災の日から、つい先ほど4年が経過しました。

4年前のあの日は病棟で患者さんの気管切開のチューブをを交換するような処置をしていたと思います。突然の大きな揺れ、すわ東南海地震がやってきたのか、と静岡に在住する人間としてはまずそれが頭に浮かびました。しかしそれが東北地方を中心にした大地震であることがわかり、次いで押し寄せる津波の映像に胸が苦しくなったことを思いだします。

3月16日に静岡を出発し、岩手県山田町を中心とした沿岸部で支援活動をしました。主にはてんかんの患者さんに薬を届ける、という他の支援者があまりしていない活動に力を入れましたが、通常の内科診療もしました。親御さんを亡くされたばかりのお子さんの姿には涙が溢れました。一方で抗てんかん薬が切れかかっていて、少しの薬を飲みつないでどうにかひどい発作を起こすことなく避難所でがんばっていたお子さんの親御さんは、薬をお渡しすると涙を流して喜んでおられ、この人のためだけにでも来てよかった、と心から思いました。地元の方々はひどい状況の中でも、手を取り合って頑張っておられました。

あれから4年、このような災害は二度と起こってほしくはありませんが、震災で知り合った東北地方の先生方と一緒に仕事をさせて頂くなど、貴重な経験もたくさんさせて頂きました。人知を超えたこのような災厄は今後も必ず起こります。我々はこの経験を無駄にすることなく、日ごろからの備えを今一度思い起こす日にしましょう。

患者さんにおかれましては、薬の備蓄を十分すること、保管は取り出しやすいところに分散しておくこと、薬の内容は常に薬手帳などに新しい情報を更新しておくこと、緊急時の自分の治療に関する連絡先の確認などを怠らないようにしましょう。

参考:てんかん 災害支援ネットワーク

2015年3月10日火曜日

当院かいわい:十三参り

今日も風が強く寒いですね。先日ご紹介した当院の庭の白梅も、風にあおられて揺れています。

当院への最寄り駅で、皆さんに最もよく利用されているのは地下鉄谷町線の四天王寺前夕陽ヶ丘駅になります。こちらの2番出口を出て、北に歩いていくと150-200mほどで当院が谷町筋沿いに見えてきます。

このちょうど駅と当院の中間ぐらいにあるのが大平寺です。こちらは虚空蔵菩薩をお祀りする曹洞宗のお寺です。関西では十三参りという、数え年で13歳になったら虚空蔵菩薩にお参りをして、子供の知恵と幸福を祈るという風習があります。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%81%E4%B8%89%E8%A9%A3%E3%82%8A

大平寺は大阪では十三参りの中心となるお寺さんです。寺門にも大きく「十三まいりの寺」という石碑が立っています。お参りは通常春に行われるので(最近は中学校にはいる前が多いそうです)、これからの季節、お参りするご家族をを目にすることがあるかもしれませんね。

十三参りの寺 大平寺
http://www.taiheiji.com/index.html


2015年2月25日水曜日

自立支援医療は利用されていますか?

寒さも少し和らいだかなと思ったところ、今週末からはまた寒い、という予想がされているようです。インフルエンザA型の初診患者さんはさすがに減ってきておりますが、体調管理が難しい、という点では気温の変動が大きいこれからも注意が必要ですね。

当院をてんかんで初診された患者さんが、昨年4月からの約10か月間で90名となりました。病院からのご紹介も多い一方で、ご自分でインターネットから当院のてんかん専門外来を検索して受診される方も増えてきております。

こうした方々の初診時には情報をまとめておくために問診票を活用しています。そのなかに「これまでに利用していた制度」という項目を設けているのですが、てんかんの方の医療費の助成制度について何も聞いたことがない、という方が(長年治療を受けていた方でも)よくいらっしゃいます。利用できそうな制度についてご紹介すると、「なんで今まで紹介してもらえなかったのか」と怒る方もいらっしゃいますね。基本的にはどの制度も患者さんが診断書をもらって自分で申請する形になっていますので、制度の存在を知らなければ、利用することを思いつきすらしないまま日が過ぎていく、ということになってしまいます。我々は適切に必要な方に情報を提供する必要があると考えます。

なかでも自立支援医療は重要性が高い制度です。「てんかん」という診断があって通院が必要な状態があれば、発作の頻度や程度は関係なくだれでも利用できます。大阪市内の方であれば15歳まではこども医療の助成制度がありますので必要ありませんが、16歳以上であれば、どなたでもてんかんについての外来通院医療費が3割→1割に軽減されます。てんかんのように長年にわたって治療を続ける必要があることが多い病気をお持ちの方にはかなり利用価値が高い制度になっています。現在利用しておられない方がいらっしゃいましたら、担当の先生にぜひ一度利用の可否について(てんかんであれば利用できない状況は基本的にはありませんが)質問してみましょう。

自立支援医療にはいくつか対象となる患者さんによって種類があり、更生医療や育成医療などもありますが、てんかんが関係するのは「精神通院医療」です。てんかんは長年精神科の先生が診療を担当していたという歴史があって、利用する制度の多くは他の精神疾患(たとえばうつ病など)と重複する部分があります。現在は神経内科や脳神経外科に通院している患者さんのほうが多いので、精神科の先生が担当する場面は少なくなりつつありますが、制度としてはそうした名残がある、というところでしょうか。ただ、てんかんの患者さんに関しては担当の専門科にかかわらず、自立支援医療や(こちらは発作頻度や合併症の有無によって対象になるかどうかが決まりますが)精神保健福祉手帳などの診断書を記載できることになっています。

繰り返しになりますが、現在自立支援医療を含めてんかん患者さんが利用できる制度について何も聞いたことがない、という方がいらっしゃいましたら、ぜひ担当の先生に一度相談してみましょう。

2015年2月14日土曜日

花粉症と薬の飲み合わせ

本日もそうですが最近になり、「花粉症の薬を下さい」とおっしゃる方が増えてきております。スギ花粉にアレルギーをお持ちの方はそろそろ嫌な季節が来つつあるようですね。本日おみえの方からは「花粉症の薬と、今飲んでいるてんかんの薬の飲み合わせは大丈夫ですか?」と質問がありました。

抗てんかん薬を服用している方について、飲み合わせはよく話題にあがるポイントですが、基本的な考え方としては「注意したほうがいいものはあるけど、絶対に飲んではいけないものはさほどない」ということになるかと思います。

抗てんかん薬を服用している方で他の薬を服用する際に問題になるパターンは二つありまして、

①その薬がてんかんの薬との相互作用があるので摂取しないほうがいい
②薬とは関係なく、てんかんをお持ちの方は服用する場合は発作が悪化しないかどうかなど注意したほうがいい

というパターンですね。

①はたとえばデパケンやセレニカなどのバルプロ酸を服用している方は、カルバペネム系の抗生物質を使用しないほうがいいことが知られています。これはこのタイプの抗生物質がバルプロ酸の血中濃度をかなり低下させるために、発作が起こりやすくなることがあるためです。実際にバルプロ酸を服用しているてんかんの方が、肺炎で入院してメロペンを点滴したら発作が群発した、といった方をみたことがあります。経口避妊薬などもある種の抗てんかん薬の血中濃度を極端に下げてしまいます。抗生物質などは他に選択肢がたいていありますので、普段のお医者さんにかかる場合には服用しているお薬をきちんと申告することでこうした状況を避けることができます。

②はいわゆる発作の閾値を下げる(発作を起こしやすくする)薬です。抗うつ薬の一部や、抗生物質の一部など多くの薬にそうした作用があることが知られています。花粉症の薬としてよく用いられる抗ヒスタミン薬などにもそうした作用があると言われています。

ただ、②の場合は他に選択肢がない場合もあります。抗ヒスタミン薬などはどの薬にもてんかんの方には注意するように書かれていますが、では使わないでいられるか、といえば、ないと困る方がたくさんいますので使用しないわけにはいかないこともあります。こうした場合はできるだけ眠気などてんかん発作を悪化させる要因が出にくい薬を選択します。ただ、どの薬が眠気が少ないか、というのもおなじ抗ヒスタミン薬でもかなり個人差がありますので、使ってみないとわからないというのも事実かと思います。

では使って実際に悪いことが起こるか、というと、ほとんどの場合は何ら問題ありません。花粉症の症状が悪くて鼻閉で夜も眠れない、といったことがあれば、薬の影響よりもむしろ花粉症の症状が悪いことのほうが影響が大きいでしょう。このあたりのバランスを考えたさじ加減が大切です。

服用している薬との飲み合わせや「この薬飲んでもいいのかな?」というようなことがあれば、いつでもご連絡頂ければお答えいたしますが、基本原則の「注意したほうがいいものはあるけど、絶対に飲んではいけないものはさほどない」を頭において、不安になりすぎないようにしましょう。

2015年2月3日火曜日

寒さ厳しき折・・・

今日も朝から寒いですね。風があるので、体感気温は実際の温度よりもずっと低く感じられます。インフルエンザA型の流行もそろそろピークを越えつつあるようですが、まだまだ体調を崩しやすい時期ですので、十分お気を付けください。

当院の庭では梅がちらほらと咲き始めています。

2015年1月27日火曜日

看護師さんを募集中です!

小出内科神経科では本年4月から欠員補充のため、看護師さんを1名募集しております。「子育て中なので、子供が幼稚園に行ってる時間帯だけ」「週に3-4日でも」など、ご要望に応じて対応させて頂きますので、ご興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、当院までぜひご連絡、またはご紹介ください。

小出内科神経科:☎06-6779-2003 メール:koidenaikashinkeika@axel.ocn.ne.jp.

2015年1月14日水曜日

てんかんを公表している著名人⑨ Susan Boyle(Singer,1961~)

当院ではてんかんは小学生以上のお子さんを診療させて頂いておりますが、時々、「子供にはてんかんだと言ってないんです」と、診断をお子さんには伝えていないと仰る親御さんがいらっしゃいます。お子さんがショックを受けないように、という配慮なのですが、これは実はあまり良いことではないと考えます。

インターネットなどでてんかん患者さんの医療相談をみていますと、「小学校の頃に親と一緒に時々病院に行って、赤いシロップ剤をもらってたんです。何で病院に行くのかわかんなかったんです。親も何も言ってくれなくて。今は治療も何もしてないんですけど、あれって実はてんかんだったんじゃないかって・・・。今なにもしてないけど、大丈夫なんでしょうか?自分の子供にも同じようなことがあるんでしょうか?」といった質問を目にします。文面からおそらく小児期に自然に治癒するタイプのてんかんだったのではないかと思われますので、この場合もちろん治療も必要はありません。きちんとした説明を受けていないがゆえに、あとで無用な心配をしなくてはならないということになっているわけです。

親御さん自身にてんかんに対する偏見があり、また子供のことを心配するあまりに真実を全く伝えずに治療をする、ということがまだまだある現状に対し、相手が子供であっても病気の本質、治療の見通しなどを、きちんと説明することの大切さを訴えていきたいと思います。

Susan Boyle(1961~)は2009年のTVオーディション番組で、ミュージカル:レ・ミゼラブルの挿入歌”I Dreamed A Dreamを歌い、大好評を得てアルバムはグラミー賞にノミネートされるなど、一躍スターの仲間入りをしました。日本でも同年の紅白で歌っていたことを思いだします。Susanは小児期にてんかんがあったことを告白していますが、以下のインタビューの中で「私は両親によって真綿にくるまれるように守られていた」とし、両親はそのことを正しいと信じていたと述べています。両親や周囲の人の偏見を打ち破るのは簡単なことではなかった、という感想は、きちんとした知識を親が持ち、子供にもきちんと説明することの重要性を示唆しているように思います。

http://hub.contactmusic.com/news/susan-boyle-reveals-battle-with-epilepsy_1274310

2015年1月5日月曜日

あけましておめでとうございます

皆様あけましておめでとうございます。今年も少しでも患者さんのお役に立てるような診療を行っていきたいと思います。本日より通常通りの診療を開始しておりますので、よろしくお願い申し上げます。