2017年9月30日土曜日

心原性失神をまずは鑑別!

最近1-2カ月の間に診察させていただいた患者さんで、お二人ほど心臓が原因となっている失神(心原性失神)の患者さんがおられました。どちらの方もてんかんとすでに診断を受けておられ、抗てんかん薬も服用されていました。どちらの方もてんかんと診断されてから様々な心理的葛藤を生じる出来事がたくさんありましたが、特に片方の方(中学生)は抗てんかん薬による副作用で精神的にもとても不安定になり大変だったようです。この方の元々のご相談は「てんかんがあるのだが、抗てんかん薬の副作用が目立って大変」というものだったのですが、診断そのものが違っていてはスタートからうまくいかないのも当然と言えます。

心原性失神は発作そのものが生命の危機が生じうる緊急事態であり、この点がてんかんとは全く異なります。てんかんは発作そのもので命を落とすことは事故やよほどのことがない限りありません。こうした点から、「意識をなくして倒れた」「倒れてけいれんがあった」方でまず考えるべきは心原性失神です。これがないことを確認してから改めててんかんについて考えてもまったく遅くはありません。



2017年9月26日火曜日

神経疾患を語る会

9月25日(月)は大阪赤十字病院と富永病院の神経内科の先生方を中心に定期的に行っておられる「神経疾患を語る会」でお話をさせていただきました。

今回も問診が最重要である、という話をしたのですが、お若い先生から「問診が重要だとはてんかんを専門にしている先生は皆さんおっしゃるのですが、どうしていいかわからないのです。何かコツはありますか?」というご質問をいただきました。

こればかりはなかなか一言でお答えすることが難しいのですが、自分がしていることを振り返ると、まずいつごろからどんな症状があり、今ある症状は何なのか?ということをはっきりさせます。これがはっきりしないと、そもそもその方がてんかんなのかどうか?てんかんであればどういうタイプの発作を持っているのか?ということがわかりません。この部分の問診は十分に時間をかけて行います。患者さんの目の前で発作の真似をして見せることもあります。「そう!まさにそれです!」と言われたときは名優になったような気がしてうれしくなってしまいます(笑)

それからこれまでに他に病気はなかったか?(既往歴)、ご家族に何らかのご病気をお持ちの方はおられるか?(家族歴)、喫煙や飲酒の有無(嗜好)、生まれた時の情報(出生歴)、首がいつ座ったか?といった乳幼児期の発達の問題の有無、学歴や職業歴、運転免許の有無や運転の状況、現在使っている医療や福祉の制度などの情報を順に聞きます。これには初診時には問診表を使います。

1回しか症状がない方などを除けば、ここまでで40分~1時間ぐらいは時間がかかります。それぐらいは時間をかける必要がどうしてもあるからですね。それから脳波の検査をします。必要に応じてMRIなどの検査も提携先で受けていただくようにしています。

これらの情報を総合して、その方がどういうてんかんを持っていて、どんな治療を受けてもらうのがよいか、といったことを一緒に考えていくことになるわけです。

これは書くと簡単なことですが、確かに経験がいるだろうとは思います。私も最初はてんかんセンターの諸先生方の問診を横で見ていました。先生によっていろいろとスタイルはありますが、きちんと聞くべきことは聞き、病状を明らかにする、というのは当然皆さん同じでした。その中から今の問診のスタイルができていったのです。

そこでご質問に対しては上に描いたような基本的な内容についてお話ししたうえで、できればてんかんに詳しい先生の問診を何度か見せてもらうのがよいのでは?とお伝えしました。静岡など大規模なてんかんセンターを若い先生が見学する意義はとても大きいと思います。

2017年9月11日月曜日

第5回関西精神科てんかん勉強会

9月9日は上記の会で座長をさせていただきました。精神科医のてんかん離れについて最近は指摘されることも多いのですが、ここにはてんかんについて情報収集したい、という熱心な精神科の先生がいつも参加されています。

今回はてんかん性精神病と言われる病態について総論を紀南こころの医療センターの辻富基美先生がお話になった後、経験された症例について川崎医院の川崎淳先生が提示されました。どちらも大変勉強になる内容で、特に川崎先生の症例のご経験については私からも色々と質問をさせていただきました。今後も年に2回程度続けていく予定になっていますので、興味のある精神科の先生がいらっしゃいましたらどうぞご連絡ください。

写真は会が終わってからの食事の際の川崎先生と辻先生との3ショットです。私だけ黒光りしていますね(笑)