2016年12月31日土曜日

今年もありがとうございました

2016年も大みそか。今年もいろいろありましたが、診療を無事に続けてくることができました。最近は患者さんの数が増え、それに伴ってお待たせすることも増えており、心苦しく思っておりますが、今後も皆さんのご協力を得ながら、診療を続けてまいりたいと存じます。新年もどうぞよろしくお願い申し上げます。皆様どうぞ良い年をお迎えください。

2016年12月10日土曜日

紅葉

今日は風があり、道にも落ち葉がたくさん舞っています。当院の庭の紅葉も、そろそろ葉を散らしてしまいそうです。皆様、よい週末を。

2016年12月7日水曜日

Epilepsy Symposium2016大阪

急に寒くなりすぎて、身の回りに体調を崩す人が増えました。自分も体がついて行かない感じがしますが、今のところ元気です。皆様も手洗いを心がけましょう。

明日梅田にて、てんかん診療の置かれている現状についてお話してきます。いただいたお題は「てんかん診療の課題」です。お題を下さった先生はおそらく運転免許のお話や妊娠などのてんかんにまつわる問題点について話してほしかったのだと思いますが、思うところあって診療の基本的な点がどのぐらい問題を抱えているか(たとえばなぜてんかんでない病気がてんかんだと誤診されるのかなど)、またその問題を生み出す土壌や改善のアイディアなどについてお話してみたいと思います。


2016年11月29日火曜日

当院かいわい:パインアメ

当院周辺は住所の生玉寺町が示すようにお寺の多いところで、当院かいわいでご紹介するのも寺社が多いのですが、今日は皆さんご存じ(ご存じですよね??)「パインアメ」のパイン株式会社です。本社が実は当院の近くにあるんです。

私などは子供の頃、飴の穴から息を吹いて遊んでいたことなどを思い出すのですが、今の子供さんはあまり知らないのかもしれませんね。

当院から谷町筋を北へ3分ほど歩いたところにあります。表玄関から中をのぞくと、おなじみの飴などのお菓子が並べられています。会社のHPをみると、昭和26年~販売されているとか、最初は穴は開いていなかったとか色々な情報が載っていておもしろかったです。皆さんもよければごらんになってはいかがでしょうか?

パイン(株)
http://www.pine.co.jp/



2016年11月18日金曜日

てんかん外来(新患)の現状:2015年7月~2016年6月

最近の発表のなかで、当院の新患外来のデータを少しまとめてご紹介する機会がありましたので、こちらにも掲載させていただきます。
以前にも同様のまとめ(2014年4月~2015年9月)をしたことがありますので、興味をお持ちの方はそちらもご参照ください。
http://koidenaikashinkeika.blogspot.jp/2015/09/blog-post_14.html

2016年7月~2016年6月の一年間に当院てんかん外来を新たに受診された患者さんは186名(男性110名、女性76名)でした。年齢層は20代の方が60名と最も多く、次いで10代、30代となっていましたが、5歳~79歳と幅広い年齢の方が受診されていました。

居住地はより大阪の方が以前より増え、大阪市内(91名)、市外大阪府(75名)が9割弱を占めました。大阪府外では兵庫(10名)、奈良(7名)、京都(2名)、大分(1名)の順になっていました。

診断は137名がてんかん(症候性部分てんかん(あるいはその疑い、以下同)102名、特発性全般てんかん19名、特発性部分てんかん4名、症候性全般てんかん4名、未決定てんかん1名、進行性ミオクローヌスてんかん1名、分類不能のてんかん6名)であり、てんかんの疑い8名を含めると145名(78%)がてんかんに関連する方と考えられました。

一方で、残りの41名(22%)はてんかんの治療や診断を希望されてこられた方が大半ですが、失神(あるいはその疑い、以下同)13名、心因性非てんかん発作11名、(癲癇とは診断しえない)初発のけいれんエピソード3名、発作性運動誘発性ジスキネジア2名となっていました。当初からてんかんか非てんかんかの鑑別を希望されてこられた方もいますが、やはりてんかんとしてすでに治療が行われていたような方も含まれています。色々なところでお話をしていますが、現時点でてんかんの診断に一番役立つのは(十分な知識を持った医師が行う)問診です。脳波検査にはてんかんがあっても異常がないことはよくありますし、MRIなどはてんかんそのものの診断には基本的には寄与しません。症状がてんかん発作で間違いなければ、検査に異常がなくてもてんかんだと自信を持ってきちんと診断ができる、というのが一番重要なことなのです。当院でてんかんではなかった、と診断した方の少なくない割合の方々は、この問診が圧倒的に不足していると考えられました。不十分な問診に、不十分な脳波の判読経験が加わると、誤った診断が下されることはよくあることなのですね。

もちろん私も診断を誤ったことはたくさんあります。「てんかんではない」と診断した方がてんかん発作を持っていたり、てんかんだと思っていた方の発作がずっと見ている間に「あれ?」と思うことが出てきたりといった経験は沢山あります。逆に言えばそういう経験をたくさんしてきたので、診断を保留すべき場合は保留し、患者さんと相談して経過をみながら判断をする、といった方法を選択できるようにもなりました。

これが単に「てんかんかもしれない」「てんかんが否定できない」というだけであれば患者さんは不安の中で日々を過ごすことになりますが、診断を確実に下すメリットや、不確実な診断のデメリットについてきちんと説明し、経過の観察の方法や起こりうる症状への対処法などをきちんと説明しておくことが重要です。それによって患者さんやご家族は診断を下すためのチームに入っていただけます。こうした経験を一緒にすることで、その後てんかんと診断した場合も患者さんやご家族が主体的に治療に取り組むことができるようになっている気がします。

現在は平日午後に問診を1時間程度できる枠を設け、その後脳波をとらせて頂き、検査後に治療方針などを説明する時間を30分ぐらいとっています(土曜日は混雑しており、問診に時間がかけられないため新患枠を作っておりません。申し訳ありません)最初が肝心なので、この診療枠設定はしばらくは変更する予定はありません。再診の方には混雑でご迷惑をおかけすることもありますが、初診の方に時間をとるためもあり、何卒ご理解をよろしくお願い申し上げます。



2016年11月14日月曜日

兵庫県てんかん県民講座で感じたこと

先日も告知させて頂いたとおり、てんかん協会兵庫県支部主催のてんかん県民講座が行われました。

今回の講演ではてんかんとは何か、というお話をしたあとで、てんかんがどう生活や人生に影響しうるのかを考えました。その後、患者さんやご家族のインターネット上に投げかけられている様々な悩みをとりあげ、それに対してどう応えるか、というお話をさせていただきました。

今回の聴衆の参加者にはてんかんの当事者やご家族だけでなく、学校の先生がたくさんおみえになっていたことが印象的でした。それぞれが担当する生徒さんにてんかんがあって、どう対応すべきなのか、また現在の学校の対応が正しいのかどうか、という悩みをお持ちでした。

これまでの講演は医療関係者か当事者、ご家族に対してのものが多く、今回学校の先生からの多数のご質問にお答えしたのは良い経験でした。静岡てんかん・神経医療センターでは学校や福祉関係者などてんかん患者さんにかかわる専門職に向けたセミナーを定期的に行っておられますが、近畿圏でも同様の試みを考える必要があるように思われました。今後検討していきたいと思います。

2016年11月1日火曜日

兵庫県てんかん県民講座

日中はまだまだ暖かい日も多いですが、朝晩はひんやりした日が増えてきましたね。当院でインフルエンザの予防接種を受ける方も徐々に増えてきました。冬が徐々に近づいてきているのを感じます。

2016年11月13日(日)、神戸市勤労会館におきまして、日本てんかん協会兵庫県支部のお招きにより、てんかん県民講座でお話をさせていただくことになりました。

「年代ごとに変わりゆくてんかん患者さんの悩みにどう対応するか」というタイトルですが、このお題は主催される当事者の方からいただきました。てんかんは小児期に発症することも多く、かつ生涯にわたって治療を必要とする方もおられます。この間に患者さんご本人や親御さんは就学・就労・自動車免許の取得・結婚・妊娠/出産といった様々なライフイベントをそれぞれの立場で経験することになります。患者さんが年齢を重ねるにつれ、それぞれをとりまく状況は変化していき、抱える悩みも変わっていきます。我々はそれに対してどう応えていくのか・・・とても重要なテーマだと思います。

皆様になにがしか得るものがあったと感じて頂けるようなお話を考えたいと思っています(まだ準備は進んでおりませんが・・・・)せっかくですのでたくさんの方にご参加いただければ幸いです。どうぞよろしくお願い申し上げます。



2016年10月26日水曜日

当院かいわい:「真田丸」と大阪大空襲

NHKの大河ドラマ「真田丸」は皆さんご覧になっていますでしょうか?

当院の周辺はまさに真田丸の舞台になった激戦地ですので、あちらこちらに記念碑などが建てられています。

惜しむらくは真田幸村のエピソードが残る寺社仏閣にしても、いわゆる遺跡のような古いものが残っていないことです。当院周辺には1945年の大阪大空襲で激しい爆撃があり、焼夷弾が沢山落ちたためだと思われます。父は幼少期にこの空襲に遭い、色々と辛い思いをしたことをかつて我々に話してくれました。

平和にドラマの中での戦いを楽しめる世の中が続いていくことを強く願っています。


2016年10月21日金曜日

地震への備えを!

つい先ほど、鳥取県で大きな地震があったようですね。大阪の診察室でも明らかな揺れを感じましたので、きっと大きな揺れが現地ではあったことでしょう。当院の患者さんで鳥取から通院されている方もいますので、心配ですね。

このブログでも何度も繰り返していますが、災害への備えを平素から怠らないようにしましょう。薬の変更がない方は最低でも2週間、よければ1か月ぐらい余りを持っておいて、いつも古いものから使っていって入れ替えていくようにしましょう。急な災害で受診できなくなっても、そのぐらいの備蓄があればなんとかなります。災害時に常用薬が切れてしまう、これは大きな不安材料になります。特にてんかんの方は不眠等があると発作が起こりやすくなってしまうこともありますし、災害時こそ薬を続ける重要性は増します。

また備蓄薬は1か所だけに保管するのではなく、何カ所かに分けておいておくといいでしょう。いざという時に取り出せなくなるリスクを軽減できます。また普段から財布などにも入れておき、外出先などで災害にあった時にも薬が切れないようにしておきましょう。

また、緊急時に家族やかかりつけ医への連絡方法を確認しておくことや、かかりつけ医が連絡が取れなくなった場合に備えて(かかりつけ医も被災している可能性が高いですし)、病状等について相談できる窓口を知っておきましょう。てんかん協会の相談電話や、静岡てんかん・神経医療センターのてんかんホットラインはそうした場合に役に立ちます。

日本に住んでいる限り、地震に絶対に遭遇しないと言いきれる方は皆無です。絶対に備えを怠らないようにしましょう。

2016年10月19日水曜日

頭痛学会での講演に伴う休診のお知らせ

10月22日(土)、京都で日本頭痛学会総会があり、副院長は講演のため終日不在です。ご相談や受診に際しましてはご留意ください。



2016年10月14日金曜日

第50回日本てんかん学会学術集会への参加と、「てんかんをめぐるアート展」での受賞作

第50回日本てんかん学会学術集会は10月7日~9日、静岡市グランシップで開催され、大盛況の中閉会しました。小出も企画セッション「てんかん診療における救急対応」のなかで「てんかん重積治療に関する最近の知見」のタイトルで講演をさせていただきました。またてんかん教育入門コースの教育講演として「成人てんかんの発作症状」について、てんかん、非てんかん発作のビデオを提示しながらお話をしました。

我々のセッションのみならず、今回の学会は過去最高の参加人数を記録したそうで、立ち見の方も出る状態でした。先日もご紹介した「てんかんをめぐるアート展」「てんかんと映画」、市民公開講座「動物のてんかん」などのこれまでにないユニークな企画も皆さんの興味をひいたのだと思います。学会のタイトルであった「てんかんのサイエンスとアート」がまさに具現化された会でした。静岡てんかんセンターの先生やスタッフの方々が事前準備に奮闘された結果ですね。

学会は色々なセッションが同時進行で行われるため、本来なら聴きたい講演を泣く泣く諦めるといったこともありましたが、拝聴できたセッションはみな勉強になる内容ばかりでした。IoT時代がそこまで来ていることを感じさせられた、現在開発中の「てんかん発作を予知する衣服」や、「転倒時の外傷を予防するエアバッグ」などは早く実用化される日が来てほしいものだと思いながら聴いていました。

個人的にもとても懐かしい静岡の風土に触れ、てんかん診療の同志の先生方とお話しできたこともよかったです。また気持ちも新たにてんかん診療に取り組もうと思います。

当院の患者さんの作品が「てんかんをめぐるアート展」で何点か展示されていましたが、審査員賞を受賞した作品をご紹介させていただきます。タイトルはそれぞれ、「ワインの瓶」、「水仙」です。審査員の方からは大変高い評価をうけたそうです。他の力作のなかから選んでいただけたことが、我がことのように嬉しいです。



2016年9月29日木曜日

日本てんかん学会学術集会出席による副院長休診のお知らせ

2016年10月5日午後から10月9日まで、副院長の外来は日本てんかん学会学術集会出席のため休診とさせていただきます。院長の外来は通常どおりとなっております。この間メールへの返信もできません。受診・ご相談の際にはどうぞご留意ください。

2016年9月21日水曜日

てんかんと映画 (第50回日本てんかん学会学術集会 市民公開イベント)

先日からご紹介していますが、10月6日~9日静岡グランシップで第50回日本てんかん学会学術集会が行われます。先日の「動物のてんかん」と同じく、ユニークな市民公開イベントの一つがこの「てんかんと映画」と題されたシネマラソンです。

これは期間中、てんかんが映画の中に取り上げられている、またはそれが映画のテーマそのものである、といった映画を連続で上映する、というイベントで、これも過去に例のない興味深いイベントだと思います。

上映される映画について取り仕切っている若手の先生に問い合わせさせていただいたところ、以下のような映画が上映されるそうです。先日当ブログでご紹介した「First,Do No Harm(邦題:誤診)」や、「レインマン」「静かな生活」のように知っている、見たことがある映画もありましたが、他はタイトルも含め全く知らない映画ばかりです。静岡のてんかんセンターにてんかんが取り上げられている映画を収集している先生がおられ、主にはその先生に教えてもらった、とのことでした。

1日目

静かな生活
クレオパトラ
レインマン

2日目
誤診「First,Do No Harm」
コントロール
ミルク
英国王室 もうひとつの秘密

3日目
恋のためらい
蜂蜜
奈緒ちゃん

またそれぞれの映画もご紹介してみたいと思います。ちなみに映画収集担当の若手の先生のお勧めは「英国王室 もう一つの秘密」だそうです。

2016年9月10日土曜日

当院かいわい:光傳寺と淡嶋明神

当院南の学園坂を下り、松屋町筋を北に50mほどいくと、光傳寺があります。元和5年(1619年)開基の浄土宗のお寺だそうです。門前に「鯛屋貞柳墓所」という碑が建っています。江戸時代の狂歌師だそうですが知らなかったので調べてみますと、和菓子店で有名な虎屋さんのHPに面白いエピソードがいくつも出ていました。和菓子屋さんだったのですね。

鯛屋貞柳と玉露霜(とらやHPより引用)
https://www.toraya-group.co.jp/terms/copyright/

こちらの境内には淡嶋明神が祀られています。お寺の境内に神社さんがあるので、何かいわれがあるのかと思いますと、これも門前に掲示がされていました。伝説とはいえ、神様が婦人病で離縁、というのはひどいですね。ただこの謂れについては住吉大社の社領が淡嶋にあったから後世の人が後付けした、という話もあるようですね。実際に加太の淡嶋神社本社にはこの謂れは取り上げられていません。

春になるとここの境内は桜がとてもきれいです。来春にはぜひ写真で皆さんにご紹介したいと思います。




2016年9月1日木曜日

動物のてんかん (第50回日本てんかん学会学術集会 市民公開イベント)

10月の第50回日本てんかん学会学術集会では、色々と興味深い取り組みが行われる予定になっておりますが、「動物のてんかん」と題した市民公開イベントもその一つです。


これまで日本てんかん学会では当然ですがヒトのてんかんが主な話題で、動物のてんかんというとマウスなどの実験てんかんの話しかありませんでした。


今回はそうではなく、本当に動物のてんかんについて、ペットなど動物のてんかんの診療の第一線で活躍されている獣医学者の先生方が、診断や治療について様々なお話をしてくださるとうかがっています。


インターネット上で「てんかん」について検索しますと、病状についての相談がかなりヒットしてきます。御自分やご家族のてんかんについての相談がもちろん多いのですが、ペットのてんかんについての相談もよくあります。獣医さんの中でもてんかんに詳しい先生はさほど多くはないようで、みなさん色々と苦労されているようです。


ペットの中でも、犬種にもよるようですが、イヌはよくてんかんを発症します。ネコやトリのてんかんもあります。本当にてんかん発作かどうかはわかりませんが、ネット上の動画サイトでは魚やヘビ!の発作、というものもみつかります。脳を持っている生物はどんな生物でもてんかんを発病しうる、というのも本当なのかもしれませんね。


演者の先生のお一人は存じ上げていますが、とても熱心に動物のてんかんの研究をしておられます。興味深い話が聞けるものと今から楽しみにしています。ペットを飼っておられる方もそうでない方もぜひご参加ください。


第50回日本てんかん学会学術集会 市民公開イベント
http://www.c-linkage.co.jp/jes50/contents/event.html

2016年8月26日金曜日

てんかんと精神症状を考える会

8月25日(木)大阪市内にて、「てんかんと精神症状を考える会」で座長と講演の演者を務めさせていただきました。

まず最初に、てんかんを診療する精神科の先生は減っている、また今後も減っていくことが予想される、というデータをてんかん学会の科目別医師の会員数と、会員の平均年齢からお示ししました。てんかん学会の精神科学会員の年齢ピークは50-60代にあり、神経内科の30-40代がピークにあるのとは対照的です。これが世に言う「精神科のてんかん離れ」ですね。会場は明らかに若手の先生も含めて精神科の先生で満席でしたが・・・。

その後はこれまでに経験した精神症状を呈する患者さんについていろいろとお話ししました。熱心にメモをとる先生もおられたので、興味は持っていただけたのではないかと思います。

こうした会をとおして、てんかんに興味を持ち、てんかんを専門にするためにてんかんセンター等で研修を受ける、といった先生が少しでも増えればいいな・・・と考えつつ帰路につきました。

2016年8月24日水曜日

市民公開講座のお知らせ

きたる9月11日(日)14時より、堺市産業振興センターにおきまして、市民公開講座の演者を務めさせていただきます。私の講演は「てんかん患者さんが利用できる制度」となっております。

てんかんで通院が必要な方は全員が自立支援医療の対象となり、医療費が軽減されます。具体的に言うと通常の健康保険をお持ちの成人の患者さんであれば、外来の医療費の3割負担が1割になります。てんかんの患者さんは抗てんかん薬の内服を長期に必要とする方も多いので、医療費が1/3以下で済むこの制度はとても利用価値が高いです。特に最近次々と発売される新規抗てんかん薬は旧来の薬に比べて価格が高く、この制度の利用価値はますます高まっています。

しかし、当院の外来を初診される方の中には、これまで何年も治療を受けてきたにもかかわらず、自立支援医療について「初めて聞きました・・・・」という方もよくいらっしゃいます。中には怒りだす方もいます。「そんなんだれも教えてくれませんでした!」これだけ医療に関する情報がネットなどにあふれている現在においても、自分にとって有益な情報をきちんと手に入れることは難しいのだなあ・・・・と実感します。

今回の市民公開講座は時間に限りがあるため詳しい説明は難しいのですが、医療費の軽減、就労の支援、生活の支援など、てんかんの患者さんが必要に応じて受けることができる制度についてご説明させて頂きます。他の先生方のご講演もきっと参考になる情報が沢山あると思います。事前申し込みは必要ありませんので、興味をお持ちの方はどうぞご参加ください。

2016年8月22日月曜日

てんかんと妊娠④-B バルプロ酸の知的発達への影響について

B.胎児の知的発達への影響

抗てんかん薬の胎児への影響、というと、ブログの前項(2016/2/15)でもご説明しましたように、胎児奇形が長年の懸案でした。この点ではもっとも影響が懸念され、かつ服用している患者さんが多いという点でバルプロ酸(VPA)が注目されました。しかし、バルプロ酸に関しては、用量が一定量以下なら他の抗てんかん薬の催奇形性と大きく変わるところはないというデータもあり、実際にVPAを服用しながらの妊娠・出産は珍しいものではありませんでした(また、それで大きな問題を感じることもありませんでした)

しかし2013年、Meadorらが発表した論文 ( Meador KJ Lancet Neurol.2013;12:244-52)は、この状況について別の視点からの注意を促し、世界のてんかんを診療する医師に大きなインパクトを与えました。対象は数十例と多くはありませんが、一定量(1000㎎)以上VPAを服用している妊婦さんから出生したお子さんは、他の抗てんかん薬を服用している妊婦さんから生まれたお子さんに比べ、6歳時の知能指数(IQ)が有意に低いというものでした。このことはそれ以前からなんとなく疑われてはいましたが、はっきりとデータとして発表したのはこの論文が初めてといってよいと思います。

数字にするとたとえばカルバマゼピンを服用していた妊婦さんのお子さんのIQの平均は106であったのに対し、VPAを服用していた妊婦さんのお子さんのIQは98でした。この関係はVPAの用量が多いと強くみられ、用量が1000㎎以下では他の抗てんかん薬との有意な差は認められませんでした。

どの薬剤を服用している群でも、平均のIQそのものは異常値ではありませんし、解釈には慎重さを要しますが、この論文により、VPAの用量が多いことは、催奇形性の面だけではなく、児の認知機能にも良くない影響がありうるということは示されたといって良いでしょう。そして、これまでよりもさらにVPAを服用しながらの妊娠に対してのハードルが上がったとも言えます。

これらの報告を受け、FDA(アメリカ食品医薬品局)のVPAに関する勧告も、年を追うごとに変化していきました。

200912
VPAにより二分脊椎その他大奇形のリスクが上昇することを患者に説明するべきである。

20116
VPAにより児の認知機能が低下するリスクがあることを、患者に説明するべきである。

20135
(VPAにより児の認知機能低下のリスクがあるので)てんかんまたは双極性障害の妊婦には他の治療薬で十分な症状コントロールができなかった場合や、忍容性がない場合にのみ、VPAを処方すべきである。

もちろん、VPAは特発性全般てんかんの第一選択薬として効果の面では確固たる地位があり、妊娠中の発作(特にけいれん発作)は妊娠経過にそれ自身が良い影響を与えないことも考えると、(FDAの勧告のとおり)どうしてもVPAを服用しながら妊娠せざるを得ない場合はやはりあります。いくらレベチラセタムやラモトリギンがあったとしても、それでは発作がコントロールできない場合はやはりあるのです。

そうした方に対しては、用量を適切なレベルに減らし、葉酸の投与を行えば(上記のMeadorの論文でも、葉酸の服用は児の認知機能を高める可能性が示唆されています)通常の妊娠・出産ができると説明しています。

次回は(これもやはり残念ながらVPAに関連するのですが)、もう一歩踏み込んだ最近の注目すべき問題点についてご説明したいと思います。

2016年8月5日金曜日

医療総合サイトQlifeで「てんかんabc」が取り上げられています

暑い日が続きます。大阪も連日の猛暑で、毎日患者さんとの会話の第一声は「暑いですね~」です。

先日ご紹介したてんかんについて学ぶことができる情報サイト「てんかんabc」が、医療情報の総合サイトQlifeで取り上げられています。少しでも多くの方のお役に立てばと思います。

https://www.qlife.jp/square/healthcare/story58172.html

2016年7月21日木曜日

「高齢者てんかん」の講演をして思うこと

さる7月16日、大阪てんかん診療ネットワーク研究会で「高齢者てんかん」についてのお話をさせていただきました。


以前にもこのブログでご紹介したことがありますが、高齢者のてんかんは近年認知症との鑑別など、さまざまな点で注目されています。


現在日本では人口の4人に1人が65歳以上のいわゆる高齢者になります。2035年にはこれが3人に1人になることが予想されています。人口は減少が始まっており、就業者人口に占める高齢者の割合もどんどん高まると考えられます。年金支給開始年齢が現行よりさらに先送りされる可能性も示唆されており、高齢になった方が働く必要性もより高まっています。


一方、高齢になってからはじめててんかんを発病する方がとても多いことは以前にご紹介したとおりです。発症率からみると、70歳を過ぎると発症率は小児期よりも高くなります。よくてんかんは人口の1%ぐらいの有病率があると言われていますが、高齢者に限って言えば、この割合はさらに高くなります。この患者さんたちを適切に診断・治療し、通常の社会生活が送れるようにすることは、上記の高齢化がすすむ社会の中では、より重要になっていくと考えられます。


高齢者のてんかんでよく言われるのは、「診断も治療も難しい」ということです。これはある面では正しく、ある面では間違っています。


まず診断が難しいのは事実だと思います。高齢者発症のてんかんは発作の頻度が少ない事が多く、またけいれんなどの目立つ症状が少なく、少しボーっとするとか、様子がおかしいというぐらいにしか見えない症状が多い事が知られています。そのため容易に見逃されますし、よく言われることですが、認知症と間違って診断されたりします。また高齢者のてんかんは長時間発作が続きやすいという特徴もあり、これがさらに診断を難しくします。少しボーっとしたり上手くしゃべれないといったエピソードが長時間にわたって消長を繰り返しながら続いたりするので、あまり「発作」的な印象を持たれにくくなります。ですので、昔からこのような症状が頻繁にあるにもかかわらず、てんかんの診断がついたのはけいれんが起こってから、というのはよくある状況です。


一方、治療については、高齢発症のてんかんはとても治療がよく効く事が知られています。一般的な抗てんかん薬の用量の数分の一、といった量でも発作がぴたっと止まってしまいます。これは小児や通常の成人のてんかんとは全く違います。いわゆる難治てんかんは脳出血や脳挫傷の後遺症であるとかいう場合を除けばほとんどおられません。この点だけみれば、高齢者のてんかん治療は困難ではありません。


ふつうはてんかんの治療というとお薬を十分に使って発作を起こらないようにすることが重要ですが、高齢者に限って言えば、より少ない薬で発作を抑えることが可能です。これは副作用の点からとても重要でして、高齢者は眠気やふらつきなどの抗てんかん薬の副作用がとても出やすいです。その点からも少量で発作が抑えられる薬を探すことが大切になります。あまりこの点が意識されずに、通常のてんかん治療のように抗てんかん薬が処方され、ふらふらになってしまった、というお話はよく聞きます。テグレトールなら100mgとか、50mgを寝る前に1回とかでも止まる人もいるので、決して通常の開始用量で治療しないようにしたほうがいいですね。


高齢の方は服用している薬剤が多いとか、腎機能や肝機能が低下している事が多いので治療が難しい、といったこともよく言われますが、抗てんかん薬の選択や、ごく少量から治療するという基本さえ外さなければ、難治てんかんで治療に難渋するケースなどに比べれば、困難を感じる事はむしろ少ないですね。


つまり、治療にたどり着くことさえできればなんとかなることが多いので、あとは診断です。少し様子がおかしいな・・・というぐらいのことがとても大事です。高齢発症のてんかんはよくあるものですから、おかしいなと思ったらお近くの神経内科の先生などに相談してみましょう。

2016年7月15日金曜日

夏季休診のお知らせ

小出内科神経科は8月10日(水)~8月15日(月)、夏季休診とさせていただきます。また副院長、小出泰道医師の外来は7月26日(火)~7月30日(土)は休診となります(院長外来は通常通りです)ご相談や急ぎの書類のご依頼等ありましたら、早めにご連絡ください。

2016年7月4日月曜日

てんかん情報サイト「てんかんabc」が公開されました!

皆さんは自分のてんかんについて、どこから情報を入手していますか?

インターネットの検索サイトで「てんかん」を入力すれば、そこにはびっくりするほどの情報が存在します。しかしその中身が自分にとって常に関係があるものとは限りませんので、色々と調べてはみたが自分が知りたいことは分からなかった、ということもあります。

またその情報が正しいかどうかは、情報が載っているサイトの信頼性も重要です。インターネット上の情報には玉石が混交しており、その中から正しい情報を集めるにはそれなりのリテラシーが要求されます。

実際に現場で患者さんからお話をおうかがいしていますと、ネットから得た不正確な情報に踊らされていたり、また本来は自分の病状とはあまり関係のない情報を不適切に取り入れていたりすることは珍しくありません。その結果、なかなか正しい治療に結びつかないこともあります。

このような状況があることを知り、患者さんが求める情報にできるだけたどり着けるようなてんかん情報サイトを作りたい!というUCB社の担当者さんの熱意からできたのが「てんかんabc」です。2016年7月4日本日から一般公開されました。小出も監修者として参加させていただきました。

このサイトの特徴は、患者さんあるいは家族の方、年齢や性別、といった閲覧している方の状況に合わせた情報を提供しているところです。また、コンテンツを閲覧した後で理解が正しくなされているかどうかをチェックするためのクイズがあります。このクイズにチャレンジするだけで、これまでてんかんについて学んだことがない方にはかなりの情報が得られるでしょう。

また担当者さんの願いである「患者さんと担当の先生がてんかんについてもっとコミュニケーションが取れるようになってほしい」という点については、患者さんが次回の受診時に担当の先生に質問や相談をするためのカードなども用意されています。

「てんかんabc」はこうした関係者の熱意が込められた情報サイトです。ぜひご覧ください。

てんかんabc
https://www.tenkan-abc.jp/

2016年6月27日月曜日

NHK ハートネットTVでてんかんが取り上げられます。

2016年7月7日(木) 夜8時から放送予定のNHKハートネットTVでは、「てんかんと向き合う」というテーマで、当事者の様々な体験や悩みなどが取り上げられる予定です。当事者や家族の方からのご意見や体験談を掲示板への書き込みやメールなどで募集しておられます。興味がおありの方は以下のリンクをご覧になり、ぜひご投稿ください。

http://www2.nhk.or.jp/heart-net/voice/bbs/messagelist.html?topic=3920

2016年6月13日月曜日

クチナシとアジサイ

すっきりしない空模様ですが、当院の駐車場の庭ではクチナシとアジサイの花が見ごろを迎えています。クチナシの花は香りもいいですね。梅雨の楽しみの一つです。


2016年5月31日火曜日

てんかんを公表している著名人⑬ Chanda Gunn (icehockey player 1980~)

最近てんかんを発症された高校生の患者さんで、それまで普通に参加していたクラブ活動に、てんかんを発症した後、顧問の先生から「安全のために参加しないでほしい」と言われた、というお話をうかがいました。ご本人はとてもショックだったようです。病状的にはクラブ活動には大きな問題はない、と顧問の先生に手紙を書くことにしました。

このように、てんかんにはまだまだ社会的なstigmaが根強く存在していることを感じさせるエピソードでした。

本来はてんかんがある、ということが問題なのではなく、病状が問題なのです。さすがに毎日全身けいれん発作を起こしている(そんな人はほとんどいませんが)となると、確かに様々な社会活動に制限が生じうると思います。一方で、何年も発作がない、といった場合には、たとえば2年の無発作期間があれば運転免許の取得も道路交通法で保障されているわけです。これには2年も発作がない方が事故を起こす確率は、一般のドライバーと極端に違わない、という科学的な根拠があります。このように、発作がない、あるいは非常に少ない方の社会生活に過度の制限をかけるのは公平性の面からあきらかに不適切です。

今回ご紹介するのは、アイスホッケーアメリカ代表として活躍したChanda Gunnです。彼女は9歳の時に若年欠神てんかんといわれるタイプのてんかんを発病し、治療を行っています。幼少期にアイスホッケーの才能を開花させた彼女は推薦を受け大学に進学します。しかし残念ながらそこで全身けいれん(強直間代発作)が何度も起きてしまい、治療のため大学生活を一時中断せざるを得ませんでした。しかし発作がコントロールされたのち、彼女は他の大学に転入し、そこでアイスホッケーに打ち込んだのです。

彼女は懸命に練習し、てんかんがなんら自分のプレーに影響がないことをコーチに証明してみせました。そしてアメリカ代表に選出され、2004年の世界選手権での金メダル、2006年の冬季オリンピックでの銅メダルに貢献しています。

現在彼女はてんかんについて、特にアスリートとしててんかんと闘う人として「てんかんが理由で夢をあきらめないでほしい」というメッセージを伝え続けています。

参考:

Chanda Gunn

AvE Ambassador

http://athletesvsepilepsy.com/team/chanda-gunn

2016年5月30日月曜日

和歌山県医師会精神科部会での講演&抗てんかん薬の精神面への影響

5月28日 和歌山ビッグ愛にて「症例から診るてんかん」という演題で講演をさせていただきました。

私が経験した、精神科で出会う可能性があるてんかんの症例を3例ほど提示しながら、色々と注意すべき点についてお話しました。特に抗てんかん薬で精神症状が悪化したり、易刺激的になったりした例は興味をお持ちいただけたように思います。

昔は「てんかん性性格変化」といったことがまるで歴然とあるかのように語られていたこともありました。しかし最近では多くの場合は、一部の、ある種のてんかんの患者さんでは認知機能の問題から理解が上手くできないことが「迂遠」な印象を持たれたり、ある種の抗てんかん薬の影響から「易刺激的で爆発的」だったりしたのではないかと考えられるようになっています。

現に抗てんかん薬を整理すると、「穏やかになった」「前ほどイライラしていない」といった感想が周囲の方から聞かれることは珍しくありません。自分の患者さんが治療を開始した後に、精神的な変化をきたした場合、まずは抗てんかん薬の影響について考えてみる、という必要性はご理解頂けたのではないかと思います。

2016年5月23日月曜日

第57回日本神経学会学術大会

5月18日から21日、神戸国際会議場で行われた日本神経学会学術大会に参加させていただきました。

自分の役割としては「てんかんの社会的啓発を目指して」というセッションで、当院の取組等をご紹介させていただきましたが、朝一番、8時からのセッションだったにもかかわらず、立ち見も出るなど、他の会場に比べても盛況のようでした。

神経学会では最近になりてんかん診療への注目、熱意が高まりつつあるのを感じます。患者さんをたくさん診たり、系統立てて、てんかんの勉強をするのはなかなか一般の病院では難しいのですが、てんかんが好きな神経内科医が増えてくれるのは嬉しいですね。

今回はポスター発表もさせていただきましたが、そちらはあまり神経内科医になじみのない疾患の経験をご紹介しました。私が発表したGlut-1欠損症症候群は小児神経科の先生方にはよく知られていますが、成人を担当する神経内科医にはほとんど知られていません(神経内科からの発表は私が日本では最初のようです)。しかし、成人になり症状がはっきりしてくる方もおられ、おそらく見逃されている方もたくさんいるのではないかと考えています。この疾患の診断がきわめて重要なのは、薬物療法などがあまり効果がない一方、ケトン食などの食事療法が著効し、神経予後を改善しうるためです。一定の労作で悪化しする神経症状をみたら、一度は髄液/血糖比をみておくべきだと思っています。

会場で拙著「てんかんが苦手な医師のための問診・治療ガイドブック」も見つけました。まだ平積みで販売していただけていました。



2016年5月10日火曜日

第57回日本神経学会発表による副院長休診のお知らせ

5月18日(水)から5月21日(土)、神戸コンベンションセンター・神戸ポートピアホテルにて、第57回日本神経学会学術大会が行われます。当院からも19日は教育コース「てんかんの社会的啓発をめざして」での教育講演を行います。また20日はポスターセッションにて「Ketogenic Dietが有効な不随意運動:GLUT-1欠損症症候群によるジスキネジア」を発表させていただきます。

これに伴い、小出泰道副院長の外来は5月20日~21日まで休診となります。初診をご希望の方や、通院中の患者さんで相談等おありの方はご留意くださいますようよろしくお願いします。なお小出秀達院長の外来は通常通り診療を行っております。

2016年4月26日火曜日

第3回OCU(Osaka City University)てんかん治療講演会

先日4月21日、大阪市立大学にて講演会があり、「てんかんと法・社会制度」という内容で講演を行いました。

患者さんに対して医師や患者さんを支える立場の医療職が知っておくべき法律や制度について、大阪の実情(どの施設がどこにあるのか等)に合わせたお話にしましたが、数多くのご質問をいただきました。

特別講演は静岡てんかん・神経医療センターの池田仁先生が、てんかんの中でも非常によくあるタイプの「若年ミオクロニーてんかん」(JME)について話されました。

JMEの方はときに「行為誘発」という非常に興味深い特徴を持っていることがあります。当院でもJMEをお持ちで「あるカードゲームをすると発作が起こりやすい、おこりそうな感じがする」という方がおられます。空間的な思考を伴う行為で特に誘発されやすいといったことが言われ、人によってはそれが将棋だったり、チェスだったり、計算だったりします。なぜこうした行為が特定のJMEの方の発作につながりやすいのか、それはまだ詳しくは分かっていません。こうした行為が脳の一部分を刺激し、それがトリガーとなって発作を起こすのだろうとは想像できます。ただそのネットワークのあり方がまだはっきりしていない、ということになります。池田先生はそのあたりを非常に分かりやすくお話しくださっており、興味深く拝聴しました。

2016年4月22日金曜日

Princeの訃報

Princeが亡くなりました。57歳とまだ若く、これからも我々に新しい音楽を届けてくれると思っていたので、とても驚きました。個人的にもアルバム”Purple Rain"は何度聴いたかわからないぐらい聴いた思い入れのあるアーティスト”殿下”でした。

以前にブログでご紹介したように、彼は幼少期にてんかんがあり、当時はいじめに遭うなど様々な苦難を経験したと告白しています。以下の”Sacrifice of Victor"はそんな自分のことを歌った曲だそうです。R.I.P

”I was born on a blood stained table
Cord wrapped around my neck
Epilectic 'til the age of 7
I was sure heaven marked the deck”

http://videos.sapo.pt/SnzDIagayhv4TmjrpHJH

2016年4月19日火曜日

熊本地震:てんかんホットライン チラシの広報にご協力を!

てんかん学会やてんかん協会の声明を受け、その中に紹介されているてんかんホットラインもマスコミの皆さんにご紹介いただけております。ただ、東日本大震災の際の経験でいえば、発作のある方は普段それを人に言わずに生活しておられる方も多いため、人に知られることをおそれ、避難所等に顔を出さないまま過酷な環境のなかに身を置き続けている方もいました。今回もそうした方がいなければいいが・・・と危惧しております。

またそれとは別に、SNS等が発達した今日でも、情報を紙の掲示物や行政無線の広報などからしか受けられない、受けるすべがない方もたくさんおられます。てんかんホットラインの情報は幸い被災地のTVのテロップなどでも流されているようですが、たまたま見ていた方にしか伝わらないかもしれません。

こうした状況を踏まえて井上院長にお願いしたところ、てんかんホットラインのチラシを作っていただけました。被災地に実際におられる方、情報をうけることができる方は、ぜひこのチラシをご利用いただき、避難所や行政機関、医療情報の掲示板などに(無理のない範囲で)掲示していただければと思います。

まだまだ強い余震が続いており、被災者の皆さんのご苦労はいかばかりかと思います。遠くからですが、自分にできることを考え続けたいと思います。

今回の避難者は約10万人とも言われています。てんかん患者さんが人口の1%程度いると考えられていることから想像しても、数百~1000人ほどの患者さんが被災されていることになります。難しい立場に置かれがちで、かつ災害医療の援助対象としても見過ごされがちなてんかん患者さんのために、ぜひチラシの広報にご協力ください!

てんかんホットライン 広報掲示物(PDFファイル ご自由にダウンロードしてください)
http://www.shizuokamind.org/topics/20160416/4479/

2016年4月15日金曜日

熊本県の大地震を受けて:てんかんホットライン

昨夜熊本県で大きな地震がありました。被災された方にはお見舞いを申し上げます。できるだけ被害が大きくならずに済むことを願っています。

このブログでこれまでも繰り返しお願いしてきましたが、てんかんをお持ちの方はお薬に余裕を持ち、災害時の連絡先や対応について日ごろから担当の先生とよく相談しておきましょう。

被災された方の中に、てんかんをお持ちでお困りの方がいらっしゃいましたら、「てんかんホットライン」をどうぞご利用ください。東日本大震災の時に相談電話を受けるためにできたものですが、現在はてんかんをお持ちの方の一般的な相談や疑問にお答えしています。通院していない方でも相談に乗ってもらえますので、どうぞご利用ください。

てんかんホットライン(静岡てんかん・神経医療センター)
http://www.shizuokamind.org/contact-address/#c3

2016年4月6日水曜日

てんかんを取り上げた映画「First Do No Harm」

先日、今年の第50回日本てんかん学会学術集会(総会)が静岡てんかん・神経医療センターの主催で静岡市グランシップにて行われることは告知させて頂きました。

今回の学会のユニークな企画の中に、てんかんにかかわる映画マラソンがあります。これはてんかんについて、あるいはてんかんにかかわる映画を上映し続けるという企画だそうです。これはおそらく本邦はじめての企画だろうと思います。

てんかんを扱った映画で有名なものに、メリル・ストリープが主演した”First Do No Harm”があります。邦題は何と「誤診」です。おそらく日本の配給元が考えたタイトルなのでしょうが・・・・。

映画の内容は難治てんかんを持っていた息子のために、ケトン食に取り組む母をメリルが演じています。医療者のケトン食に対する無理解、といった内容も含まれているので、上記のような邦題になったのでしょうね。

映画そのものはTSUTAYA等でも借りられたと思いますので、興味がある方は一度ご覧ください。
 

 

2016年4月4日月曜日

春の雨

昨日SNSでは花見の記事をUpする人が目立ちました。どこも満開ですね。

本日の雨で、当院の桜はすでに散り始めています。花弁が駐車場の車にたくさん舞い落ちていました。

2016年3月28日月曜日

南大阪Transitional case Meeting in epilepsy

寒暖の差が激しい日が続きますね。ただ大相撲春場所が終わり、プロ野球が開幕。いよいよ春が来たという感じがします。

3月26日(土)大阪府立急性期医療センター、大阪府立母子保健総合医療センターの先生方と、「南大阪Transitional case Meeting in epilepsy」というタイトルの会合をもつ機会がありました。私は「てんかんをつうじて:小児神経科と神経内科をつなぐもの」という講演をさせていただきました。

この会合の目的は、小児期からずっとてんかんの治療を受けてきている患者さんが成人期に達した時、どのような問題が生じ、成人を診る科の医師がどう関わるべきなのか、という問題について話し合うことでした。実際に全国各地でこの問題はクローズアップされており、この会合は先進的な取り組みではないかと思います。

小児神経科の先生からは、たとえば小児期から診ているてんかんを持つ重度脳性麻痺の患者さんが、成人期になって成人の問題、たとえばがんを発病する、といった場合に受け入れを断られてしまうケースがある、というお話がありました。

静岡のてんかんセンターに在籍しているとき、重症心身障害の方の病棟も担当しておりましたので、私には小児神経科の先生のおっしゃっていることが非常によくわかりました。重症心身障碍者の患者さんの治療を一手に引き受けているのは現状では年齢にかかわらず小児科の先生です。重症心身障碍者施設などでは、ほとんどが成人期に達した患者さん、という場合も少なくはなく、私も自分の患者さんが腸閉塞になったりした際、近隣の病院で入院をお願いするようなケースが何度かありました。さいわいほとんどの紹介先の先生はこころよく診療を引き受けてくださいましたが、てんかんを持っている人は、とか、重症心身障碍者の患者さんはちょっと・・・という対応をされるケースもありました。

これは成人科の先生にとって、重症心身障碍者の方はほぼ未知の領域であり、経験したことがないものへのおそれもあったのだろうと今は思います(当時はがっかりしましたけれど)私の講演はそのあたりも踏まえて、小児神経科や神経内科、脳神経外科、精神科など、てんかんにかかわる全ての診療科の医師が、お互いの領域について少しだけ知識を持っているだけで、てんかんの診療が少し豊かで楽しいものになるかもしれない、というお話をさせていただきました。

てんかんセンターにいますと、小児のてんかん患者さんも成人のてんかん患者さんもあまり分け隔てなく診療する機会があります。乳幼児はご専門の小児神経科の先生が診療されるべきと考えますが、学童期以降のてんかん患者さんを数多く診療することができたことは、今の自分の大きな糧となっています。小児神経科の先生と親しくお話する機会があったことも、てんかんについて幅広い視点から考えるためにとてもよかったと感じます。

幸いこの会はとても参加者にとって好評であったようで、今後も継続される予定とお伺いしました。行き場のない患者さんと、その患者さんを担当して苦慮する小児科の先生の助けに少しでもなれればと思います。

ちなみにこの日は先日から何度かご紹介しているPurple Dayでしたので、スライドの一枚目にそのご紹介を入れさせていただきました。


2016年3月23日水曜日

てんかん協会講演と個別相談会終わりました

3月20日春分の日、エル・おおさかにて講演と個別相談会にお招きいただきお話をさせていただきました。

「てんかんとこころ」と題した講演は、てんかんをもつ患者さんを取り巻く様々な問題が、生活にどのように影響を与え、患者さんの「こころ」にどう影響するのか、というお話をさせていただきました。

個別相談会では、患者さんやご家族から、現在お困りの問題についてのお話があり、可能な範囲でのアドバイスをさせていただきました。

「発作が止まらない」

「精神的に不安定で(家族として)どう扱っていいかわからない」

「(思春期の患者さんに)どういう話をしたらいいのか・・・」

皆さんそれぞれにお持ちのてんかんや合併症も違えば、家庭環境も異なる中で、個別の対応が求められるケースばかりでした。私も一度に物事を解決できる魔法は
持ち合わせていないのですが、少しでも相談してよかったと思っていただけたらな、と思いながらお話をさせていただいていました。

2016年3月11日金曜日

大震災とてんかん 被災地での活動記録

今日で東日本大震災から5年が経過しました。毎年この時を、皆さんが来るべき災害への備えに思いをいたす日にしていただきたいと心から思っています。

リンクは被災地で活動した際の、医療関係者向けのレポートです。ご自身の災害への備えの参考にしていただければと思います。

https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/134262/

(発災6日目の岩手県大槌町)

2016年3月8日火曜日

Purple Dayが近づいてきました

昨日、製薬会社さんからこのようなステッカーと、てんかん患者さんが作った紫芋で作られたクッキーをいただきました。疾患啓発活動を応援してくれる企業の存在は心強いです。


2016年2月27日土曜日

講演会と医療相談会のお知らせ

2016年3月20日(日)に、エル・おおさか(大阪市中央区北浜東3-14)におきまして、「てんかんとこころ」という患者さんやご家族向けの講演と、てんかんに関する医療相談会をさせていただくことになりました。てんかん以外にもぶどう膜炎、重症筋無力症、炎症性腸疾患などについて、ご専門の先生の講演会が予定されています。入場無料ですが事前の参加申し込みが必要となりますので、興味がおありの方は、以下のパンフレットにあります連絡先に、メールか郵便にてお問い合わせください。

大阪難病連
郵便番号540-0008
大阪市中央区大手前2-1-7 
大阪赤十字会館8階
電話:06-6926-4553
メール:nanren@vesta.ocn.ne.jp

2016年2月26日金曜日

てんかんをめぐるアート展

今年の第50回日本てんかん学会学術集会(総会)は10月7日(金)~9日(日)、グランシップ静岡において、静岡てんかん・神経医療センターの井上有史先生を大会長に開催されます。第50回という節目の大会は日本で最初の、そして最大のてんかんセンターである静岡てんかんセンターらしく、てんかん学の歴史を振り返る展示、てんかんにかかわる映画のマラソン上映会など、てんかんに関する様々な側面にスポットを当てたユニークな会になるようです。「てんかんのサイエンスとアート」というテーマもいいですね。

今回のユニークな企画の一つに、「てんかんをめぐるアート展」があります。患者さんやご家族、その他てんかんにかかわる方ならだれでも、様々な形での応募が可能で、現在作品を募集中です。当院の外来にもパンフレットを置いておりますので、ご興味のある方はぜひぜひご応募ください!
http://www.shizuokamind.org/art2016/art.html




2016年2月20日土曜日

第1回神戸てんかんカンファレンスで講演させていただきました。

昨日2月19日、「第1回神戸てんかんカンファレンス」がホテルクラウンパレス神戸にて行われ、脳波についての講演「脳波を判読するために~脳波をみる前に絶対にすべきこと~」をさせていただきました。

私のメッセージとしては、脳波をみる前に詳しく患者さんから話を聞いて、てんかんなのか、それらしくないのか、てんかんであればどういうタイプなのか、ということをきちんと考えてから脳波をみる、ということを強調させていただきました。

「倒れた、意識がなくなった、けいれんしていた」
⇒「てんかんかもしれない」
⇒「脳波をとろう」
⇒「怪しいところがある。てんかんが否定できないから治療しよう」

という流れの中で、そもそもてんかんでもなんでもない方が治療されてしまっている、ということがある、というのはこれまでもブログの中でご紹介しているとおりです。その原因の多くは、問診を十分に行っていないことに由来しています。

問診を十分に行い、そこでてんかんであることやその詳しいタイプを判断できるようになれば、脳波をきちんと参考にすることができます。てんかんでない病状をてんかんと診断してしまう誤りを避けるためには、脳波をとる前の絶対すべきこと=詳細な問診が重要だということですね。

講演後にはたくさんの先生から個別にご質問をいただきました。また帰りに座長の先生から「第2回もぜひ!」とお声掛けいただきました。ありがたいです。この分野の知識を深めたい!という先生がたの熱意を感じました。


2016年2月15日月曜日

てんかんと妊娠④-A 「てんかんの薬を飲んでいても大丈夫?」

このシリーズも4回目となりました。今回からは抗てんかん薬と妊娠・出産の関係を取り上げてみたいと思います。このトピックはとても話の内容が多くなりますので、3回ぐらいに分けてお話したいと思います。また、この分野は様々な大規模研究が現在進行形で行われており、その時点での情報をアップデートしていく必要があることも知っておいてください。

まずこれまでの繰り返しになりますが、多くのてんかんをお持ちの女性が抗てんかん薬を服用しながら、何ら問題なく出産していることを知っておいてください。そこを出発点に、どうすればさまざまなリスクを軽減することができるのか、これをてんかんの薬についても考える、ということになります。

現時点では、安全に妊娠・出産を行うための、抗てんかん薬についての基本的原則は「できるだけ発作を抑えるのに十分、かつ少ない種類、少ない量の薬を使用すること。葉酸サプリメントを併用すること」と言っていいと思います。

抗てんかん薬はお母さんが服用することにより、胎盤をつうじておなかの赤ちゃんにもお薬が移行します。これが体内での赤ちゃんの成長に影響をあたえることがあります。この影響は一般的には用量が多くなるほど、種類が多くなればなるほどみられやすいと考えられています。できれば少量の、一種類のお薬で治療ができればベストです。

どのぐらいの量にしたほうがいいか、というのは諸説ありますが、一応データから目安は示されており、たとえばカルバマゼピン(テグレトール)であれば400㎎以下を目指すべきだとされています。以下のてんかん学会の「てんかんを持つ妊娠可能年齢の女性に対する治療ガイドライン」は2007年に出たもので、内容は現在では見直しが必要な部分も多々ありますが、カルバマゼピンなら400㎎以下、という目標は現在でも悪くないと思います。また、薬の種類が増えるほど良くない、というのも現在でもまず正しいと考えてよいでしょう。特にバルプロ酸(デパケン、セレニカ等)とカルバマゼピンの組み合わせは避けるべきだとされています。
http://square.umin.ac.jp/jes/pdf/pregnancyGL.pdf

では、具体的に抗てんかん薬が赤ちゃんにどのような影響をあたえうるのか、現在まだあくまでも可能性の段階にあるものも含めて考えてみたいと思います。ここからはお薬の種類も関係してきます。

A.胎児奇形の発生
まず現在では使われることがほぼない、トリメタジオン(ミノアレビアチン)などをのぞけば、抗てんかん薬を使っていても胎児奇形が極端に増えることはありません。以下にデータをお示しします。

日本における全国調査の結果をみますと、胎児奇形というのは二分脊椎のような大きなものから、小さなものも含め、全妊娠の2-3%程度に発生することがわかります(参考:横浜市立大学先天異常モニタリングセンターhttp://www.icbdsrj.jp/2010data.html)

ここには妊婦さんの年齢など様々な因子が複雑に関連しています。抗てんかん薬はその因子の一つ、ということになります。

ではもともと2-3%は存在する胎児奇形のリスクを、抗てんかん薬がどの程度上げるのか?というのが問題になります。ここに薬の用量や種類が関係してきます。

上記したようにカルバマゼピンなら400㎎以下、というのは400㎎以下ならこの2-3%のリスクを実質的に上げることはない、という意味になります。リスクは上にも書きましたように様々な因子が関連しますので、絶対にゼロにはなりませんが、少なくとも400㎎以下なら2-3%という、抗てんかん薬を服用していない妊婦さんのリスクと大きく変わるところはない、ということですね。

では大奇形の発生率が他の抗てんかん薬に比べて高いといわれるバルプロ酸はどうでしょうか?

上に挙げたガイドラインでは1000㎎以下、という量が目安とされていますが、これは現在では多いと考えられており、できれば600㎎以下を目指すほうが、よりリスクを下げることができると考えられます。報告上も1000㎎以上>600㎎-1000㎎>600㎎以下でリスクが下がっていった、とされています(Samren 1999, Morrow 2006)600㎎以下での奇形発生リスクは他の抗てんかん薬と大きく変わらないので、バルプロ酸は胎児奇形の予防に関しては600㎎以下を目指すようにしています。

たまに「デパケンを飲んで妊娠なんてムリ」とか、簡潔にして残酷な説明を聞いていた患者さんもいますが、次回以降お話する発達への影響などのデータを考慮しても、「ムリ」はそれこそ無理な説明ではないかと思います。

たとえ妊娠に向けて抗てんかん薬を十分に減らすことができず、様々なリスクがあったとしても、説明を聞いたうえでそれをどう考え、許容するか否か。それは最終的には患者さんご自身の判断にゆだねられるべきものです。

われわれ医師は、現時点で分かっているデータについてお話しながら、よほど医学的にリスクの高い選択でない限り、患者さんの選択を尊重し、支持するというのが妊娠・出産に関して必要だと思います。

2016年2月1日月曜日

当院かいわい:久成寺

当院の近辺のお寺に技芸に関係する方々の墓所が多いことは、先日からご紹介しているとおりです。今回は近松門左衛門作の人形浄瑠璃の中でも、最も有名な「曽根崎心中」のヒロインである、お初の墓所がある久成寺(くじょうじ)です。

現在の墓碑はお初の300回忌にあたる2002年に新しく建立されたものだそうです。ちなみにこちらは長年にわたって大相撲の高砂部屋の大阪場所での宿舎にもなっており、お寺の境内に腰掛けるお相撲さんは春の大阪の風物詩ともいえます。

参考:久成寺

2016年1月25日月曜日

世界てんかんの日

今日は当院のメダカの水槽に厚い氷が張っています。寒い・・・。

2月の第2月曜日は国際てんかん協会と国際抗てんかん連盟の定める「国際てんかんの日」です。これは2月14日の聖バレンタイン(てんかんの守護聖人)の日の1週間前ということで決まった日だそうです。前日の2月7日に東京で以下のようなイベントが予定されていますので、興味がある方は足を運んでみてはいかがでしょうか?

2016年1月22日金曜日

てんかんを公表している著名人⑫ Matt Davidson Rider Crooks (Football player, 1994~)

2016年1月中旬、大阪は寒いです・・・。雪国の方には「何言ってるんだ」と言われるかもしれませんが。

てんかんをお持ちの患者さんによくある悩みとして「周囲の人が理解してくれない」「誰も分かってくれない」というのがあります。

発作がなければ「なんだ全然元気じゃないか」と言われ、

発作があれば「もう何もしなくていいからそこに座っていなさい」と言われる。

発作がなくても悩みを抱える患者さんには前者の扱いはつらいですし、発作があってもその時以外は普通に過ごせる患者さんには後者の扱いは大きなストレスです。
ただほとんどの場合、相手の方に悪意は全くありません。単にその方のてんかん、という病気にさまざまな病状があり、抱えている問題もさまざまである、ということが理解されていないだけなのだと思います。これからも頑張って啓蒙活動を続けなくては・・・と思うゆえんです。

今日ご紹介するのは守備的ミッドフィルダーとして将来を嘱望され、2016-2017年シーズンをScottish Premier League のGlasgow Rangers(元日本代表の中村俊輔選手が所属していたCelticとは長年のライバルです)でプレーすることが公表されているMatt Crooksです。彼は21歳で意識を失うタイプのてんかん発作を発症しました。すでにプロサッカー選手としてのキャリアをスタートさせていた彼にとって、てんかんの発症はとてもショックな出来事であったことは想像に難くありません。

そんな中、チームメイトだったある選手が彼のよき理解者となりました。彼は将来を約束した女性をてんかん発作のために失うという悲劇的な経験をし、てんかんについてさまざまなことを知っていました。彼と話す中で、Crooksはてんかんを理解し、てんかんを受け入れることができたといいます。

“I didn’t know anything about epilepsy until I came here and ended up living with Kal. We became good friends and had chats about it. He made 
me understand it more because of 
his situation.「僕はてんかんについて何も知らなかった。Kal(チームメートの名前 Kal Naismithのこと)と一緒に暮らすようになるまでは。僕たちはいい友達になり、てんかんについて話すようになった。彼の経験から僕はてんかんについてより多くのことを学んだ」
 
私の患者さんにもサッカー少年は何人もいます。彼らのためにも、今後のMattの活躍に期待しています。
 
Matt Crooks: Rangers old boy Kal Naismith helped me overcome epilepsy shock
Read more at http://www.dailyrecord.co.uk/sport/football/football-news/matt-crooks-rangers-old-boy-7131700#CVjgZJ3XDH0YIsiC.99
 
 

2016年1月8日金曜日

てんかんと妊娠③ 「妊娠中に発作があったらどうなるの?」

シリーズ第3回は、妊娠中のてんかん発作についてです。

まず基本的なこととして、妊娠前に発作ができるだけ起こらないように(かつ胎児への影響が最低限になるように)薬剤を調整しておくことが重要です。

では発作がどうなれば妊娠に適切かというと、はっきりした決まりはありませんが、全身けいれん(強直間代発作)は少なければ少ないほどいいことは間違いないと思います。

全身けいれんが起こりますと、どうしてもおなかに力が入りますので、早産や流産のリスクがまず高くなってしまいます。全身けいれんがあることが胎児にどのような影響があるかはまださまざまな議論がありますが、全身けいれんの回数が多い(文献によっては妊娠中に5回以上)場合、生まれる赤ちゃんの知能に影響する可能性があるとも言われています。

逆に言えば1-2回あったぐらいでは、流産や早産にかかわりさえしなければ大きな影響はないとも言えます。実際に当院に通院されている方でも、妊娠中に全身けいれんがあった方はいますが、特に問題なく出産され、お子さんも問題を認めていません。

ただ繰り返しになりますが、全身けいれんはないほうがいいことは間違いないので、できるだけ少なくなるように治療を行ってから妊娠に臨むほうがいいでしょう。妊娠中に上記したような回数で、頻繁にけいれん発作が起こることが予想されるような状況では、まだ妊娠に臨むのは難しいということになりますね。

「今はいいよ、でも、妊娠しちゃったら発作が増えたりしないかな・・・」とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんね。しかし妊娠前にてんかん発作のコントロールが良い方は、妊娠中も良いことが知られています。つまり妊娠をするだけでは発作が増えることは(絶対ではありませんが)あまりないということですね。ただ、例外もあります。

たとえば妊娠中に血液中の薬物濃度が低下するような薬剤を服用しておられる方は注意が必要です。妊娠はホルモンのバランスや肝臓での酵素の働きを変化させ、一部の抗てんかん薬の血中濃度を低下させることが知られています。抗てんかん薬の中でも、ラモトリギンはその影響が顕著にあります。また別の機会に書きますが、ラモトリギンは妊娠に関する安全性が高いというデータから最近はよく使用される薬剤です。その一方、このお薬は妊娠中に血中濃度が半分、影響が大きい方では1/3-1/4にまで濃度が低下し、発作が増えてしまうことがあります。ですので妊娠中には用量を増やして使用しなければならないこともあります。

こうした例外に注意しながら、妊娠中の発作を避けられるように患者さんと相談しながら治療をすすめていきます。

では、全身けいれん以外の発作はどうでしょうか?意識が曇る、体が一瞬びくっとする、自覚症状のみ、といったタイプの発作をお持ちの方もたくさんいらっしゃいますが、こうした方の発作は基本的に妊娠に影響することはありません。とにかく最低限全身けいれんだけはないようにする、というのが発作に関する基本的なスタンスではないかと思っています。

ちなみに今でも「出産の時にけいれんが起こるといけないから、帝王切開になると思います」といった説明を聞いている患者さんもいますが、これは誤りで、ほとんどの場合は通常の分娩が可能です。出産時や分娩中にけいれん発作が起こる可能性は高くはありませんが、なかには陣痛で眠れなくなり、けいれん発作が起こってしまったケースもありました。ただその場合でも発作が終わった後で普通の分娩をした方もおられますし、必ずしも帝王切開は必要ではありません。どうしても必要ならその時に産科の先生が判断されますので、最初から帝王切開を考える、というのは産科合併症が何かある場合でなければむしろ稀なことですね。

妊娠前にできるだけよい状態を作り出して妊娠に臨み、妊娠中も母体の変化への対応をとれば、発作は大きな問題にはならないことが多いということをご理解いただきたいと思います。