2016年1月25日月曜日

世界てんかんの日

今日は当院のメダカの水槽に厚い氷が張っています。寒い・・・。

2月の第2月曜日は国際てんかん協会と国際抗てんかん連盟の定める「国際てんかんの日」です。これは2月14日の聖バレンタイン(てんかんの守護聖人)の日の1週間前ということで決まった日だそうです。前日の2月7日に東京で以下のようなイベントが予定されていますので、興味がある方は足を運んでみてはいかがでしょうか?

2016年1月22日金曜日

てんかんを公表している著名人⑫ Matt Davidson Rider Crooks (Football player, 1994~)

2016年1月中旬、大阪は寒いです・・・。雪国の方には「何言ってるんだ」と言われるかもしれませんが。

てんかんをお持ちの患者さんによくある悩みとして「周囲の人が理解してくれない」「誰も分かってくれない」というのがあります。

発作がなければ「なんだ全然元気じゃないか」と言われ、

発作があれば「もう何もしなくていいからそこに座っていなさい」と言われる。

発作がなくても悩みを抱える患者さんには前者の扱いはつらいですし、発作があってもその時以外は普通に過ごせる患者さんには後者の扱いは大きなストレスです。
ただほとんどの場合、相手の方に悪意は全くありません。単にその方のてんかん、という病気にさまざまな病状があり、抱えている問題もさまざまである、ということが理解されていないだけなのだと思います。これからも頑張って啓蒙活動を続けなくては・・・と思うゆえんです。

今日ご紹介するのは守備的ミッドフィルダーとして将来を嘱望され、2016-2017年シーズンをScottish Premier League のGlasgow Rangers(元日本代表の中村俊輔選手が所属していたCelticとは長年のライバルです)でプレーすることが公表されているMatt Crooksです。彼は21歳で意識を失うタイプのてんかん発作を発症しました。すでにプロサッカー選手としてのキャリアをスタートさせていた彼にとって、てんかんの発症はとてもショックな出来事であったことは想像に難くありません。

そんな中、チームメイトだったある選手が彼のよき理解者となりました。彼は将来を約束した女性をてんかん発作のために失うという悲劇的な経験をし、てんかんについてさまざまなことを知っていました。彼と話す中で、Crooksはてんかんを理解し、てんかんを受け入れることができたといいます。

“I didn’t know anything about epilepsy until I came here and ended up living with Kal. We became good friends and had chats about it. He made 
me understand it more because of 
his situation.「僕はてんかんについて何も知らなかった。Kal(チームメートの名前 Kal Naismithのこと)と一緒に暮らすようになるまでは。僕たちはいい友達になり、てんかんについて話すようになった。彼の経験から僕はてんかんについてより多くのことを学んだ」
 
私の患者さんにもサッカー少年は何人もいます。彼らのためにも、今後のMattの活躍に期待しています。
 
Matt Crooks: Rangers old boy Kal Naismith helped me overcome epilepsy shock
Read more at http://www.dailyrecord.co.uk/sport/football/football-news/matt-crooks-rangers-old-boy-7131700#CVjgZJ3XDH0YIsiC.99
 
 

2016年1月8日金曜日

てんかんと妊娠③ 「妊娠中に発作があったらどうなるの?」

シリーズ第3回は、妊娠中のてんかん発作についてです。

まず基本的なこととして、妊娠前に発作ができるだけ起こらないように(かつ胎児への影響が最低限になるように)薬剤を調整しておくことが重要です。

では発作がどうなれば妊娠に適切かというと、はっきりした決まりはありませんが、全身けいれん(強直間代発作)は少なければ少ないほどいいことは間違いないと思います。

全身けいれんが起こりますと、どうしてもおなかに力が入りますので、早産や流産のリスクがまず高くなってしまいます。全身けいれんがあることが胎児にどのような影響があるかはまださまざまな議論がありますが、全身けいれんの回数が多い(文献によっては妊娠中に5回以上)場合、生まれる赤ちゃんの知能に影響する可能性があるとも言われています。

逆に言えば1-2回あったぐらいでは、流産や早産にかかわりさえしなければ大きな影響はないとも言えます。実際に当院に通院されている方でも、妊娠中に全身けいれんがあった方はいますが、特に問題なく出産され、お子さんも問題を認めていません。

ただ繰り返しになりますが、全身けいれんはないほうがいいことは間違いないので、できるだけ少なくなるように治療を行ってから妊娠に臨むほうがいいでしょう。妊娠中に上記したような回数で、頻繁にけいれん発作が起こることが予想されるような状況では、まだ妊娠に臨むのは難しいということになりますね。

「今はいいよ、でも、妊娠しちゃったら発作が増えたりしないかな・・・」とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんね。しかし妊娠前にてんかん発作のコントロールが良い方は、妊娠中も良いことが知られています。つまり妊娠をするだけでは発作が増えることは(絶対ではありませんが)あまりないということですね。ただ、例外もあります。

たとえば妊娠中に血液中の薬物濃度が低下するような薬剤を服用しておられる方は注意が必要です。妊娠はホルモンのバランスや肝臓での酵素の働きを変化させ、一部の抗てんかん薬の血中濃度を低下させることが知られています。抗てんかん薬の中でも、ラモトリギンはその影響が顕著にあります。また別の機会に書きますが、ラモトリギンは妊娠に関する安全性が高いというデータから最近はよく使用される薬剤です。その一方、このお薬は妊娠中に血中濃度が半分、影響が大きい方では1/3-1/4にまで濃度が低下し、発作が増えてしまうことがあります。ですので妊娠中には用量を増やして使用しなければならないこともあります。

こうした例外に注意しながら、妊娠中の発作を避けられるように患者さんと相談しながら治療をすすめていきます。

では、全身けいれん以外の発作はどうでしょうか?意識が曇る、体が一瞬びくっとする、自覚症状のみ、といったタイプの発作をお持ちの方もたくさんいらっしゃいますが、こうした方の発作は基本的に妊娠に影響することはありません。とにかく最低限全身けいれんだけはないようにする、というのが発作に関する基本的なスタンスではないかと思っています。

ちなみに今でも「出産の時にけいれんが起こるといけないから、帝王切開になると思います」といった説明を聞いている患者さんもいますが、これは誤りで、ほとんどの場合は通常の分娩が可能です。出産時や分娩中にけいれん発作が起こる可能性は高くはありませんが、なかには陣痛で眠れなくなり、けいれん発作が起こってしまったケースもありました。ただその場合でも発作が終わった後で普通の分娩をした方もおられますし、必ずしも帝王切開は必要ではありません。どうしても必要ならその時に産科の先生が判断されますので、最初から帝王切開を考える、というのは産科合併症が何かある場合でなければむしろ稀なことですね。

妊娠前にできるだけよい状態を作り出して妊娠に臨み、妊娠中も母体の変化への対応をとれば、発作は大きな問題にはならないことが多いということをご理解いただきたいと思います。

2016年1月2日土曜日

あけましておめでとうございます

新年あけましておめでとうございます。年始の大阪は今のところ良い天気が続いていますね。皆さまどんなお正月をお過ごしでしょうか?

小出内科神経科の診療は1月5日より開始させていただきます。年始の午前中は混雑が予想されます。患者さん方には時間に余裕をもって来院されるよう、よろしくお願い申し上げます。