2014年11月29日土曜日

金縛り=睡眠麻痺

以前からときどき、てんかんの相談にいらっしゃる方の中に、「ぐっすり寝ているときに目が醒めたら、体が動かなくて苦しくてもがいているうちに動くようになって、すごく怖かったんです」といったお話をされる方がいらっしゃいます。詳しくお話をお伺いすると、てんかんではなく、いわゆる金縛り、という状態のように思われる方々です。医学的には睡眠麻痺といいます。

もちろん、睡眠中に限って起こるてんかん発作も珍しいものではありません。そのため中には金縛りかてんかん発作か、お話を聞いていても区別が難しく、発作時ビデオ脳波同時記録検査などによってはじめて区別ができるような方もおられますが、多くの場合は特徴の違いから区別することができます。もちろん睡眠麻痺の場合は脳波検査をしても異常はありません。

金縛りは自覚できる症状のため、怖い思いをされている方が心配になって相談されることもよくわかります。通常の、頻度が少ない金縛り状態が寝ている時にだけ起こる、ということであれば、あまり心配されることはありませんが、頻度が多い(たとえば週数回ぐらい)であるとか、意識が曇るといったことがあるようなら、一度は医師にご相談ください。

2014年11月19日水曜日

紅葉

谷町筋を挟んでお向かいの吉祥寺の紅葉がとても美しいです。どうぞ受診の際にご覧ください。

2014年11月10日月曜日

てんかんを診断するということ

先日から、「てんかんなんですけど、診てもらえますか?」という予約の電話をいただき、いらっしゃった方の中に、「ん?」と思う方に何人かお会いしました。

よくお話を聞いてみると、「血をみて倒れてけいれんして、脳波をとったらてんかんだと言われた」とかいう、先日のブログでもご紹介した失神が明らかに疑わしい方もいらっしゃったのですが、そもそも「なんでてんかんなんでしょうね?」と、ご自分がなぜてんかんだと診断されたのか、そのこと自体を全く説明されていない方もおられました。この方は「脳波が悪かったからですかね?」と、逆にこちらに質問されて、ちょっと困ってしまいました。実際には脳波にも異常が何もないので(異常があると言われた脳波を持ってきてもらっても見つからないのです)、なぜそういう話になったのか全く分からない、ということが現実的にあるわけですね。

私はてんかんを診断することは、てんかんだと診断しないことよりもずっと勇気がいることだと思います。てんかんだと診断されれば、運転免許など社会的制約もありますし、現実的には厳しい偏見の目もあります。またてんかんだと診断されることで患者さん(というのが本来ふさわしくないのですが)は精神的にも大きな負担となります。「あなたはてんかんです」と言うのは重大な告知ですが、これは専門医であるほどそうではないかと思います。その言葉を告げることによってこれから考えなければならないことが沢山あることを知っているからです。

しかし現実には、「てんかんかもしれない」という言葉は非常に軽く発せられているように思います。「てんかんかもしれない」「てんかんが否定できない」といったあいまいな判断から、「念のために」治療が開始され、「てんかんだったら」危ないので運転免許も止めておいたほうがいいとか、薬を服用しながら妊娠するのはちょっと・・・みたいな話になり、いつの間にかもともとはてんかんがあるのかないのかすら話題にのぼらなくなり、担当の先生も変わっていき、いつの間にかその患者さんはその病院では「てんかん患者さん」になり・・・といったことがあるようです。わかります。ずっと昔の自分もそうだったかもしれませんから・・・。

もちろん、てんかんの診断が問診や脳波検査などを行っても困難なことはあります。ただその場合は困難なことを踏まえて「いまの時点ではてんかんとは診断できないが、てんかんを考えながら経過をみる、あるいは一定の期間だけの行動の制約をお願いする」というのが正しい姿勢ではないかと思います。

その間にできるだけ診断に近づく努力をするべきです。症状がある程度あるならビデオカメラで症状を撮影してもらえれば、てんかんを専門にしている医師なら見ればだいたいは分かります。専門にしていない先生であれば、症状と脳波所見を一緒に検討できる、長時間ビデオ脳波同時記録をお願いするためにてんかんセンターに紹介する方法もあるでしょう。「否定できない」ぐらいなら、診断しないほうがよいと思っています。これからもそうした立場から情報を発信していきたいと思います。