2016年5月31日火曜日

てんかんを公表している著名人⑬ Chanda Gunn (icehockey player 1980~)

最近てんかんを発症された高校生の患者さんで、それまで普通に参加していたクラブ活動に、てんかんを発症した後、顧問の先生から「安全のために参加しないでほしい」と言われた、というお話をうかがいました。ご本人はとてもショックだったようです。病状的にはクラブ活動には大きな問題はない、と顧問の先生に手紙を書くことにしました。

このように、てんかんにはまだまだ社会的なstigmaが根強く存在していることを感じさせるエピソードでした。

本来はてんかんがある、ということが問題なのではなく、病状が問題なのです。さすがに毎日全身けいれん発作を起こしている(そんな人はほとんどいませんが)となると、確かに様々な社会活動に制限が生じうると思います。一方で、何年も発作がない、といった場合には、たとえば2年の無発作期間があれば運転免許の取得も道路交通法で保障されているわけです。これには2年も発作がない方が事故を起こす確率は、一般のドライバーと極端に違わない、という科学的な根拠があります。このように、発作がない、あるいは非常に少ない方の社会生活に過度の制限をかけるのは公平性の面からあきらかに不適切です。

今回ご紹介するのは、アイスホッケーアメリカ代表として活躍したChanda Gunnです。彼女は9歳の時に若年欠神てんかんといわれるタイプのてんかんを発病し、治療を行っています。幼少期にアイスホッケーの才能を開花させた彼女は推薦を受け大学に進学します。しかし残念ながらそこで全身けいれん(強直間代発作)が何度も起きてしまい、治療のため大学生活を一時中断せざるを得ませんでした。しかし発作がコントロールされたのち、彼女は他の大学に転入し、そこでアイスホッケーに打ち込んだのです。

彼女は懸命に練習し、てんかんがなんら自分のプレーに影響がないことをコーチに証明してみせました。そしてアメリカ代表に選出され、2004年の世界選手権での金メダル、2006年の冬季オリンピックでの銅メダルに貢献しています。

現在彼女はてんかんについて、特にアスリートとしててんかんと闘う人として「てんかんが理由で夢をあきらめないでほしい」というメッセージを伝え続けています。

参考:

Chanda Gunn

AvE Ambassador

http://athletesvsepilepsy.com/team/chanda-gunn

2016年5月30日月曜日

和歌山県医師会精神科部会での講演&抗てんかん薬の精神面への影響

5月28日 和歌山ビッグ愛にて「症例から診るてんかん」という演題で講演をさせていただきました。

私が経験した、精神科で出会う可能性があるてんかんの症例を3例ほど提示しながら、色々と注意すべき点についてお話しました。特に抗てんかん薬で精神症状が悪化したり、易刺激的になったりした例は興味をお持ちいただけたように思います。

昔は「てんかん性性格変化」といったことがまるで歴然とあるかのように語られていたこともありました。しかし最近では多くの場合は、一部の、ある種のてんかんの患者さんでは認知機能の問題から理解が上手くできないことが「迂遠」な印象を持たれたり、ある種の抗てんかん薬の影響から「易刺激的で爆発的」だったりしたのではないかと考えられるようになっています。

現に抗てんかん薬を整理すると、「穏やかになった」「前ほどイライラしていない」といった感想が周囲の方から聞かれることは珍しくありません。自分の患者さんが治療を開始した後に、精神的な変化をきたした場合、まずは抗てんかん薬の影響について考えてみる、という必要性はご理解頂けたのではないかと思います。

2016年5月23日月曜日

第57回日本神経学会学術大会

5月18日から21日、神戸国際会議場で行われた日本神経学会学術大会に参加させていただきました。

自分の役割としては「てんかんの社会的啓発を目指して」というセッションで、当院の取組等をご紹介させていただきましたが、朝一番、8時からのセッションだったにもかかわらず、立ち見も出るなど、他の会場に比べても盛況のようでした。

神経学会では最近になりてんかん診療への注目、熱意が高まりつつあるのを感じます。患者さんをたくさん診たり、系統立てて、てんかんの勉強をするのはなかなか一般の病院では難しいのですが、てんかんが好きな神経内科医が増えてくれるのは嬉しいですね。

今回はポスター発表もさせていただきましたが、そちらはあまり神経内科医になじみのない疾患の経験をご紹介しました。私が発表したGlut-1欠損症症候群は小児神経科の先生方にはよく知られていますが、成人を担当する神経内科医にはほとんど知られていません(神経内科からの発表は私が日本では最初のようです)。しかし、成人になり症状がはっきりしてくる方もおられ、おそらく見逃されている方もたくさんいるのではないかと考えています。この疾患の診断がきわめて重要なのは、薬物療法などがあまり効果がない一方、ケトン食などの食事療法が著効し、神経予後を改善しうるためです。一定の労作で悪化しする神経症状をみたら、一度は髄液/血糖比をみておくべきだと思っています。

会場で拙著「てんかんが苦手な医師のための問診・治療ガイドブック」も見つけました。まだ平積みで販売していただけていました。



2016年5月10日火曜日

第57回日本神経学会発表による副院長休診のお知らせ

5月18日(水)から5月21日(土)、神戸コンベンションセンター・神戸ポートピアホテルにて、第57回日本神経学会学術大会が行われます。当院からも19日は教育コース「てんかんの社会的啓発をめざして」での教育講演を行います。また20日はポスターセッションにて「Ketogenic Dietが有効な不随意運動:GLUT-1欠損症症候群によるジスキネジア」を発表させていただきます。

これに伴い、小出泰道副院長の外来は5月20日~21日まで休診となります。初診をご希望の方や、通院中の患者さんで相談等おありの方はご留意くださいますようよろしくお願いします。なお小出秀達院長の外来は通常通り診療を行っております。