2017年5月29日月曜日

てんかんの原因を探す!秋山先生のご講演

5月27日に梅田で新規抗てんかん薬「フィコンパ」の使用経験について話し合う、という趣旨の「フィコンパ Expert Meeting」という講演会があり、小出も当院での経験をお話しました。特定の薬についてのプロモーションをするような講演はしないことにしているのですが、少なくともこれまでの治療で全く歯が立たなかった患者さんの何人かに著効しておりますので、そのような方がいるのであきらめずに治療内容を考えることが重要だという自戒も含めてお話をしました。

それよりももっと興味深かったのが、特別講演の岡山大学の秋山先生がされた「てんかんと小児代謝性疾患」というお話でした。秋山先生とは静岡のてんかんセンターで一緒にお仕事をさせていただいたこともありますが、現在はこの小児代謝疾患の診断系を確立する、というお仕事をされています。

秋山先生がいくつか提示された小児代謝性疾患の症状は、あるものはてんかん発作だったり、発達障害や知的障害であったりと、それ自体はあまり特徴的でなく、検査を行わない限り診断ができない疾患がたくさんありました。

この診断がつくかどうかがとても重要なのがこの小児代謝性疾患の特徴です。もちろんどんな病気でも診断がつくことが重要なのですが、この疾患群がとても重要なのは、原因そのものが治療可能かもしれない、という点です。

たとえばてんかんを例にあげれば、我々は普段てんかんの治療、というと抗てんかん薬による薬物療法を考えます。これはてんかん発作の原因である神経の興奮を薬剤によって抑制し、発作を起こさせないようにする、というものです。ただこれは興奮を起こす神経そのものの性質を変える治療をしているわけではなく、興奮が起こらないように抑えているだけです。ですので断薬すると発作が再発しうるのですね。

一方小児代謝性疾患は代謝の経路の一部に体質的な不具合があり、代謝産物が作られなかったり、もしくは蓄積してしまったり、うまく目的の臓器に達するすることができなくなることで、例えば脳に不具合が生じればてんかん発作などの症状がおこります。とするとこの代謝産物を様々な方法で補充したり、除去したりすることができれば、臓器で起こる不具合はなくなる可能性があります。つまり原因からてんかんの治療ができるのです。実際に原因が分かったことで劇的な改善が得られた例もご紹介いただきました。

もちろんこれらの疾患は患者数がとても少ないと考えられており、世界中でせいぜい100例程度の報告数であったり、日本ではまだ未報告といった疾患もあります。ただ、実際には診断がついていない例も沢山あると思われ、診断することがその人の人生を大きく変える可能性があるという点で、我々はあまり特徴のない症状から、疾患の診断に至るプロセスを学んでおく必要があると思います。これからも勉強を続けていきます。

2017年5月20日土曜日

「てんかんフロンティア 未来へのNew-Trend」発売されます

2015年11月にてんかんの最先端研究や診療について各分野のトップランナーが講演を行う「宮崎てんかんシンポジウム」が行われ、小出も参加させていただいたことは当時こちらのブログでもご報告させていただきましたが、その講演録が1冊の本になり、このたび発売されました。初学者向けの本ではなく、てんかんについて深く学びたい、という先生にはとても面白い本だと思います。

てんかん学者がそれぞれの得意分野について話すのを聞く、というのは実はとても貴重な機会です。学会等に参加しても、自分がその場で話を聞くことができるセッションはごく一部ですので、特に今回基礎研究の話などをきちんとまとめて聞くことができたのはとてもよかったです。小出も新規抗てんかん薬を含めた薬物療法について講演内容を書かせていただきました。てんかんを深く勉強したい先生にお勧めします。

2017年5月15日月曜日

てんかんWebセミナー「てんかん診療はなぜ時間がかかるのか? 患者さんとのコミュニケーションの ポイントと教育の重要性について」

5月12日(金)19時~第一三共TVにおきまして、「てんかん診療はなぜ時間がかかるのか? 患者さんとのコミュニケーションの ポイントと教育の重要性について」という講演を、埼玉医科大学名誉学長の山内俊雄先生に座長をお願いし開催させていただきました。

てんかんの診療が他の神経疾患の診療に比べてどのように違い、なぜ時間がかかるのか、「てんかんは苦手」というお医者さんはなぜ多いのかなどについて考察したうえで、診療を円滑に進めるためには積極的に患者さんとコミュニケーションをとり、教育を図ることが重要であるとお話しました。また患者さんの教育ツールとしてのWebコンテンツ「てんかんabc」(https://www.tenkan-abc.jp/)もご紹介させていただきました。

Web講演会ははじめてで、スタジオの中でインターネットの向こう側にいる先生方に話をするというのは不思議な感覚で、不慣れからお聞き苦しい点もあったかと思いますが(言い訳をしますとさらに黄砂のせいか本当に鼻声でした)お伝えしたいことはお伝えできたのではないかと思いました。今後も様々な機会を通じ、てんかん診療についての意見を発信していきたいと思います。

Webセミナーはオンデマンド形式で、再放送がありますので、興味をお持ちの方はどうぞご覧ください。http://dstv.dsc-caster.info/websemi/vmt/170512/








2017年5月1日月曜日

Progress in Medicine4月号「大規模災害とてんかん診療:東日本大震災を振り返って」

Progress in Medicine(ライフサイエンス社)の4月号の特集「プライマリ・ケア医のためのてんかん診療」に「大規模災害とてんかん診療:東日本大震災を振り返って」という記事を書かせていただきました。災害当時の経過や現地での経験、その後のてんかん診療を災害の経験はどう変えたのか?といった内容となっております。ご興味がありましたらぜひご覧ください。