2015年6月30日火曜日

高齢者のてんかん

雨が多い地域もあるようですが、今のところ大阪ではあまり梅雨の恵みはありません。そのせいもあってか、紫陽花や桔梗の花の終わりも早まってしまったように感じます。

最近、ご高齢になってはじめて、てんかんを発症する患者さんが増えている、ということが言われています。高齢化社会に伴って、このタイプの患者さんはますます増えていく可能性があると思われますし、診療していても、一定の割合でそうした方を拝見する機会があります。

てんかんは脳の中で行われている神経細胞の電気的活動が一過性に異常を来す病気です。この一過性の電気の流れの異常が「てんかん発作」として現れます。異常な電気活動が起こる脳の部位やその程度によって、症状は非常にさまざまで、ちょっとした自覚症状だけの場合もあれば、いわゆる「泡を吹く」と表現されるような全身けいれんの場合もあります。

この一過性の電気活動の異常はさまざまな原因で起こり得ます。原因は明らかでないことも多いのですが、体質的に異常な電気活動が起こりやすい方もいれば、脳卒中、外傷や感染症、腫瘍などによる脳の傷が原因となって、異常な電気活動が起こる方もいます。

ご高齢になって初めててんかん発作を生じる場合は、ほとんどの場合がこの脳の傷が原因になるものです。ご高齢になる、ということは脳にも見える、あるいは見えない形での様々な損傷が起こってくるということを意味します。脳の血管は動脈硬化を生じ、また変性といって神経細胞そのものの加齢現象も起こってきます。これらによって生じる小さな傷がてんかんの原因になるのですね。

高齢の方のてんかん発作は全身がけいれんするような症状が少なく、ちょっとぼーっとしているようにみえたり、応答があいまいになったりする、といったわかりにくい症状が多いと言われています。そのため周りの人にも認知症であるとか、とぼけているとかそういう誤解をもって捉えられていることがよくあります。日頃からずっと認知機能に問題があるわけではなく、時々おかしい、というのがてんかん発作を疑うきっかけになります。

しかし、これもご高齢の方に多いと言われていますが、非痙攣性てんかん重積状態と言われる特殊なてんかん発作の起こり方があり、これは発作が消長を繰り返しながら非常に長く続きます。30分~長い方では数日、といったこともあります。症状が軽くなったりひどくなったりしながらもずっと続いてしまうような場合は、なかなかてんかんを疑われず、やはり認知症を疑われることが多くなります。

こうした受診に至るまでに難しい面はあるものの、診断さえつけば治療の効果は非常に良い、というのも一つの特徴です。ご高齢の方のてんかんは抗てんかん薬をごく少量服用するだけで(ご高齢の方は抗てんかん薬による眠気やふらつきなどの副作用もみられやすいことが多いので、このごく少量、というのがポイントです)完全に止まってしまうことも多く、きちんと診断して治療することが重要です。

ご高齢の方で上記のような、時々応答が悪いことがあって、それが普段の状態となんだか大きく違うな・・・というような症状がある場合は、認知症の前に一度てんかんも考えて、お近くの神経内科の先生にご相談になるといいかもしれませんね。
徘徊するお婆さんのイラスト(認知症)

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