今年の第50回日本てんかん学会学術集会(総会)は10月7日(金)~9日(日)、グランシップ静岡において、静岡てんかん・神経医療センターの井上有史先生を大会長に開催されます。第50回という節目の大会は日本で最初の、そして最大のてんかんセンターである静岡てんかんセンターらしく、てんかん学の歴史を振り返る展示、てんかんにかかわる映画のマラソン上映会など、てんかんに関する様々な側面にスポットを当てたユニークな会になるようです。「てんかんのサイエンスとアート」というテーマもいいですね。
今回のユニークな企画の一つに、「てんかんをめぐるアート展」があります。患者さんやご家族、その他てんかんにかかわる方ならだれでも、様々な形での応募が可能で、現在作品を募集中です。当院の外来にもパンフレットを置いておりますので、ご興味のある方はぜひぜひご応募ください!
http://www.shizuokamind.org/art2016/art.html
2016年2月26日金曜日
2016年2月20日土曜日
第1回神戸てんかんカンファレンスで講演させていただきました。
昨日2月19日、「第1回神戸てんかんカンファレンス」がホテルクラウンパレス神戸にて行われ、脳波についての講演「脳波を判読するために~脳波をみる前に絶対にすべきこと~」をさせていただきました。
私のメッセージとしては、脳波をみる前に詳しく患者さんから話を聞いて、てんかんなのか、それらしくないのか、てんかんであればどういうタイプなのか、ということをきちんと考えてから脳波をみる、ということを強調させていただきました。
「倒れた、意識がなくなった、けいれんしていた」
⇒「てんかんかもしれない」
⇒「脳波をとろう」
⇒「怪しいところがある。てんかんが否定できないから治療しよう」
という流れの中で、そもそもてんかんでもなんでもない方が治療されてしまっている、ということがある、というのはこれまでもブログの中でご紹介しているとおりです。その原因の多くは、問診を十分に行っていないことに由来しています。
問診を十分に行い、そこでてんかんであることやその詳しいタイプを判断できるようになれば、脳波をきちんと参考にすることができます。てんかんでない病状をてんかんと診断してしまう誤りを避けるためには、脳波をとる前の絶対すべきこと=詳細な問診が重要だということですね。
講演後にはたくさんの先生から個別にご質問をいただきました。また帰りに座長の先生から「第2回もぜひ!」とお声掛けいただきました。ありがたいです。この分野の知識を深めたい!という先生がたの熱意を感じました。
私のメッセージとしては、脳波をみる前に詳しく患者さんから話を聞いて、てんかんなのか、それらしくないのか、てんかんであればどういうタイプなのか、ということをきちんと考えてから脳波をみる、ということを強調させていただきました。
「倒れた、意識がなくなった、けいれんしていた」
⇒「てんかんかもしれない」
⇒「脳波をとろう」
⇒「怪しいところがある。てんかんが否定できないから治療しよう」
という流れの中で、そもそもてんかんでもなんでもない方が治療されてしまっている、ということがある、というのはこれまでもブログの中でご紹介しているとおりです。その原因の多くは、問診を十分に行っていないことに由来しています。
問診を十分に行い、そこでてんかんであることやその詳しいタイプを判断できるようになれば、脳波をきちんと参考にすることができます。てんかんでない病状をてんかんと診断してしまう誤りを避けるためには、脳波をとる前の絶対すべきこと=詳細な問診が重要だということですね。
講演後にはたくさんの先生から個別にご質問をいただきました。また帰りに座長の先生から「第2回もぜひ!」とお声掛けいただきました。ありがたいです。この分野の知識を深めたい!という先生がたの熱意を感じました。
2016年2月15日月曜日
てんかんと妊娠④-A 「てんかんの薬を飲んでいても大丈夫?」
このシリーズも4回目となりました。今回からは抗てんかん薬と妊娠・出産の関係を取り上げてみたいと思います。このトピックはとても話の内容が多くなりますので、3回ぐらいに分けてお話したいと思います。また、この分野は様々な大規模研究が現在進行形で行われており、その時点での情報をアップデートしていく必要があることも知っておいてください。
まずこれまでの繰り返しになりますが、多くのてんかんをお持ちの女性が抗てんかん薬を服用しながら、何ら問題なく出産していることを知っておいてください。そこを出発点に、どうすればさまざまなリスクを軽減することができるのか、これをてんかんの薬についても考える、ということになります。
現時点では、安全に妊娠・出産を行うための、抗てんかん薬についての基本的原則は「できるだけ発作を抑えるのに十分、かつ少ない種類、少ない量の薬を使用すること。葉酸サプリメントを併用すること」と言っていいと思います。
抗てんかん薬はお母さんが服用することにより、胎盤をつうじておなかの赤ちゃんにもお薬が移行します。これが体内での赤ちゃんの成長に影響をあたえることがあります。この影響は一般的には用量が多くなるほど、種類が多くなればなるほどみられやすいと考えられています。できれば少量の、一種類のお薬で治療ができればベストです。
どのぐらいの量にしたほうがいいか、というのは諸説ありますが、一応データから目安は示されており、たとえばカルバマゼピン(テグレトール)であれば400㎎以下を目指すべきだとされています。以下のてんかん学会の「てんかんを持つ妊娠可能年齢の女性に対する治療ガイドライン」は2007年に出たもので、内容は現在では見直しが必要な部分も多々ありますが、カルバマゼピンなら400㎎以下、という目標は現在でも悪くないと思います。また、薬の種類が増えるほど良くない、というのも現在でもまず正しいと考えてよいでしょう。特にバルプロ酸(デパケン、セレニカ等)とカルバマゼピンの組み合わせは避けるべきだとされています。
http://square.umin.ac.jp/jes/pdf/pregnancyGL.pdf
では、具体的に抗てんかん薬が赤ちゃんにどのような影響をあたえうるのか、現在まだあくまでも可能性の段階にあるものも含めて考えてみたいと思います。ここからはお薬の種類も関係してきます。
A.胎児奇形の発生
まず現在では使われることがほぼない、トリメタジオン(ミノアレビアチン)などをのぞけば、抗てんかん薬を使っていても胎児奇形が極端に増えることはありません。以下にデータをお示しします。
日本における全国調査の結果をみますと、胎児奇形というのは二分脊椎のような大きなものから、小さなものも含め、全妊娠の2-3%程度に発生することがわかります(参考:横浜市立大学先天異常モニタリングセンターhttp://www.icbdsrj.jp/2010data.html)
ここには妊婦さんの年齢など様々な因子が複雑に関連しています。抗てんかん薬はその因子の一つ、ということになります。
ではもともと2-3%は存在する胎児奇形のリスクを、抗てんかん薬がどの程度上げるのか?というのが問題になります。ここに薬の用量や種類が関係してきます。
上記したようにカルバマゼピンなら400㎎以下、というのは400㎎以下ならこの2-3%のリスクを実質的に上げることはない、という意味になります。リスクは上にも書きましたように様々な因子が関連しますので、絶対にゼロにはなりませんが、少なくとも400㎎以下なら2-3%という、抗てんかん薬を服用していない妊婦さんのリスクと大きく変わるところはない、ということですね。
では大奇形の発生率が他の抗てんかん薬に比べて高いといわれるバルプロ酸はどうでしょうか?
上に挙げたガイドラインでは1000㎎以下、という量が目安とされていますが、これは現在では多いと考えられており、できれば600㎎以下を目指すほうが、よりリスクを下げることができると考えられます。報告上も1000㎎以上>600㎎-1000㎎>600㎎以下でリスクが下がっていった、とされています(Samren 1999, Morrow 2006)600㎎以下での奇形発生リスクは他の抗てんかん薬と大きく変わらないので、バルプロ酸は胎児奇形の予防に関しては600㎎以下を目指すようにしています。
たまに「デパケンを飲んで妊娠なんてムリ」とか、簡潔にして残酷な説明を聞いていた患者さんもいますが、次回以降お話する発達への影響などのデータを考慮しても、「ムリ」はそれこそ無理な説明ではないかと思います。
たとえ妊娠に向けて抗てんかん薬を十分に減らすことができず、様々なリスクがあったとしても、説明を聞いたうえでそれをどう考え、許容するか否か。それは最終的には患者さんご自身の判断にゆだねられるべきものです。
われわれ医師は、現時点で分かっているデータについてお話しながら、よほど医学的にリスクの高い選択でない限り、患者さんの選択を尊重し、支持するというのが妊娠・出産に関して必要だと思います。
まずこれまでの繰り返しになりますが、多くのてんかんをお持ちの女性が抗てんかん薬を服用しながら、何ら問題なく出産していることを知っておいてください。そこを出発点に、どうすればさまざまなリスクを軽減することができるのか、これをてんかんの薬についても考える、ということになります。
現時点では、安全に妊娠・出産を行うための、抗てんかん薬についての基本的原則は「できるだけ発作を抑えるのに十分、かつ少ない種類、少ない量の薬を使用すること。葉酸サプリメントを併用すること」と言っていいと思います。
抗てんかん薬はお母さんが服用することにより、胎盤をつうじておなかの赤ちゃんにもお薬が移行します。これが体内での赤ちゃんの成長に影響をあたえることがあります。この影響は一般的には用量が多くなるほど、種類が多くなればなるほどみられやすいと考えられています。できれば少量の、一種類のお薬で治療ができればベストです。
どのぐらいの量にしたほうがいいか、というのは諸説ありますが、一応データから目安は示されており、たとえばカルバマゼピン(テグレトール)であれば400㎎以下を目指すべきだとされています。以下のてんかん学会の「てんかんを持つ妊娠可能年齢の女性に対する治療ガイドライン」は2007年に出たもので、内容は現在では見直しが必要な部分も多々ありますが、カルバマゼピンなら400㎎以下、という目標は現在でも悪くないと思います。また、薬の種類が増えるほど良くない、というのも現在でもまず正しいと考えてよいでしょう。特にバルプロ酸(デパケン、セレニカ等)とカルバマゼピンの組み合わせは避けるべきだとされています。
http://square.umin.ac.jp/jes/pdf/pregnancyGL.pdf
では、具体的に抗てんかん薬が赤ちゃんにどのような影響をあたえうるのか、現在まだあくまでも可能性の段階にあるものも含めて考えてみたいと思います。ここからはお薬の種類も関係してきます。
A.胎児奇形の発生
まず現在では使われることがほぼない、トリメタジオン(ミノアレビアチン)などをのぞけば、抗てんかん薬を使っていても胎児奇形が極端に増えることはありません。以下にデータをお示しします。
日本における全国調査の結果をみますと、胎児奇形というのは二分脊椎のような大きなものから、小さなものも含め、全妊娠の2-3%程度に発生することがわかります(参考:横浜市立大学先天異常モニタリングセンターhttp://www.icbdsrj.jp/2010data.html)
ここには妊婦さんの年齢など様々な因子が複雑に関連しています。抗てんかん薬はその因子の一つ、ということになります。
ではもともと2-3%は存在する胎児奇形のリスクを、抗てんかん薬がどの程度上げるのか?というのが問題になります。ここに薬の用量や種類が関係してきます。
上記したようにカルバマゼピンなら400㎎以下、というのは400㎎以下ならこの2-3%のリスクを実質的に上げることはない、という意味になります。リスクは上にも書きましたように様々な因子が関連しますので、絶対にゼロにはなりませんが、少なくとも400㎎以下なら2-3%という、抗てんかん薬を服用していない妊婦さんのリスクと大きく変わるところはない、ということですね。
では大奇形の発生率が他の抗てんかん薬に比べて高いといわれるバルプロ酸はどうでしょうか?
上に挙げたガイドラインでは1000㎎以下、という量が目安とされていますが、これは現在では多いと考えられており、できれば600㎎以下を目指すほうが、よりリスクを下げることができると考えられます。報告上も1000㎎以上>600㎎-1000㎎>600㎎以下でリスクが下がっていった、とされています(Samren 1999, Morrow 2006)600㎎以下での奇形発生リスクは他の抗てんかん薬と大きく変わらないので、バルプロ酸は胎児奇形の予防に関しては600㎎以下を目指すようにしています。
たまに「デパケンを飲んで妊娠なんてムリ」とか、簡潔にして残酷な説明を聞いていた患者さんもいますが、次回以降お話する発達への影響などのデータを考慮しても、「ムリ」はそれこそ無理な説明ではないかと思います。
たとえ妊娠に向けて抗てんかん薬を十分に減らすことができず、様々なリスクがあったとしても、説明を聞いたうえでそれをどう考え、許容するか否か。それは最終的には患者さんご自身の判断にゆだねられるべきものです。
われわれ医師は、現時点で分かっているデータについてお話しながら、よほど医学的にリスクの高い選択でない限り、患者さんの選択を尊重し、支持するというのが妊娠・出産に関して必要だと思います。
2016年2月1日月曜日
当院かいわい:久成寺
当院の近辺のお寺に技芸に関係する方々の墓所が多いことは、先日からご紹介しているとおりです。今回は近松門左衛門作の人形浄瑠璃の中でも、最も有名な「曽根崎心中」のヒロインである、お初の墓所がある久成寺(くじょうじ)です。
現在の墓碑はお初の300回忌にあたる2002年に新しく建立されたものだそうです。ちなみにこちらは長年にわたって大相撲の高砂部屋の大阪場所での宿舎にもなっており、お寺の境内に腰掛けるお相撲さんは春の大阪の風物詩ともいえます。
現在の墓碑はお初の300回忌にあたる2002年に新しく建立されたものだそうです。ちなみにこちらは長年にわたって大相撲の高砂部屋の大阪場所での宿舎にもなっており、お寺の境内に腰掛けるお相撲さんは春の大阪の風物詩ともいえます。
参考:久成寺
2016年1月25日月曜日
世界てんかんの日
今日は当院のメダカの水槽に厚い氷が張っています。寒い・・・。
2月の第2月曜日は国際てんかん協会と国際抗てんかん連盟の定める「国際てんかんの日」です。これは2月14日の聖バレンタイン(てんかんの守護聖人)の日の1週間前ということで決まった日だそうです。前日の2月7日に東京で以下のようなイベントが予定されていますので、興味がある方は足を運んでみてはいかがでしょうか?
2月の第2月曜日は国際てんかん協会と国際抗てんかん連盟の定める「国際てんかんの日」です。これは2月14日の聖バレンタイン(てんかんの守護聖人)の日の1週間前ということで決まった日だそうです。前日の2月7日に東京で以下のようなイベントが予定されていますので、興味がある方は足を運んでみてはいかがでしょうか?
2016年1月22日金曜日
てんかんを公表している著名人⑫ Matt Davidson Rider Crooks (Football player, 1994~)
2016年1月中旬、大阪は寒いです・・・。雪国の方には「何言ってるんだ」と言われるかもしれませんが。
てんかんをお持ちの患者さんによくある悩みとして「周囲の人が理解してくれない」「誰も分かってくれない」というのがあります。
発作がなければ「なんだ全然元気じゃないか」と言われ、
発作があれば「もう何もしなくていいからそこに座っていなさい」と言われる。
発作がなくても悩みを抱える患者さんには前者の扱いはつらいですし、発作があってもその時以外は普通に過ごせる患者さんには後者の扱いは大きなストレスです。
ただほとんどの場合、相手の方に悪意は全くありません。単にその方のてんかん、という病気にさまざまな病状があり、抱えている問題もさまざまである、ということが理解されていないだけなのだと思います。これからも頑張って啓蒙活動を続けなくては・・・と思うゆえんです。
今日ご紹介するのは守備的ミッドフィルダーとして将来を嘱望され、2016-2017年シーズンをScottish Premier League のGlasgow Rangers(元日本代表の中村俊輔選手が所属していたCelticとは長年のライバルです)でプレーすることが公表されているMatt Crooksです。彼は21歳で意識を失うタイプのてんかん発作を発症しました。すでにプロサッカー選手としてのキャリアをスタートさせていた彼にとって、てんかんの発症はとてもショックな出来事であったことは想像に難くありません。
そんな中、チームメイトだったある選手が彼のよき理解者となりました。彼は将来を約束した女性をてんかん発作のために失うという悲劇的な経験をし、てんかんについてさまざまなことを知っていました。彼と話す中で、Crooksはてんかんを理解し、てんかんを受け入れることができたといいます。
てんかんをお持ちの患者さんによくある悩みとして「周囲の人が理解してくれない」「誰も分かってくれない」というのがあります。
発作がなければ「なんだ全然元気じゃないか」と言われ、
発作があれば「もう何もしなくていいからそこに座っていなさい」と言われる。
発作がなくても悩みを抱える患者さんには前者の扱いはつらいですし、発作があってもその時以外は普通に過ごせる患者さんには後者の扱いは大きなストレスです。
ただほとんどの場合、相手の方に悪意は全くありません。単にその方のてんかん、という病気にさまざまな病状があり、抱えている問題もさまざまである、ということが理解されていないだけなのだと思います。これからも頑張って啓蒙活動を続けなくては・・・と思うゆえんです。
今日ご紹介するのは守備的ミッドフィルダーとして将来を嘱望され、2016-2017年シーズンをScottish Premier League のGlasgow Rangers(元日本代表の中村俊輔選手が所属していたCelticとは長年のライバルです)でプレーすることが公表されているMatt Crooksです。彼は21歳で意識を失うタイプのてんかん発作を発症しました。すでにプロサッカー選手としてのキャリアをスタートさせていた彼にとって、てんかんの発症はとてもショックな出来事であったことは想像に難くありません。
そんな中、チームメイトだったある選手が彼のよき理解者となりました。彼は将来を約束した女性をてんかん発作のために失うという悲劇的な経験をし、てんかんについてさまざまなことを知っていました。彼と話す中で、Crooksはてんかんを理解し、てんかんを受け入れることができたといいます。
“I didn’t know anything about epilepsy until I came here and ended up living with Kal. We became good friends and had chats about it. He made
me understand it more because of
his situation.「僕はてんかんについて何も知らなかった。Kal(チームメートの名前 Kal Naismithのこと)と一緒に暮らすようになるまでは。僕たちはいい友達になり、てんかんについて話すようになった。彼の経験から僕はてんかんについてより多くのことを学んだ」
私の患者さんにもサッカー少年は何人もいます。彼らのためにも、今後のMattの活躍に期待しています。
Matt Crooks: Rangers old boy Kal Naismith helped me overcome epilepsy shock
Read more at http://www.dailyrecord.co.uk/sport/football/football-news/matt-crooks-rangers-old-boy-7131700#CVjgZJ3XDH0YIsiC.99
Read more at http://www.dailyrecord.co.uk/sport/football/football-news/matt-crooks-rangers-old-boy-7131700#CVjgZJ3XDH0YIsiC.99
2016年1月8日金曜日
てんかんと妊娠③ 「妊娠中に発作があったらどうなるの?」
シリーズ第3回は、妊娠中のてんかん発作についてです。
まず基本的なこととして、妊娠前に発作ができるだけ起こらないように(かつ胎児への影響が最低限になるように)薬剤を調整しておくことが重要です。
では発作がどうなれば妊娠に適切かというと、はっきりした決まりはありませんが、全身けいれん(強直間代発作)は少なければ少ないほどいいことは間違いないと思います。
全身けいれんが起こりますと、どうしてもおなかに力が入りますので、早産や流産のリスクがまず高くなってしまいます。全身けいれんがあることが胎児にどのような影響があるかはまださまざまな議論がありますが、全身けいれんの回数が多い(文献によっては妊娠中に5回以上)場合、生まれる赤ちゃんの知能に影響する可能性があるとも言われています。
逆に言えば1-2回あったぐらいでは、流産や早産にかかわりさえしなければ大きな影響はないとも言えます。実際に当院に通院されている方でも、妊娠中に全身けいれんがあった方はいますが、特に問題なく出産され、お子さんも問題を認めていません。
ただ繰り返しになりますが、全身けいれんはないほうがいいことは間違いないので、できるだけ少なくなるように治療を行ってから妊娠に臨むほうがいいでしょう。妊娠中に上記したような回数で、頻繁にけいれん発作が起こることが予想されるような状況では、まだ妊娠に臨むのは難しいということになりますね。
「今はいいよ、でも、妊娠しちゃったら発作が増えたりしないかな・・・」とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんね。しかし妊娠前にてんかん発作のコントロールが良い方は、妊娠中も良いことが知られています。つまり妊娠をするだけでは発作が増えることは(絶対ではありませんが)あまりないということですね。ただ、例外もあります。
たとえば妊娠中に血液中の薬物濃度が低下するような薬剤を服用しておられる方は注意が必要です。妊娠はホルモンのバランスや肝臓での酵素の働きを変化させ、一部の抗てんかん薬の血中濃度を低下させることが知られています。抗てんかん薬の中でも、ラモトリギンはその影響が顕著にあります。また別の機会に書きますが、ラモトリギンは妊娠に関する安全性が高いというデータから最近はよく使用される薬剤です。その一方、このお薬は妊娠中に血中濃度が半分、影響が大きい方では1/3-1/4にまで濃度が低下し、発作が増えてしまうことがあります。ですので妊娠中には用量を増やして使用しなければならないこともあります。
こうした例外に注意しながら、妊娠中の発作を避けられるように患者さんと相談しながら治療をすすめていきます。
では、全身けいれん以外の発作はどうでしょうか?意識が曇る、体が一瞬びくっとする、自覚症状のみ、といったタイプの発作をお持ちの方もたくさんいらっしゃいますが、こうした方の発作は基本的に妊娠に影響することはありません。とにかく最低限全身けいれんだけはないようにする、というのが発作に関する基本的なスタンスではないかと思っています。
ちなみに今でも「出産の時にけいれんが起こるといけないから、帝王切開になると思います」といった説明を聞いている患者さんもいますが、これは誤りで、ほとんどの場合は通常の分娩が可能です。出産時や分娩中にけいれん発作が起こる可能性は高くはありませんが、なかには陣痛で眠れなくなり、けいれん発作が起こってしまったケースもありました。ただその場合でも発作が終わった後で普通の分娩をした方もおられますし、必ずしも帝王切開は必要ではありません。どうしても必要ならその時に産科の先生が判断されますので、最初から帝王切開を考える、というのは産科合併症が何かある場合でなければむしろ稀なことですね。
妊娠前にできるだけよい状態を作り出して妊娠に臨み、妊娠中も母体の変化への対応をとれば、発作は大きな問題にはならないことが多いということをご理解いただきたいと思います。
まず基本的なこととして、妊娠前に発作ができるだけ起こらないように(かつ胎児への影響が最低限になるように)薬剤を調整しておくことが重要です。
では発作がどうなれば妊娠に適切かというと、はっきりした決まりはありませんが、全身けいれん(強直間代発作)は少なければ少ないほどいいことは間違いないと思います。
全身けいれんが起こりますと、どうしてもおなかに力が入りますので、早産や流産のリスクがまず高くなってしまいます。全身けいれんがあることが胎児にどのような影響があるかはまださまざまな議論がありますが、全身けいれんの回数が多い(文献によっては妊娠中に5回以上)場合、生まれる赤ちゃんの知能に影響する可能性があるとも言われています。
逆に言えば1-2回あったぐらいでは、流産や早産にかかわりさえしなければ大きな影響はないとも言えます。実際に当院に通院されている方でも、妊娠中に全身けいれんがあった方はいますが、特に問題なく出産され、お子さんも問題を認めていません。
ただ繰り返しになりますが、全身けいれんはないほうがいいことは間違いないので、できるだけ少なくなるように治療を行ってから妊娠に臨むほうがいいでしょう。妊娠中に上記したような回数で、頻繁にけいれん発作が起こることが予想されるような状況では、まだ妊娠に臨むのは難しいということになりますね。
「今はいいよ、でも、妊娠しちゃったら発作が増えたりしないかな・・・」とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんね。しかし妊娠前にてんかん発作のコントロールが良い方は、妊娠中も良いことが知られています。つまり妊娠をするだけでは発作が増えることは(絶対ではありませんが)あまりないということですね。ただ、例外もあります。
たとえば妊娠中に血液中の薬物濃度が低下するような薬剤を服用しておられる方は注意が必要です。妊娠はホルモンのバランスや肝臓での酵素の働きを変化させ、一部の抗てんかん薬の血中濃度を低下させることが知られています。抗てんかん薬の中でも、ラモトリギンはその影響が顕著にあります。また別の機会に書きますが、ラモトリギンは妊娠に関する安全性が高いというデータから最近はよく使用される薬剤です。その一方、このお薬は妊娠中に血中濃度が半分、影響が大きい方では1/3-1/4にまで濃度が低下し、発作が増えてしまうことがあります。ですので妊娠中には用量を増やして使用しなければならないこともあります。
こうした例外に注意しながら、妊娠中の発作を避けられるように患者さんと相談しながら治療をすすめていきます。
では、全身けいれん以外の発作はどうでしょうか?意識が曇る、体が一瞬びくっとする、自覚症状のみ、といったタイプの発作をお持ちの方もたくさんいらっしゃいますが、こうした方の発作は基本的に妊娠に影響することはありません。とにかく最低限全身けいれんだけはないようにする、というのが発作に関する基本的なスタンスではないかと思っています。
ちなみに今でも「出産の時にけいれんが起こるといけないから、帝王切開になると思います」といった説明を聞いている患者さんもいますが、これは誤りで、ほとんどの場合は通常の分娩が可能です。出産時や分娩中にけいれん発作が起こる可能性は高くはありませんが、なかには陣痛で眠れなくなり、けいれん発作が起こってしまったケースもありました。ただその場合でも発作が終わった後で普通の分娩をした方もおられますし、必ずしも帝王切開は必要ではありません。どうしても必要ならその時に産科の先生が判断されますので、最初から帝王切開を考える、というのは産科合併症が何かある場合でなければむしろ稀なことですね。
妊娠前にできるだけよい状態を作り出して妊娠に臨み、妊娠中も母体の変化への対応をとれば、発作は大きな問題にはならないことが多いということをご理解いただきたいと思います。
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