私はラグビーマンですが、アメリカンフットボールも大好きです。高校時代のラグビー部の先輩や同級生が大学ではアメリカンフットボール部に所属し、日本代表に選出されるなど活躍していたこともあります。
Alan Faneca(アラン・ファネカ、1976年生まれ)は、てんかんを公表しながらNFLの最高峰まで到達した代表的なアスリートです。ポジションはオフェンシブガードで、2021年にプロフットボール殿堂入りしています。
Fanecaが最初の発作を起こしたのは、高校1年生だった15歳のクリスマスイブでした。本人はそのときの恐怖と混乱を「悪夢のようだった」と振り返っています。まもなくてんかんと診断され、将来どうなるのか、自分の人生に何が残されているのか不安になったそうです。特に、8歳から続けていたアメリカンフットボールのような激しいコンタクトスポーツを、今後も続けられるのかが大きな問題でした。以前に取り上げたサッカー選手やラグビー選手も全く同じことで不安になっておられましたね。
しかし、家族、友人、医療関係者など周囲の支援を受け、薬物治療によって発作をコントロールしながら競技を続けました。
これは本人が疾患の啓発活動の中で子供たちに話していたエピソードですが、あるとき、発作後のもうろう状態で、そのままパジャマ姿で学校まで歩いて行ってしまったそうです。体格の大きなFanecaがパジャマで現れたため、友人に指摘され、いったん帰宅して着替えてから再び登校しました。彼はこの話を、恥ずかしい失敗談としてではなく、
「発作に伴って変なことや気まずいことが起きても、それで人生が決まるわけではない」
というメッセージとして伝えています。
Fanecaは、比較的早い時期から友人やチームメートにてんかんを隠さずに話していたそうです。本人は、周囲が心配したり質問したりしたときには、自分は大丈夫だと率直に説明しました。すると相手も過度に恐れず、普通に接してくれるようになったと述べています。病気についてオープンでいることが、本人にとっても周囲にとっても助けになったという経験ですね。皆さんがこのようにオープンでいられるかどうかはわかりませんし、それぞれにいろいろな姿勢があってよい、と私は思いますが、確かにてんかんについてオープンに、フランクに話すことが周囲にとってもよかった、という経験を話される方はいます。
Fanecaはルイジアナ州立大学(LSU)で主力となり、1998年のNFLドラフトで、ピッツバーグ・スティーラーズから1巡目全体26位で指名されています。
その後の成績は
- NFLで13シーズン
- 206試合出場、201試合先発
- プロボウル9回
- APファーストチーム・オールプロ6回
- 2005年シーズンのスーパーボウルXL優勝
- 2021年プロフットボール殿堂入り
という輝かしいものでした。しかも、現役最後の9シーズンはレギュラーシーズン全試合に先発しています。てんかんを公表した選手としてだけでなく、NFL史上屈指のオフェンシブラインマンと評価される実績です。2006年2月、スティーラーズはスーパーボウルXLでシアトル・シーホークスを破りました。Fanecaは優勝トロフィーを手にした瞬間を、自身の競技人生で最も素晴らしい記憶と語っています。
引退後は、自身の病歴を積極的に語り、てんかんのある若者や家族への啓発活動に参加しています。彼が繰り返し伝えているのは、単純な「病気に負けるな」という話ではなく
- 適切な診断と治療を受ける
- 薬をきちんと服用する
- 周囲に必要な情報を伝える
- 病気だけで自分の可能性を決めつけない
という現実的なメッセージです(可能性のことは、以前の記事で取り上げたジェイ選手も同じことをおっっしゃっていたことを思い出しました)
てんかんとの向き合い方にはそれぞれの形があってよいと思います。その一つとして、こうしたオープンな姿勢が周囲にもよい影響を与えた、と感じている方がいる、ということも参考になるのではないでしょうか。
参考資料
- Epilepsy Scotland. “From being diagnosed with epilepsy as a teenager to Super Bowl winner.” 29 April 2021. https://www.epilepsyscotland.org.uk/from-being-diagnosed-with-epilepsy-as-a-teenager-to-super-bowl-winner/
- Epsy Health. “Inspirational Epilepsy Stories: Alan Faneca.” 19 March 2021. https://www.epsyhealth.com/seizure-epilepsy-blog/inspirational-epilepsy-stories-alan-faneca
- Epilepsy Reach Foundation. “NFL player and epilepsy advocate Alan Faneca inducted into football hall of fame.” September 2021. https://epilepsyreach.org/september-2021/
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