2018年10月30日火曜日

2018年てんかん学会のご報告

10月25日~27日 パシフィコ横浜で開かれました日本てんかん学会学術集会に参加してきました。

まず自分の発表として、ポスター発表「対戦型カードゲーム「遊戯王」による発作誘発を認めた4例の検討」を行いました。これは行為誘発性発作という、ある特定の思考や行為のパターンによって発作が誘発される、という発作型をかつて静岡てんかん・神経医療センターの井上有史先生が提唱されたのですが、これまでに読書、書画、演奏、カードゲームや麻雀、チェス、将棋や囲碁(今回の学会でも囲碁による誘発について発表しておられる先生がいました)などが報告されています。私が経験した4例の方はいずれも複数回遊戯王で対戦している際に発作が起こった、という経験をお持ちでした。視覚刺激、空間認知、計算、興奮や緊張といった様々なこれまでに検討されている発作を誘発する要素をいろいろと併せ持ったゲームなのだろうと思います。ただ誤解のないように付け加えますと、ほとんどのてんかんの方を含め、遊戯王で遊んだからといって発作を起こすことはまずありません。特定の体質を持った人と、このゲームとの相性の問題、といえばいいかと思います。

また直後のセッションで「てんかん専門クリニックでの診療の実際」というタイトルで講演をさせて頂きました。てんかんの診断については問診が重要であることは私が繰り返しいろいろなところでお話するところですが、それはMRIなどの検査でてんかんを診断することができないためです。脳波検査はてんかんの分類を考えたり、病状を知るためには重要な検査なのでもちろん脳波検査は行っています。そしてMRIはお近くのクリニックで撮像して下さるところがあるので、そこでてんかんの方の病変を見つけやすいような取り方を指定して撮像していただいております。ただ、これはてんかんか否かを決めるために検査をしているわけではないのです。問診があって、それを補うために(分類を決定するために)脳波検査があって、というところでてんかんか否かはほとんど決まっています。何だったら問診の段階で8割ぐらいは決まっています。そういう問診ができれば、クリニックでてんかんを診断したり、治療方針を立てたりすることはできるのです。逆に、いかに高度な検査機器がある病院でも、問診が不十分だとてんかんの診断を誤ることはあるわけです。そうしたクリニックでの診療が可能になるような、てんかんに関する医師の教育の在り方について、私の考えをお話させていただきました。

今回の学会では動物のてんかんについてのセッションや、発達障害とてんかんについてのセッションなどが特に興味深かったですね。またてんかんにまつわるアート展も、主催された方々の熱気が感じられて良かったです。

書籍売り場では拙著が販売されていましたが、手に取る方はあまり多くはないような・・・・秋風が心を吹き抜けるてんかん学会でした。


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