2018年11月28日水曜日

第3回神戸てんかんカンファレンス

さる11月22日、今年も神戸大学神経内科の教室からお招きをいただき、てんかん、特にその問診を生かして脳波を判読する、というテーマの会に参加させていただきました。もうこの会も3回目になります。同じところに何度も呼んでいただく、というのはやはり嬉しいですね。

ことしも簡単な問診を生かした脳波判読のあり方について簡単にお話しし、その後実際に脳波の判読を先生方に行っていただきました。教室からお若い先生方にご提示いただいた症例も大変興味深い症例で、私も勉強になりました。


2018年11月27日火曜日

てんかんを公表している著名人⑰ Florence Griffith Joyner(Olympic sprint champion, 1959-1998)

2019年はラグビーワールドカップが日本で開かれます。一生に1回しかないチャンス!ということで、すでに観戦チケットも入手しました。あとは日本代表が前回のワールドカップの南アフリカ戦と同様に、世界を驚かせるような試合を見せてくれることを心から願っています。

さらに2020年には、東京にオリンピックがやってきます。スポーツニュースなどでも、最近はオリンピックを意識した報道がされていますね。


てんかんを公表している著名人のシリーズで今回ご紹介しますのはFlorence Griffith Joynerです。独特のファッションや、競技を行っている時にもしていた真っ赤なネイルなどの印象が個人的にも強く残っていますが、オリンピックの女子100m(10秒49)、200m(21秒34)の世界記録を2018年11月現在も保持していることが、何よりも最強の女子アスリートであったことを物語っています。あまりにも記録が素晴らしすぎるためドーピング疑惑なども取りざたされることがありますが、陸上選手として、その運動能力に疑問の余地はないと思います。



38歳の時に寝室のベッド上で突然死しているところを発見されましたが、剖検の結果、左前頭部の海綿状血管腫によるてんかん発作により、偶発的に窒息したのではないかと判断されました(Wikipediaの英語版はきちんとてんかんによる窒息が死因であると書かれていますが、日本語版は2018年11月現在、心臓発作という当初報じられた不正確な情報がそのまま掲載されています)彼女は死後に家族によって1990年代、30代に何度かてんかん発作(おそらく強直間代発作)を生じていることが明らかにされました。一般的に言えば30-40代はあらたにてんかんを発病する方が少ない世代です。しかし彼女のような人もいますので、どんな人にも、どんな年代でも発症しうる疾患である、ということがご理解いただけるのではないかと思います。

海綿状血管腫がてんかん発作をきっかけに見つかることは時々経験します。当院を初診される方の中にも年に1-2人ぐらいはおられる印象です。焦点発作があり、MRIを血管腫などの異常が見つかりやすい撮像法でとると見つかることがあります。

てんかん発作が原因で亡くなること自体はごくまれなことです。過剰に心配する必要はありません。ただ、てんかん患者さんには偶発的な事故(日本では入浴中の溺水なども含め)や、原因がわからない突然死(Sudden Unexpected Death in Epilepsy、SUDEPとよく略されます)があることが知られています。そうしたことから、てんかんの患者さん全体でみると、一般の方よりも若くして亡くなる方が多いことは事実です。発作が、特に強直間代発作などの発作が多ければ多いほどリスクが高いと言われています。彼女のような転帰をとる方を一人でも減らすべく、現在SUDEPのリスクを評価する方法や予防する方法はないか、といった研究が盛んにおこなわれています。
参考:ニューヨークタイムズ紙(1998年10月23日)
https://www.nytimes.com/1998/10/23/sports/track-and-field-griffith-joyner-died-after-seizure-in-sleep.html


Florence Griffith Joyner2.jpg
(Wikipediaより)

2018年11月9日金曜日

てんかんの移行期医療座談会の内容が掲載されました

9月1日に移行期医療についての座談会に参加させていただきました。その内容がQlifeに掲載されています。

これは突然このような企画が持ち上がったわけではなく、以前からずっと小児から成人への移行期医療について顔の見える関係を作って話し合う「Transitional Case Meeting in Epilepsy」という集まりを数年前から持っていたのですが、その関係者が集まって、これまで話し合ってきたことを皆さんと共有する、といった内容になります。

当院にも小児科から紹介される患者さんは数多くおられますが、小児には小児の、成人には成人の悩みや病状があります。てんかんの病態も違うことがありますし、小児なら学校、成人は就労などが診療で話題になります。利用できる医療福祉制度も違います。「こどもは小さな大人ではない」というのは医療の世界ではよく言われることですが、様々な違いを持つ小児期の医療と成人の医療をうまく橋渡しするような存在になれればいいなと思っております。

そのためにも小児と成人のてんかんどちらについても知識を深める必要があるのですが、日本の神経診療全体にそうした視点が欠けているように思います。神経内科医や精神科医、脳外科医は小児神経科を研修する機会は普通ありません。小児神経科も同様です。そのため皆脳神経を専門にしているにもかかわらず、お互いの分野についての知識が不足しています。てんかんはこの知識を統合する必要がある疾患です。てんかんは小児期に発症することも多く、そうでなくても小児期に発症するてんかんが成人になって見つかることもあります。重症例は小児期に見つかるような疾患でも軽症であれば見逃されていて、成人になって初めて問題を生じてくることもあります。成人を担当する科の医師であっても、小児の知識はどうしても必要なのです(私は老年内科しかしないから関係ない、という先生もおられるとは思いますが・・・・)

現在の研修システムのどこかに、神経系を志す医師が互いの知識を共有できるような、そういう時間が作られるべきなのだろうと思いますね。



http://www.qlifepro.com/special/2018/11/08/transitional-medical-treatment-of-epilepsy-diagnosis/?fbclid=IwAR0vbuC-GRxj-OS2ZFyVNP0dsQnNskFnzMaz0DhRyQFPxxdPme5UEdE00PQ