2018年11月27日火曜日

てんかんを公表している著名人⑰ Florence Griffith Joyner(Olympic sprint champion, 1959-1998)

2019年はラグビーワールドカップが日本で開かれます。一生に1回しかないチャンス!ということで、すでに観戦チケットも入手しました。あとは日本代表が前回のワールドカップの南アフリカ戦と同様に、世界を驚かせるような試合を見せてくれることを心から願っています。

さらに2020年には、東京にオリンピックがやってきます。スポーツニュースなどでも、最近はオリンピックを意識した報道がされていますね。


てんかんを公表している著名人のシリーズで今回ご紹介しますのはFlorence Griffith Joynerです。独特のファッションや、競技を行っている時にもしていた真っ赤なネイルなどの印象が個人的にも強く残っていますが、オリンピックの女子100m(10秒49)、200m(21秒34)の世界記録を2018年11月現在も保持していることが、何よりも最強の女子アスリートであったことを物語っています。あまりにも記録が素晴らしすぎるためドーピング疑惑なども取りざたされることがありますが、陸上選手として、その運動能力に疑問の余地はないと思います。



38歳の時に寝室のベッド上で突然死しているところを発見されましたが、剖検の結果、左前頭部の海綿状血管腫によるてんかん発作により、偶発的に窒息したのではないかと判断されました(Wikipediaの英語版はきちんとてんかんによる窒息が死因であると書かれていますが、日本語版は2018年11月現在、心臓発作という当初報じられた不正確な情報がそのまま掲載されています)彼女は死後に家族によって1990年代、30代に何度かてんかん発作(おそらく強直間代発作)を生じていることが明らかにされました。一般的に言えば30-40代はあらたにてんかんを発病する方が少ない世代です。しかし彼女のような人もいますので、どんな人にも、どんな年代でも発症しうる疾患である、ということがご理解いただけるのではないかと思います。

海綿状血管腫がてんかん発作をきっかけに見つかることは時々経験します。当院を初診される方の中にも年に1-2人ぐらいはおられる印象です。焦点発作があり、MRIを血管腫などの異常が見つかりやすい撮像法でとると見つかることがあります。

てんかん発作が原因で亡くなること自体はごくまれなことです。過剰に心配する必要はありません。ただ、てんかん患者さんには偶発的な事故(日本では入浴中の溺水なども含め)や、原因がわからない突然死(Sudden Unexpected Death in Epilepsy、SUDEPとよく略されます)があることが知られています。そうしたことから、てんかんの患者さん全体でみると、一般の方よりも若くして亡くなる方が多いことは事実です。発作が、特に強直間代発作などの発作が多ければ多いほどリスクが高いと言われています。彼女のような転帰をとる方を一人でも減らすべく、現在SUDEPのリスクを評価する方法や予防する方法はないか、といった研究が盛んにおこなわれています。
参考:ニューヨークタイムズ紙(1998年10月23日)
https://www.nytimes.com/1998/10/23/sports/track-and-field-griffith-joyner-died-after-seizure-in-sleep.html


Florence Griffith Joyner2.jpg
(Wikipediaより)

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