新年あけましておめでとうございます。年始の大阪は今のところ良い天気が続いていますね。皆さまどんなお正月をお過ごしでしょうか?
小出内科神経科の診療は1月5日より開始させていただきます。年始の午前中は混雑が予想されます。患者さん方には時間に余裕をもって来院されるよう、よろしくお願い申し上げます。
2016年1月2日土曜日
2015年12月26日土曜日
2015年の診療を終えてのごあいさつ
本日12月26日午前をもちまして当院の2015年の診療を終了させていただきました。新年は1月5日(火)より診療を開始させていただきます。
思えば今年もあっという間でした。てんかん外来の新規の患者さんはだいたい15名前後/月ぐらいで推移していますが、継続治療させていただく方が増えるに従い、新患の方の予約が少し入りにくくなってきております。新規の方はどうしてもしっかりお話をおうかがいする必要がありますので、ゆっくりと時間をとることができる日時でのご予約をお願いせざるを得ません。新規のご予約の方にはご迷惑をおかけしておりますが、どうぞご理解くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
来年も一人でも多くの患者さんに「小出内科神経科を受診してよかった」と思っていただけるように、スタッフ一同頑張りたいと思います。来年もよろしくお願い申し上げます。それでは皆様、よいお年をお迎えください。
思えば今年もあっという間でした。てんかん外来の新規の患者さんはだいたい15名前後/月ぐらいで推移していますが、継続治療させていただく方が増えるに従い、新患の方の予約が少し入りにくくなってきております。新規の方はどうしてもしっかりお話をおうかがいする必要がありますので、ゆっくりと時間をとることができる日時でのご予約をお願いせざるを得ません。新規のご予約の方にはご迷惑をおかけしておりますが、どうぞご理解くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
来年も一人でも多くの患者さんに「小出内科神経科を受診してよかった」と思っていただけるように、スタッフ一同頑張りたいと思います。来年もよろしくお願い申し上げます。それでは皆様、よいお年をお迎えください。
2015年12月18日金曜日
当院かいわい:あべのハルカス
大阪もやっと冬らしく寒い日が続くようになってきましたね。
日本一高い商業ビル(地上60階建て、300m)、あべのハルカスが抜けるような青空に映えますね。上からの眺望は本当に素晴らしいのですが、大阪のシンボル通天閣がマッチ棒みたいに見えるのがちょっと寂しい感じがします(笑)
日本一高い商業ビル(地上60階建て、300m)、あべのハルカスが抜けるような青空に映えますね。上からの眺望は本当に素晴らしいのですが、大阪のシンボル通天閣がマッチ棒みたいに見えるのがちょっと寂しい感じがします(笑)
2015年12月9日水曜日
てんかんを公表している著名人⑪ Keith Richards(Rolling Stones, 1943~)
てんかんの原因は非常にさまざまです。脳が部分的な、あるいは全体的な一過性の電気的過剰興奮を起こすのがてんかん発作の原因ですが、この過剰な興奮が起こりやすくなる原因がいろいろある、ということですね。体質的な背景が考えられる方もいますし、脳梗塞や出血などの脳血管障害、頭部外傷、脳炎や髄膜炎などの
炎症、脳腫瘍など、脳に何らかの損傷が加わることによって機能の問題が生じ、てんかん発作が起きるようになることもあります。
「脳があれば誰でもてんかんになりうる」ということも、まさに言われるとおりかと思います。
Rolling Stonesのギタリストとして伝説的な存在で、かつ現在も精力的に活動を続けるKeith Richardsは、2006年に木の枝から飛び降りようとして足を滑らせ、木の幹で頭を打ち、後に頭蓋内出血を認めたため手術を受けています。この後彼は2度にわたっててんかん発作を経験し、抗てんかん薬の服用を現在も続けているそうです。
記事によりますと、医師には術後6か月の安静を言い渡されたようですが、6週間で音楽活動に復帰してしまった、というエピソードが、らしいというかなんというか・・・
http://www.dailymail.co.uk/femail/article-3299161/Keith-Richards-taking-anti-epileptic-drugs-having-prescribed-10-years-ago-following-Fiji-tree-accident.html
炎症、脳腫瘍など、脳に何らかの損傷が加わることによって機能の問題が生じ、てんかん発作が起きるようになることもあります。
「脳があれば誰でもてんかんになりうる」ということも、まさに言われるとおりかと思います。
Rolling Stonesのギタリストとして伝説的な存在で、かつ現在も精力的に活動を続けるKeith Richardsは、2006年に木の枝から飛び降りようとして足を滑らせ、木の幹で頭を打ち、後に頭蓋内出血を認めたため手術を受けています。この後彼は2度にわたっててんかん発作を経験し、抗てんかん薬の服用を現在も続けているそうです。
記事によりますと、医師には術後6か月の安静を言い渡されたようですが、6週間で音楽活動に復帰してしまった、というエピソードが、らしいというかなんというか・・・
http://www.dailymail.co.uk/femail/article-3299161/Keith-Richards-taking-anti-epileptic-drugs-having-prescribed-10-years-ago-following-Fiji-tree-accident.html
2015年12月7日月曜日
てんかん:精神科医と神経内科医
さる12月5日(土)グランヴィアホテル大阪での「てんかん治療を考える会」にて、「症例から診るてんかん」という講演をさせていただきました。聴衆は精神科の先生方を中心に約70名の方々が参加されており盛況でした。国立精神神経センター研究所病院の渡辺裕貴先生のご講演もとても教育的な内容で、参加された先生方からもたくさんの質問が寄せられていました。
昔はてんかんの診療といえばほぼ精神科の先生が一手に行い、そこに小児科の先生が参加している、という時代が日本で長くありました。そもそも昔の日本には神経内科も脳神経外科もなかったのです。その後脳神経外科が精神科から独立し、さらに神経内科が精神科とは独立した診療科になったのは、日本では1960 年代ぐらいからだと考えられます。地方によっては神経内科が精神科と別れて独立した大学講座になったのは1980年代というところもあります。それ以前は成人のてんかん患者さんはすべて精神科に通っておられたのです。
つまり昔はおとなのてんかんの専門家=精神科医だったのですね。昔の精神科の先生はNervenarzt(神経科医)として、マルチプレーヤーであったということも言えると思います。
しかし疾患について新たな知見も増え、現実的には脳卒中など、もともと日本でも循環器内科の先生も扱っていた疾患なども神経疾患として扱う場面もあり、精神科医と神経内科医は(脳外科医ももちろん)現在では完全に違う世界に住んでいるかのようです。そんななかで、てんかんは広く神経の病気であることが知られるようになり、患者さんも精神科より、神経内科を訪れることが圧倒的に多くなりました。
そうなると、精神科の先生がてんかんの方を診る機会は圧倒的に少なくなります。少なくなると興味を持つ先生が減るのもしかたないことで、最近では「精神科医のてんかん離れ」問題が言われるようになっています。
これは何が問題かといいますと、精神科を受診するてんかん患者さんは確かに減りました。減りましたが、ゼロには絶対になりません。
たとえばてんかんの方は、たとえばうつ症状の合併が多いことはよく知られています(報告により様々ですが、2-4割といった報告が多いように思います)これはてんかんそのものが影響する場合もありますし、抗てんかん薬の副作用でそうなることもあります。社会的にストレスを抱えやすい状況になることも抑うつ状態を引き起こしやすくなります。また時に統合失調症と区別がつきにくいような幻覚妄想状態をみる方もあります(これも抗てんかん薬の副作用であることがよくありますので注意を要します)
てんかんの患者さんは「脳とこころ」という、非常に難しいテーマを我々に対して投げかけてくれる存在です。
では実際にこうした問題が起こった場合、神経内科の先生に診てもらっている患者さんがどうなるかと言いますと、
患者さん
「先生、気分が良くなくて、不安でいたたまれなくて、仕事も手につかなくて・・・・」
神経内科の先生
「(うつ状態だなあ)そうですか、では精神科に良い先生がいますよ。一度受診されてはいかがですか?てんかん発作はありませんし、そちらの治療はこっちで続ければいいですから」
患者さん:
「神経内科の先生からうつ状態だって言われて、ご紹介頂いたのですが・・・」
精神科の先生
「(てんかんの患者さんかあ、最近あんまり診てないなあ)そうですか、ではてんかんの治療は神経内科の先生におまかせして、こちらは主に精神的な治療をやっていきましょう。とりあえず、うつ病のお薬が効果があればいいですねえ」
というように、精神科の先生がてんかんの方を全く診なくなる、という時代は絶対に来ないことがお分かりいただけるかと思います。問題は、この患者さんのうつ状態が、実は抗てんかん薬の副作用であった、といった場合です。根本的にはこれは抗てんかん薬を調整しないと、いくらうつ病の薬を飲んでも良くなりません。精神科医と神経内科医は、お互いの足りないところを補い合うことができている、とは言いにくいと思うのです。お互いの知識を共有する、かつてのNervenarztが今こそ必要だと感じます(もちろん、上の会話のようなことがいつも起こるわけではありませんが・・・)
若手の神経内科の先生の研修に長期の精神科での研修を、精神科の先生の研修に神経内科を加えることもよいかもしれません。「脳とこころ」について思索する期間は精神科医、神経内科医のお互いにとって、決して無駄ではないと思うのです。
昔はてんかんの診療といえばほぼ精神科の先生が一手に行い、そこに小児科の先生が参加している、という時代が日本で長くありました。そもそも昔の日本には神経内科も脳神経外科もなかったのです。その後脳神経外科が精神科から独立し、さらに神経内科が精神科とは独立した診療科になったのは、日本では1960 年代ぐらいからだと考えられます。地方によっては神経内科が精神科と別れて独立した大学講座になったのは1980年代というところもあります。それ以前は成人のてんかん患者さんはすべて精神科に通っておられたのです。
つまり昔はおとなのてんかんの専門家=精神科医だったのですね。昔の精神科の先生はNervenarzt(神経科医)として、マルチプレーヤーであったということも言えると思います。
しかし疾患について新たな知見も増え、現実的には脳卒中など、もともと日本でも循環器内科の先生も扱っていた疾患なども神経疾患として扱う場面もあり、精神科医と神経内科医は(脳外科医ももちろん)現在では完全に違う世界に住んでいるかのようです。そんななかで、てんかんは広く神経の病気であることが知られるようになり、患者さんも精神科より、神経内科を訪れることが圧倒的に多くなりました。
そうなると、精神科の先生がてんかんの方を診る機会は圧倒的に少なくなります。少なくなると興味を持つ先生が減るのもしかたないことで、最近では「精神科医のてんかん離れ」問題が言われるようになっています。
これは何が問題かといいますと、精神科を受診するてんかん患者さんは確かに減りました。減りましたが、ゼロには絶対になりません。
たとえばてんかんの方は、たとえばうつ症状の合併が多いことはよく知られています(報告により様々ですが、2-4割といった報告が多いように思います)これはてんかんそのものが影響する場合もありますし、抗てんかん薬の副作用でそうなることもあります。社会的にストレスを抱えやすい状況になることも抑うつ状態を引き起こしやすくなります。また時に統合失調症と区別がつきにくいような幻覚妄想状態をみる方もあります(これも抗てんかん薬の副作用であることがよくありますので注意を要します)
てんかんの患者さんは「脳とこころ」という、非常に難しいテーマを我々に対して投げかけてくれる存在です。
では実際にこうした問題が起こった場合、神経内科の先生に診てもらっている患者さんがどうなるかと言いますと、
患者さん
「先生、気分が良くなくて、不安でいたたまれなくて、仕事も手につかなくて・・・・」
神経内科の先生
「(うつ状態だなあ)そうですか、では精神科に良い先生がいますよ。一度受診されてはいかがですか?てんかん発作はありませんし、そちらの治療はこっちで続ければいいですから」
患者さん:
「神経内科の先生からうつ状態だって言われて、ご紹介頂いたのですが・・・」
精神科の先生
「(てんかんの患者さんかあ、最近あんまり診てないなあ)そうですか、ではてんかんの治療は神経内科の先生におまかせして、こちらは主に精神的な治療をやっていきましょう。とりあえず、うつ病のお薬が効果があればいいですねえ」
というように、精神科の先生がてんかんの方を全く診なくなる、という時代は絶対に来ないことがお分かりいただけるかと思います。問題は、この患者さんのうつ状態が、実は抗てんかん薬の副作用であった、といった場合です。根本的にはこれは抗てんかん薬を調整しないと、いくらうつ病の薬を飲んでも良くなりません。精神科医と神経内科医は、お互いの足りないところを補い合うことができている、とは言いにくいと思うのです。お互いの知識を共有する、かつてのNervenarztが今こそ必要だと感じます(もちろん、上の会話のようなことがいつも起こるわけではありませんが・・・)
若手の神経内科の先生の研修に長期の精神科での研修を、精神科の先生の研修に神経内科を加えることもよいかもしれません。「脳とこころ」について思索する期間は精神科医、神経内科医のお互いにとって、決して無駄ではないと思うのです。
2015年12月1日火曜日
Twitterはじめました。
東北大学のてんかん学講座教授である中里信和先生のお勧めで、てんかんについての正確な知識を、もっと広く、多くの方にお伝えするためにTwitterアカウントを当院も開設しました。基本的にはブログの内容を皆さんにお伝えしていきたいと思います。Twitterを利用されている方はどうぞよろしくお願い申し上げます。https://twitter.com/koidenaika
2015年11月24日火曜日
てんかんと妊娠②「てんかんはこどもに遺伝しますか?」
このシリーズ、妊娠を考える女性のてんかん患者さんからの質問、という形式をとらせていただいていますが、第2回はてんかんと遺伝についてです。
てんかんの診断をすると、「うちの家系には、てんかんの人なんていないんですけど」といった患者さんやご家族からのご発言をよく耳にします。そもそも遺伝する病気、という前提でのお話ですね。本当にそうなのでしょうか?
まず、ここで何度か触れていますように、「てんかん」と一口に言ってもその中身は極めて多種多様で、様々なタイプや分類が存在しています。まずは患者さんのてんかん発作のタイプやその原因がなんなのか?といったことが重要です。
てんかんが何らかの後天的な原因(外傷、脳血管障害、脳腫瘍、脳炎/髄膜炎など)で発症した場合、これはどう考えても遺伝はない、ということはご理解頂けると思います。これらのてんかんは単に脳に何らかの傷が後天的についたことによって、脳が異常な電気的興奮を起こすようになり、てんかん発作が起こるようになった、ということになります。「獲得された形質は遺伝しない」という言葉が有名ですが、要するに「親が頑張って筋肉をつけても、子供が筋肉質で生まれはしない」というのと同じです。
ですのでそもそもてんかんと遺伝、といったことを考える機会があるとすれば、それはどちらかといえば多くが10代までに発症する、あきらかな原因がない、何らかの体質に起因するものと考えられるようなてんかんがその対象になります。
ここで大切な前提として、この「遺伝」という言葉が指すものを考えてみる必要があります。患者さんやご家族が言う「遺伝」というのは親→子、あるいは親族間でのてんかんの有無を指すことがほとんどだと思います。
ではこうした意味での「遺伝」はどのぐらいてんかんにあるのでしょうか?確かに一部のてんかんには「ある」といって良いケースもあります。たとえば進行性ミオクローヌスてんかんなど、ごく一部のてんかんではごく限られた遺伝子の変化がてんかんやその他の病状を発症させていることが知られています。こうした場合は、ある方にそうしたタイプのてんかんが発症すると、ほとんどの場合は親御さんなどにもまったく同様の症状がみられます。表現促進現象といって、世代が若くなるにつれて発症する時期が早まるタイプの病気もありますので、お子さんがすでに発症しているにもかかわらず、親御さんはまだ発症しておらず、将来発症する可能性がきわめて高い、と想像されるような場合もあります。また熱性けいれんが関連するようなてんかん「熱性けいれんプラス」なども親御さんとお子さんにどちらも熱性けいれんやてんかんが存在していることがありますね。
ただ、てんかんには極めて多種多様なタイプが存在しており、その中でこうしたてんかんはごく一部にしか過ぎません。てんかん全体で考えると、このような単純な遺伝形式をとるものは非常に珍しいのです。
現在多くのてんかんは、非常に多様な因子が背景にあって発症するものと考えられています。
ごくごく分かりやすく言えば「けいれんの起こりやすさ」「脳でおこった電気的な興奮を鎮める力の強弱」「刺激への過敏性」といった因子がもともとご両親のどちらかに、あるいはどちらにもあるわけです。これらが複雑に組み合わさることではじめててんかんは発症してきます。
ですので親御さんのどちらかにてんかんがあったとしても、お子さんは親御さん両者の特性を受け継いで誕生しますので、ほとんどの場合はてんかんをお持ちではありません。
一般的に25歳までのてんかんの発症率は1-2%ぐらいではないかと言われていますが、てんかんがある(ここには上記した、明らかに遺伝的背景が存在しえない後天的なてんかんも含まれますが)親御さんから生まれたお子さんの発症率はその3倍ぐらい、つまり6%ぐらいではないかと考えられています。ここには遺伝的背景がはっきりしている上記のようなてんかんの方も入っています。ですのでざっくりと言うと
「てんかんを持たない親御さんから生まれるお子さんの1-2%にもてんかんはあり、てんかんを持つ親御さんから生まれるお子さんの9割強はてんかんではない」
ということになります。6%ぐらい、という数字もあくまでも色々なてんかんや発作型を総じての数字ですので、個々の患者さんではもっと可能性が高かったり低かったりはします。しかし(上記のようなごくごく一部のてんかんを除けば)絶対に五分五分とか、100%とか、そうした話ではないのです。
これからさらに分子遺伝学的な研究が進めば、てんかんを発症させる複数の因子が明らかになってくるものと期待されますが、いずれにしても事実として、患者さんやご家族が心配する「親→子でてんかんが発症する」ということが比較的稀な事態であることには変わりはありません。
上記はあくまでも総論ですので、患者さん個人の、ご自身のてんかんはどうか?、ということについては担当の先生に聞いてみてください。ただ後天的な原因の方は気にされる必要はありませんし、そうでない方も「遺伝するかも・・・・」ということを過剰に心配して妊娠をあきらめる、といった必要はない、ということはご理解頂けるかと思います。
てんかんの診断をすると、「うちの家系には、てんかんの人なんていないんですけど」といった患者さんやご家族からのご発言をよく耳にします。そもそも遺伝する病気、という前提でのお話ですね。本当にそうなのでしょうか?
まず、ここで何度か触れていますように、「てんかん」と一口に言ってもその中身は極めて多種多様で、様々なタイプや分類が存在しています。まずは患者さんのてんかん発作のタイプやその原因がなんなのか?といったことが重要です。
てんかんが何らかの後天的な原因(外傷、脳血管障害、脳腫瘍、脳炎/髄膜炎など)で発症した場合、これはどう考えても遺伝はない、ということはご理解頂けると思います。これらのてんかんは単に脳に何らかの傷が後天的についたことによって、脳が異常な電気的興奮を起こすようになり、てんかん発作が起こるようになった、ということになります。「獲得された形質は遺伝しない」という言葉が有名ですが、要するに「親が頑張って筋肉をつけても、子供が筋肉質で生まれはしない」というのと同じです。
ですのでそもそもてんかんと遺伝、といったことを考える機会があるとすれば、それはどちらかといえば多くが10代までに発症する、あきらかな原因がない、何らかの体質に起因するものと考えられるようなてんかんがその対象になります。
ここで大切な前提として、この「遺伝」という言葉が指すものを考えてみる必要があります。患者さんやご家族が言う「遺伝」というのは親→子、あるいは親族間でのてんかんの有無を指すことがほとんどだと思います。
ではこうした意味での「遺伝」はどのぐらいてんかんにあるのでしょうか?確かに一部のてんかんには「ある」といって良いケースもあります。たとえば進行性ミオクローヌスてんかんなど、ごく一部のてんかんではごく限られた遺伝子の変化がてんかんやその他の病状を発症させていることが知られています。こうした場合は、ある方にそうしたタイプのてんかんが発症すると、ほとんどの場合は親御さんなどにもまったく同様の症状がみられます。表現促進現象といって、世代が若くなるにつれて発症する時期が早まるタイプの病気もありますので、お子さんがすでに発症しているにもかかわらず、親御さんはまだ発症しておらず、将来発症する可能性がきわめて高い、と想像されるような場合もあります。また熱性けいれんが関連するようなてんかん「熱性けいれんプラス」なども親御さんとお子さんにどちらも熱性けいれんやてんかんが存在していることがありますね。
ただ、てんかんには極めて多種多様なタイプが存在しており、その中でこうしたてんかんはごく一部にしか過ぎません。てんかん全体で考えると、このような単純な遺伝形式をとるものは非常に珍しいのです。
現在多くのてんかんは、非常に多様な因子が背景にあって発症するものと考えられています。
ごくごく分かりやすく言えば「けいれんの起こりやすさ」「脳でおこった電気的な興奮を鎮める力の強弱」「刺激への過敏性」といった因子がもともとご両親のどちらかに、あるいはどちらにもあるわけです。これらが複雑に組み合わさることではじめててんかんは発症してきます。
ですので親御さんのどちらかにてんかんがあったとしても、お子さんは親御さん両者の特性を受け継いで誕生しますので、ほとんどの場合はてんかんをお持ちではありません。
一般的に25歳までのてんかんの発症率は1-2%ぐらいではないかと言われていますが、てんかんがある(ここには上記した、明らかに遺伝的背景が存在しえない後天的なてんかんも含まれますが)親御さんから生まれたお子さんの発症率はその3倍ぐらい、つまり6%ぐらいではないかと考えられています。ここには遺伝的背景がはっきりしている上記のようなてんかんの方も入っています。ですのでざっくりと言うと
「てんかんを持たない親御さんから生まれるお子さんの1-2%にもてんかんはあり、てんかんを持つ親御さんから生まれるお子さんの9割強はてんかんではない」
ということになります。6%ぐらい、という数字もあくまでも色々なてんかんや発作型を総じての数字ですので、個々の患者さんではもっと可能性が高かったり低かったりはします。しかし(上記のようなごくごく一部のてんかんを除けば)絶対に五分五分とか、100%とか、そうした話ではないのです。
これからさらに分子遺伝学的な研究が進めば、てんかんを発症させる複数の因子が明らかになってくるものと期待されますが、いずれにしても事実として、患者さんやご家族が心配する「親→子でてんかんが発症する」ということが比較的稀な事態であることには変わりはありません。
上記はあくまでも総論ですので、患者さん個人の、ご自身のてんかんはどうか?、ということについては担当の先生に聞いてみてください。ただ後天的な原因の方は気にされる必要はありませんし、そうでない方も「遺伝するかも・・・・」ということを過剰に心配して妊娠をあきらめる、といった必要はない、ということはご理解頂けるかと思います。
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